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更新日:2023年7月25日

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30年度包括外部監査報告書・自動車運送事業に係る財務事務の執行及び管理の状況について

報告書全文(PDF:4,094KB)概要版(PDF:559KB)

第1 外部監査の概要

 1 外部監査の種類

 地方自治法第252条の37第1項に基づく包括外部監査

 2 選定した特定の事件

自動車運送事業に係る財務事務の執行及び管理の状況について

 3 特定の事件を選定した理由

 公営企業については、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付総務省自治財政局公営企業三課室長通知)において、将来にわたって安定的に事業を継続していくための、中長期的な基本計画である「経営戦略」の策定が要請されている。
一方、仙台市(以下、「市」という。)の自動車運送事業は赤字決算が常態化し、累積損失が60億円(平成29年度)生じている。また、「仙台市自動車運送事業経営改善計画(平成29年3月仙台市交通局)」(以下、「経営改善計画」という。)によると、毎年30億円を超える一般会計補助金を受け入れても、今後も赤字決算の継続が見込まれ、平成33年度における累積損失88億円、資金不足額10億円と厳しい業績見通しが示されている。
よって、自動車運送事業に係る財務事務の執行及び管理の状況について、包括外部監査人の立場から検討を加えることは、今後の行政運営にとって有意義と認識し、本年度の包括外部監査の特定の事件として選定した。

 4 外部監査の方法

 (1)監査着眼点

[1] 経営改善計画は経営戦略策定ガイドラインの趣旨に沿って策定されているか

[2] 一般会計負担は適切に行われているか

[3] 能率的な経営により経済性が発揮されているか

[4] 契約事務は適切に行われているか

[5] 財務諸表は適切に作成されているか

[6] 外郭団体の管理は適切に行われているか

 (2)実施した主な監査手続

[1] 予備調査

自動車運送事業の関連資料を入手、分析、質問により、当該事業の現状と課題を把握した。

 [2] 本監査

  • 予備調査の結果に基づき、「(1)監査着眼点」について経済性、効率性及び有効性(3E)並びに合規性の観点から検討を行った。検討に際しては、関連資料を閲覧し、必要に応じて関係部署に対する質問を行った。
  • 交通局川内営業所、霞の目営業所、七北田出張所を視察した。
  • 仙台交通に往査した。

5 外部監査の実施期間

平成30年6月18日から平成31年3月7日まで

第2 外部監査の結果及び意見

I 個別検出事項

今回の監査の過程で発見された個別検出事項については、

  • 監査の結果(地方自治法第252条の37第5項)を「指摘」
  • 監査の結果に添えて提出する意見(地方自治法第252条の38第2項)を「意見」

と記載している。

項目 区分 現状の問題点 解決の方向性 改善措置
(1)不十分な計画期間 意見

以下の点を考慮すると、経営改善計画の計画期間5年が合理的な期間といえるか疑問である。

  • 赤字解消や資金不足の解消見通しが不明確であり、現行の経営改善計画による持続可能性の評価が困難であること
  • 経営環境の変化についてはローリング方式による計画策定で足りる問題であり、計画期間を短縮する合理的理由とは考えられないこと
  • やむを得ず10年未満の計画期間とする理由について、市民・議会に対する説明状況が不明確であること
公営企業は、将来にわたり持続的・安定的に必要な住民サービスの提供を維持することが求められていることを認識のうえ、経営戦略策定ガイドラインが示す「10年以上の合理的な計画期間」で経営改善計画を策定する。  
(2)不十分な経営改善効果 意見

経営改善計画の計画期間は赤字が継続し、赤字解消年度の見通しが示されていないため、現行の経営改善計画で十分な経営改善効果を期待できるといえるか疑問である。健全化対策補助金による安易な一般会計負担の継続により、経営健全化団体を回避している印象は否めない。

経営改善計画上、適正な一般会計負担のもとでの赤字解消予定年度の見通しを明確にする。  
(3)不十分な情報開示(路線別営業係数) 意見

経営健全化に向けた議論の契機とする観点から、交通局が示す路線別営業係数のみでは偏った不十分な情報開示にならないか懸念される。

毎年度公表している経営比較分析表において、経営の効率性に関する民間事業者平均値との差異分析を記載する。  
(4)不十分な情報開示(一般会計負担) 指摘

経営改善計画において、計画期間各年度の一般会計負担の総額は示されているものの、一般会計負担の内訳まで明示されていない。

また、経営改善計画では「一般会計からの補助に過度に依存しない経営体質を目指す」と記載しているものの、以下の点で情報開示が不十分と認められる。

  • 具体的な方策は示されておらず、実質的な内容を伴っていないこと
  • 健全化対策補助金は計画期間中12億円の横ばい推移であることが開示されていないこと
「情報開示が適当な項目例」に沿って、一般会計等の関与に係る情報開示を行うとともに、経営改善計画が示す「一般会計からの補助に過度に依存しない経営体質を目指す」具体的な方策を経営改善計画に明示する。  
(5)重要課題の識別もれ 意見 前回の経営改善計画に掲げられていた「公営バス事業の担うべき役割等に関する行政との検討」について明確な成果等はなく、かつ、現行の経営改善計画では当該項目が取組項目として掲げられていない。自動車運送事業における重要課題が経営改善計画に反映されておらず、実効性のある経営戦略とは認められない。 経営健全化に向けた議論の契機とするため、市における公営バス事業の担うべき役割を整理し、経営改善計画に反映させる。  
(6)抜本的な改革の検討不足 意見

交通局の聞き取り調査は運行管理業務受託に限定した内容であるため、他の選択肢(例えば、民間への事業譲渡)もある中で、運行管理委託に限定した確認では「受け皿になる民間企業は存在しない」との根拠に乏しいと考えられる。

個別検出事項「1(2)不十分な経営改善効果」に記載のとおり、現行の経営改善計画による経営改善効果が不十分である点を考慮すると、抜本的な改革の検討不足と認められる。

民間譲渡の選択肢を含めたサウンディング型市場調査を行い、受け皿になる民間企業が存在しないことの根拠付けを明確にする。

 
1 経営改善計画

 

項目 区分 現状の問題点 解決の方向性 改善措置
(1)行政判断との不整合 意見

不採算路線の維持(行政判断)が目的なら、一般会計負担の対象路線の運行便数の下限設定(行政サービスの提供水準)が必要と考えられるが、生活路線・フィーダー路線とも運行頻度の下限設定はなされていない。生活路線における「運行便数20便以下」のような運行頻度の上限設定が不合理なことは、事業者が恣意的に減便することで一般会計負担の対象路線の増加が可能となる点からも自明である。

経営改善計画において減便方針が示されている現状も考慮すると、対象路線の運行頻度に下限設定のない一般会計負担が、市の行政判断と整合しているといえるか疑問である。

行政と公営企業の役割分担を踏まえ、路線維持のサービス水準(対象路線、運行頻度)を行政側にて明確に提示する。

民間バス会社に対する運行補助との代替性を考慮すれば、対象路線の運行頻度の下限設定を明確にし、地域路線運行補助金を積算するのが合理的である。
 
(2)一般会計繰入の過大積算 指摘 営業収支の算定上、減価償却費が含まれているため、減価償却費に対応する収益である長期前受金戻入を考慮せず営業収支を算定すると、補助金等で手当された部分にまで一般会計負担がなされたと考えられる。長期前受金戻入を反映せず一般会計負担を積算するのは、補助金等で手当された部分まで一般会計負担している点で、一般会計繰入の過大積算と認められる。 収支差額の積算上、減価償却費を含めるのであれば、減価償却費に見合う収益である長期前受金戻入(営業外収益)も考慮のうえ、収支差額(一般会計負担額)を積算する。 令和2年3月17日公表(PDF:77KB)
(3)経営改善インセンティブに乏しい繰出基準 意見 地域路線運行補助金は、一般会計負担の対象路線に係る営業損失(実績値)を基礎に算定している。現行の積算方法は経営努力による収支改善インセンティブが働きにくいものと認められ、「能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費」とは言い難い。 標準的な運送原価を設ける等、交通局の経営改善インセンティブを阻害しない積算方法に見直す。自動車運送事業の代替性を考慮し、標準的な運送原価は民間事業者平均を参考に設定するのが合理的である。  
(4)不十分な有効性評価 意見 自動車運送事業には多額の一般会計負担が行われているが、当該一般会計負担に対する明確な有効性評価が行われていない。個別検出事項「1(2)不十分な経営改善効果」に記載のとおり、現行の経営改善計画による経営改善効果は不十分と認められる点を考慮すると、交通事業健全化対策補助金が有効といえるか疑問である。 自動車運送事業の主要な一般会計負担を行政評価対象に加え、一般会計負担の有効性を検証する。  

2 一般会計負担

 

項目 区分 現状の問題点 解決の方向性 改善措置
(1)勤勉手当に係る成績率の一律適用 指摘

一般職員に対して一律に適用された成績率を基礎とした勤勉手当の支給が行われている現状は、「職員が発揮した能率が充分に考慮されるものでなければならない」という企業職員の給与の基本原則の趣旨に反したものと考えられる。

企業職員の給与の基本原則の趣旨を踏まえた成績率の基準見直しを行う。

なお、交通局では、平成31年度以降の一般職員に関する成績率を変更予定である。
令和元年9月20日公表(PDF:90KB)
(2)企業の経営状況を考慮しない手当支給 意見 交通局の給与規程上、期末・勤勉手当を含めて「企業の経営状況」を考慮して支給すると明示されたものはないため、手当支給額の算定上、企業の経営状況を考慮して決定されたかどうか不明確である。自動車運送事業の経営状況は、平成19年度以降、経常損失を計上していることを考慮すれば、期末・勤勉手当に係る現行の決定方法は「企業の経営状況」を考慮すべきことを定めた地方公営企業法第38条第3項や条例の趣旨に反している。 法の規定と整合するよう、期末・勤勉手当の支給額決定を企業の経営状況を考慮した方法に見直す。  
(3)退職手当過小負担 指摘

普通会計との比較で、自動車運送事業会計の退職率が低いことは、人事交流職員に係る退職手当負担に偏りが生じており、自動車運送事業会計における退職手当の過小負担が懸念される。

退職時に所属する会計が退職手当を全額負担する取扱いはあくまで例外的な方法であるという考え方に立てば、例外処理が許容される実態を有するといえるか疑問である。
会計間の職員の異動が双方向・頻繁であっても、会計間の退職率に乖離が生じており、退職給付費用の負担に重要な不均衡が生じていないか精査する。  
(4)非常勤職員の任用根拠と勤務実態の不整合 意見 自動車運送事業における非常勤嘱託職員の任用根拠は地方公務員法第3条第3項第3号に基づき特別職非常勤職員として整理されている。

しかし、これら非常勤嘱託職員の個別の職務の内容は必ずしも一般職の職員との相違が明らかではなく、かつ、労働者性の低い勤務態様とは考え難いため、任用根拠と勤務実態の整合がとれているか疑問である。

非常勤職員の任用根拠と勤務実態の不整合は会計年度任用職員制度(平成32年度から導入)の中で解決することが想定されるが、それぞれの職の必要性を十分吟味した上で、適正な人員配置に努める。  

3 組織・運営

 

項目 区分 現状の問題点 解決の方向性 改善措置
(1)合理的根拠を欠いた随意契約理由 意見

仙台交通に対するバス車両整備業務委託は「整備士の常駐及び作業体制の確保が唯一可能な業者」であることを随意契約の理由としているが、現在においても同様といえるか疑問であり、仙台交通との随意契約理由の合理的根拠は希薄である。

仙台交通以外の事業者では受託困難な根拠を明確にする。

随意契約とする合理的理由がなければ、公平性・競争性を確保した契約方法に見直す。

 

4 契約

 

項目 区分 現状の問題点 解決の方向性 改善措置
(1)固定資産台帳の不明差異 指摘

貸借対照表と固定資産台帳の金額に生じている差異の原因が把握されていない。固定資産台帳は、関連する資産等の管理の他、関連損益項目(減価償却費、固定資産除却費、長期前受金戻入等)の算出根拠資料となることから、財務諸表が適正に作成されているか確認できない。

差異内容を調査のうえ、財務諸表または固定資産台帳の所要の修正を行う。

令和2年3月17日公表(PDF:81KB)
(2)減損損失の計上もれ 指摘

固定資産のグループ化に関する交通局判断は不合理であり、減損損失の計上もれと認められる。

正味売却価額を精査のうえ、帳簿価額と回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか大きい方)の差額を減損損失として計上する。 令和2年3月17日公表(PDF:80KB)
(3)ポイント引当金の計上もれ 指摘 包括外部監査人の視点で整理すると、ポイント引当金(引当見積額29,224千円)の合理的な見積りは可能と考えられるため、ポイント引当金の計上もれと認められる。 ポイント残高のうち翌年度以降の利用見込額を合理的に算出し、ポイント引当金として計上する。 令和2年7月7日公表(PDF:67KB)
(4)前受金の計上もれ 意見

バスカードの利用終了に伴う払戻見込残高10,319千円(平成29年度末、交通局試算)を前受金として計上した場合、資金不足比率の基準超過が生じる。地方財政法に定める基準値を超える事象について、会計上の重要性判断により前受金の計上もれが許容されるといえるか疑問である。

払戻し見込残高を精査し、金額的重要性があれば、過年度損益修正処理を行い、前受金等として負債計上する。  
(5)資金不足比率の基準超過 意見 個別検出事項「5(3)ポイント引当金の計上もれ」「5(4)前受金の計上もれ」に係る未計上負債を考慮した資金不足比率は10.0%であり、地方財政法上の「10%基準」を超過している。 各年度の決算において、資金不足比率の基準超過に影響する重要な未計上負債等がないか十分に点検する。  

 

5 会計

 

 

6 外郭団体
項目 区分 現状の問題点 解決の方向性 改善措置
(1)委託費に係るコスト付け替えの懸念 意見

平成29年度において、仙台交通全体では売上総利益を確保しているものの、自動車事業が売上総利益△7,180千円と赤字になっている。

自動車運送事業会計と高速鉄道事業会計の間で委託費を通したコスト付け替えが行われていないか懸念される。

全体の損益状況のみならず、事業別損益の状況も適時に把握し、外郭団体において不自然な赤字が発生していないか確認する。

 
(2)低価格入札 意見 仙台交通が指名競争入札で受託している遺失物取扱業務委託は間接経費(一般管理費)まで考慮すれば実質的には赤字受注と認められる。仙台交通の売上高の大半が交通局との特命随意契約による受託業務であり、市に対する収入依存度の高い状況にあることを考慮すると、実質的な赤字受注になるほどの低価格入札が適切とは認められない。 市からの財政依存度の高い外郭団体においては、入札額が実質的な赤字受注にならないよう慎重に判断する。  
(3)合理的根拠を欠いた代替性評価 意見 仙台交通との随意契約によるバス車両整備業務委託に関する問題については、個別検出事項「4(1)合理的根拠を欠いた随意契約理由」に記載のとおりである。バス車両整備業務委託については民間事業者との代替性が認められることから、外郭団体経営評価において代替性がないと評価する合理的根拠は希薄である。 外郭団体が実施する事業の代替性を的確に評価し、外郭団体の指導監督の実効性を確保する。  

 

 

II 抜本的な改革と市民への説明責任

(1)公営バスの存在意義

乗合バス事業における公営・民営の区分は、道路運送法上の一般乗合旅客自動車運送事業または公共交通機関であるバス輸送という面から差異はないが、公営のメリットとされている点について以下のような論点整理が見られる。

論点整理
公営のメリット 左記に対する意見
民営バス事業者の参入が望めない場合に地方公共団体が自らバス事業を経営して輸送サービスを提供すること
  • 公営も民営並の効率的経営が前提
公営企業は地方公共団体の一部として事務を行っており、まちづくり、福祉・環境対策等一般行政部門と連携した行政施策の実施が容易なこと
  • 地方公共団体が地域交通計画を策定し必要なサービス水準(路線編成等)を位置付けた上で民営の協力を得ることができれば公営にこだわる必要はない
  • バス事業の主体が地方公共団体と同じであることが「もたれ合い」の構造を招いた側面がある
既存バス路線の維持という面において民営は営利主義による路線縮小・廃止や倒産のリスクがあるが、公営バスは地方公共団体が直営で行うため、長期的かつ安定的なバス運行サービスの提供が可能であること
  • バス路線の維持方策は、公営という直営方式に限らず、第三セクター方式、民営バス補助方式等色々な選択肢があり、最も効率的な方策を選択することが住民福祉の向上につながる
低公害車両、低床型車両の導入等、直接収益の向上に結び付きづらい投資を先駆的に行うことにより住民福祉の向上を図ること
  • 環境・バリアフリー対策は、公共交通事業者としての責務であり、公営としての先導的役割は薄れていく
議会・住民の意向を反映した運行サービスの提供が可能であること
  • バス利用者等の要望が外部介入となる恐れがある
  • 民営との比較対照情報を分かり易く公開すべきである
営利追求が目的でないことから、内部補助による一定程度の不採算路線の維持が可能であること
  • 経営実態から内部補助にも限界がある
  • 内部補助は「受益と負担の連動関係」から公平の原則に反する
公務員としての身分保障により雇用が安定しているため、良質な人材を確保することが可能であること
  • 親方日の丸意識が経営悪化に拍車をかけている
  • 給与水準が民営より高い合理性をバス輸送との関連で説明する責任がある
  • 身分保障を前提に民営並の経営効率化はできない

出所:「公営バス事業のあり方に関する研究会報告書《要約版》(平成12年12月社団法人公営交通事業協会)」をもとに包括外部監査人が作成

 

政令市における公営バスの状況は以下のとおりである。

 

政令市における公営バスの状況
  人口(人) 面積(平方キロメートル) 人口密度 公営バス 備考
札幌市

1,952,348

1,121.26 1,741   平成16年に廃止(北海道中央バス株式会社、ジェイ・アール北海道バス株式会社、じょうてつバスに移譲)
仙台市

1,060,545

786.30

1,349

 
さいたま市

1,292,016

217.43

5,942

   
千葉市

967,832

271.77

3,561

   
横浜市

3,737,845

437.56

8,542

BM

 
川崎市

1,488,031

143.01

10,405

BM

 
相模原市

718,192

328.91

2,184

   
新潟市

796,773

726.45

1,097

   
静岡市

706,287

1,411.90

500

   
浜松市

807,013

1,558.06

518

   
名古屋市

2,288,240

326.45

7,009

BM

 
京都市

1,415,775

827.83

1,710

BM

 
大阪市

2,702,432

225.21

12,000

BM

平成30年に廃止(大阪シティバスに移管)
堺市

840,622

149.82

5,611

   
神戸市

1,542,935

557.02

2,770

BM

 
岡山市

709,188

789.95

898

   
広島市

1,195,327

906.68

1,318

   
北九州市

961,024

491.95

1,953

 
福岡市

1,529,040

343.39

4,453

   
熊本市

734,317

390.32

1,881

  平成27年に廃止(熊本都市バスに移譲)

出所:人口:住民基本台帳人口(平成30年1月1日)、面積:全国都道府県市区町村別面積調(平成29年10月1日)

(注)公営バス欄の「BM」は経営改善計画のベンチマークを表す。

 

バス事業の経営環境は運行区域の人口密度に大きく左右されるが、行政区域内で民間バス事業者が運行している中、相対的に人口密度の低い仙台市においても、市営バスの存在意義を明確にすることが求められているといえよう。

 

出所:公営企業の経営のあり方に関する研究会報告書(平成29年3月総務省)

(4)改革の方向性

民間事業者やコミュニティバスの運行等で代替可能な地域においては、必ずしも公営企業として行う必要はないことから、事業廃止、民営化・民間譲渡、民間活用による経営改革について検討が可能である。

まず、経営比較分析表等を活用し、民営化・民間譲渡の可能性を検討すべきである。

民営化・民間譲渡を検討した結果、民間事業者の経営状況や乗務員確保の問題等により全路線の譲渡が難しい場合は、路線の一部譲渡について検討しつつ、管理の委託等による民間活用を推進すべきである。併せて、職員定数及び給与水準の適正化や運行計画の見直し等により更なる経営の効率化を推進する必要がある。

民営化・民間譲渡の可能性が極めて低く、民間活用や職員定数及び給与水準の適正化等による経営の効率化を図ってもなお収益性の低い事業や、人口減少等の要因によって将来にわたって収益性の悪化が見込まれる事業においては、地域における公共交通手段を地方公共団体が確保する必要性を踏まえ、公営企業として引き続きサービスを提供するのか、若しくは、公営企業を廃止し、一般会計において行う代替手段(コミュニティバス・デマンドタクシー等)により公共交通手段を確保するのか比較・検討を行った上で、当該代替手段の導入が望ましい場合は、その導入を検討すべきである。その際には、採算性等将来にわたって持続的に公営企業として事業を継続していくことが可能であるかどうかという視点から検討する。

 

(2)現状の問題認識

市営バスを存続させるのであれば、まずは民間事業者並みのコストで経営できるようにすべきである。このためには、経営比較分析表の活用による経営分析を行い、抜本的な改革の検討を行うことが重要である。

しかし、経営比較分析表に示されている市の分析に対する包括外部監査人の問題認識を整理すると以下のとおりであり、市民に対する説明責任を果たしているとは認められない。

 

包括外部監査人の問題認識

市の分析

(「経営比較分析表(平成29年度)」より)

包括外部監査人の問題認識

1.経営の健全性について

 表2のとおり、本市の営業収支比率は公営企業の平均を下回っている。平成29年度決算時点では同比率が64.9%と乗車料収入をはじめとした営業収益で営業費用の2月3日も賄えていない状況にあり、毎年、多額の営業赤字を計上している。

 これを補うために、毎年、一般会計から多額の補助金を繰り入れていることから、表7のとおり、他会計負担金比率は公営企業平均値を大きく上回っており、かつ同比率が増加傾向にあることから、他会計負担金への依存度は年々高まっているといえる。

 こうした補助金を繰り入れてもなお、表1のとおり、公営企業平均が経常黒字を達成している中、本市の経常収支比率は目標値を大きく下回っている。

 このように毎年多額の赤字を計上していることなどから、表3のとおり流動比率は50%を下回り、表4のとおり累積欠損金比率は前年度から悪化している。

独立採算の状況に関する全ての指標(表5・6・7)が悪く、公営企業平均値との乖離が大きい。現行の経営改善計画において、これらの指標の改善見通しに乏しいため、市民の理解を得られるか疑問である。

このような独立採算の状況に関する分析の記載がなく、適切な情報開示が行われていない。

 

関連する個別検出事項

1(4)不十分な情報開示(一般会計負担)

2.経営の効率性について

 表1及び表2のとおり、本市の走行キロ当たりの収入はキロ当たりの運送原価を下回っている。

 これはバスの需要が減少していく中にあっても便数等のサービス供給量を極力維持してきたことにより、表4のとおり、本市の乗車効率が公営企業平均よりも低い値で推移してきたことに起因しており、近年は生産年齢人口の減少などから更に悪化傾向にある。

表1・2・3は民間比較の指標でありながら、民間比較分析の記載がなく、適切な情報開示が行われていない。

民間と比較すると、収入は上回っているが、費用はそれ以上に上回っており、特に人件費(表3)の乖離が大きいことから、主な赤字要因は労働生産性の低さによるものと考えられる。

(注)「走行キロ当たりの人件費」(人件費/年間実車走行キロ)が民間比で約1.7倍と示されているが、人件費に運行委託分が反映されないため、民間比の乖離の実態はさらに大きいものと推察される。

市は乗車効率の低さを課題と認識しているが、運行区域の特性等を考慮する必要あり、当該データのみで乗車効率の改善が優先度の高い課題といえるか疑問である。

 

関連する個別検出事項

1(2)不十分な経営改善効果

1(3)不十分な情報開示(路線別営業係数)

全体総括

 需要の減少による慢性的な営業赤字に対して、本市はこれまで、人件費の抑制やバス運転業務等の管理の委託の活用など、走行キロあたりの運送原価の縮減を図ることで対応し、便数等のサービス供給量は極力維持してきた。

しかし、指定都市の公営バス事業者の中では低い人件費水準とし、管理の委託についても法定上限まで委託を拡大するなど、費用の削減も限界に達しつつあること、受益と負担の公平性の観点などから他会計補助金への依存度をこれ以上高めることは適切ではないと考えることから、経営改善を図るために、「仙台市自動車運送事業経営改善計画(平成29~33年度)」に基づき、利用状況に応じた便数調整を行うなど、運行を効率化するための取り組みが必要不可欠となっている。

交通局は運行の効率化への取り組みの必要性を強調しているが、以下のようなリスクにも留意する必要がある。

  • 減便等の便数調整を行うことは利便性の低下に繋がるものであり、利用者の負担増になること
  • マイカー等の代替交通手段があれば、利便性の低下は更なるバス利用者減を招き、バス事業が負のスパイラルに陥ること
  • 民間との違いが不明確になり、市営バスの存在意義自体がなくなること

市営バスの維持に多額の一般会計負担が行われているが、市営バスの継続と民間譲渡に関する「市民負担と選択」が示されていない。

 

関連する個別検出事項

1(5)重要課題の識別もれ

1(6)抜本的な改革の検討不足

 

市は経営比較分析表をもとに以下の点を整理し、市営バスの継続と民間譲渡に関する「市民負担と選択」を示すことにより、市民に対する説明責任を果たす必要があると考える。

 

包括外部監査人の見解

分析の方法(注)

包括外部監査人の見解

(1)持続可能性に関する経営指標を活用して、自団体の経年比較や他団体平均比較を行った結果、持続可能性が低い場合や、民間事業者との比較分析に関する経営指標を活用して、民間事業者と比較分析を行った結果、公営企業よりも民間事業者が低コストでサービス供給を行うことができる場合については、民営化・民間譲渡についての検討を行う。

以下の点を考慮すれば、民間譲渡が望ましいと考える。

  • 独立採算の状況に関する経営指標改善の見通しが立たないため、市営による持続可能性は低いと判断されること
  • 市営より民間事業者が低コストでサービス供給を行うことが可能と見込まれること

 

関連する個別検出事項

1(2)不十分な経営改善効果

(2)民営化・民間譲渡が難しい場合は、持続可能性に関する経営指標を活用して、自団体の経年比較や他団体平均比較を行う。その結果、公営企業としての持続可能性が低く、当該指標の改善が見込まれない場合においては、公営企業として引き続きサービスを提供する場合と一般会計においてコミュニティバス・デマンドタクシー等に代替した場合とを比較・検討した上で、当該代替手段の導入が望ましい場合は、その導入(公営企業としては事業廃止)を検討する。

運行委託している営業所・出張所の採算性を見ると、民間譲渡の可能性が見込まれるため、仙台市において受け皿となる民間事業者が存在しないとは考え難い。実際、これまでも仙台市で路線単位の民間移譲を実施しているのであるから、民間譲渡は可能と考えられる。

 

関連する個別検出事項

1(3)不十分な情報開示(路線別営業係数)

1(6)抜本的な改革の検討不足

(3)民営化・民間譲渡した場合や、公営企業の事業を廃止し一般会計による代替手段(コミュニティバス・デマンドタクシー等)を導入した場合等においても、地方公共団体として持続可能な地域公共交通網の形成に資する地域公共交通の活性化及び再生に取り組むという観点及び一般会計による負担に対する説明責任を果たす観点から、民営化・民間譲渡先又はコミュニティバス・デマンドタクシー等の運行委託先から乗車効率や利用者1回当たり他会計負担額(改革実施後においては一般会計負担額)等の必要な情報の提供を求め、これらを活用して抜本的な改革の効果について検証を行う。 不採算路線の維持(行政判断)による運行路線はないのであれば、民間譲渡(市営バスの事業廃止)に伴う利用者へのマイナス影響は限定的と想定されるものの、一般会計による代替手段を導入する必要性が生じることは考えられる。この場合、市営バスのコストが民間を上回っていることを考慮すると、市営バスの事業廃止による一般会計負担の軽減効果は、代替手段を民間事業者に運行委託することによる一般会計負担の増加を上回ると予想され、市民負担の適正化を図れるものと考えられる。

 

関連する個別検出事項

1(2)不十分な経営改善効果

2(4)不十分な有効性評価
(4)公営企業として引き続きサービスを提供する場合でも、民間活用、職員定数及び給与水準の適正化や運行計画の見直し等により経営改善を図るとともに、経営比較分析表で示される事業の状況、独立採算の状況及び資産・負債に関する経営指標並びに民間事業者も含めた他のバス事業者の経営改善事例を参考に、「経営戦略」を策定し、中長期的な経営を考えることが必要である。

市は現行の経営改善計画をもって経営戦略を策定したと整理しているが、経営改善計画に様々な課題を有することを勘案すると、もはや市の直営によるバス事業の継続には無理がある。

 

関連する個別検出事項

1(1)不十分な計画期間

1(2)不十分な経営改善効果

(注)公営企業の経営のあり方に関する研究会報告書(平成29年3月総務省)より引用

 

 

 

 

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