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監査結果
住民監査請求 監査結果

「地下鉄東西線」に係る監査請求

第1 請求のあった日

平成15年1月27日
第2 請求人

仙台市民オンブズマン
第3 請求の要旨

 請求人から提出された住民監査請求書(別紙1)による請求の要旨は,概ね次のとおりである。
 仙台市が計画している地下鉄東西線整備事業(以下「本件事業」という。)にかかる建設工事費等,同事業に関する一切の支出は,以下の理由により,法第2条第14項及び地方財政法(昭和23年法律第109号)第4条第1項に違反し,違法・不当な公金支出であるから,支出差止めの勧告を求める。
1 東西交通軸の整備方式の判断が次のように適正になされなかった。
(1)機種と導入空間と採算性は一体のものであり,個々の機種毎に採算性まで検討しなくては,機種の比較優位の検討を行ったことにはならないが,仙台市は,リニアモーター用のルートを設定し,それに合わせて他機種の比較検討を行っており,基本に反する選考を行っている。
(2)機種検討内容に次のような矛盾がある。
<1> 一律地下走行を前提としており,隧道断面の大小のみを取り上げて建設費の大小を論じている。
<2> リニアモーター式地下鉄の場合,輸送能力からみると3倍以上(市が見込んでいる将来の増加分でも2倍以上)の過大設備になる。南北線の実績が計画の半分であることからも過大設備である。
<3> 2kmの連続隧道勾配の運行実績は,リニアモーター式地下鉄に無いにも関らず安全性に関しほとんど議論されていない。
<4> 保守に予想外の費用がかかること,動力費が通常の電車より3割多くかかること,車体が軽過ぎ架橋区間では密閉式の架橋とせざるを得ないこと,仮に開放式架橋を選択するなら風の影響により頻繁な運休が発生するなど,リニアモーター方式固有の問題点が全く議論されていない。
<5> LRTや仙石線の延長など他の交通機関や機種との比較検討が十分にされていない。
<6> 需要予測13万人/日は,荒井駅周辺の新居住ゾーンに平成22年までに1万人,仙台市の人口が増加し,増加人口の半数が沿線に居住することなどを前提とし,現実離れした過大見積りである。
2 便益とコストの比較,とりわけ収支計画が次のように適正になされなかった。
(1)仙台市の東西線だけが近時のリニアモーター地下鉄と比較して100億円以上も低廉な190億円/kmとする根拠が全く示されていない。また,東西線は約97%が地下走行であること,路線が直角に曲がる箇所が多いこと,傾斜地を走行すること,架橋が予定されていること,軟弱地盤や洪水被害対策等々問題が山積していることからして,190億円に納まるはずはない。余りに低廉すぎる事業費である。
(2)国の負担分が最近,60%から45%に見直されるなど今後予定通り入ってくる保証はない。
(3)損益収支は,13万2,000人の輸送需要があることを前提としているが,5〜6割の需要減少になる可能性が高く,永遠に黒字化しないばかりか日本一運賃が高い地下鉄となる。
その上,仙台市は平成14年12月に減価償却費についての考え方を「帳簿原価に基づく償却」から「みなし帳簿に基づく償却」へ変更し,黒字化年度が早まるとしたが損益収支が改善されたわけではない。変更するというなら運賃を下方修正すべきであるし,「30年内の償還」を達成するためには若林区役所や卸町中心部をルートに組み入れないとしてきた根拠もなくなってくる。会計処理の原則を途中で変更するという失態を演じたこと一事をもってしても計画は違法性を有する。
(4)市民にとって次のように利便性もない。
<1> 若林区役所から最寄りの駅が700m離れており,他の何れの区役所も既存鉄道駅に隣接していることから,市民的公平さから言っても問題があるルート選定である。商工拠点の一つである卸町の中心地点ですら,最寄りの駅から700m離れており,当地区への通勤者を車から鉄道へ移す狙いは達成されない可能性が高い。南北線仙台駅の更に下を通り,地表からの落差は地上9階建建物の屋上の高さと等しく,乗降に著しく不便となる。
JR仙台駅の地下を通るため,高額な権利金や使用料を東日本旅客鉄道株式会社等に支払う必要があり,その費用は運賃にも影響を与える。
<2> 急曲線続きでは,速く走れず,地上の交通と分離しても地下鉄の意義が相殺されるし,安全性の面でも不安がある。
<3> 使いにくい駅位置やルートであって現状より割高の運賃では敬遠され,利用は進まず,自家用車利用に流れてしまう可能性がある。
<4> 仙台市は,JR仙石線との直通運行の検討を行っていない。仙台都市圏の公共交通体系を総合的に考えるなら,既存事業者の構想や計画と連携を採る必要があるのに仙台市単独で進めており,市民の利益の増進にならない。
<5> 例えば八木山南団地から仙台駅までは,バス一本で到着でき運賃は370円だが,東西線利用の場合はバス+地下鉄で520円になる。一家で往復3,000円から4,000円かかる。
例えばJR仙台駅から藤崎デパートまで行くとして,地下30mのエスカレーター利用や220円の運賃では歩いたほうがいいということになりかねない。
このような交通機関は,市民の交通権を充たすものとは言いがたい。
(5)広瀬川に密閉型架橋を掛ければ景観破壊は,決定的,致命的となる。また,竜の口渓谷に鉄道及び都市計画道路の架橋工事を施せば,工事自体や道路通過により希少種を含めた動植物の生態系が破壊され,景観破壊も決定的となる。
(6)東西線工事に伴い移植,伐採,撤去の対象とされている青葉通りのケヤキ77本,西公園の大イチョウやヒマラヤスギ18本は,「杜の都の環境をつくる条例」第18条の「保存樹木等」に指定されており,その所有し,又は管理する者に保全に努める責務を課している。同条例を改正しない限り,移植,伐採する行為は同条例違反になる。
(7)安全性に関し次のような疑義がある。
<1> 東部地区は冠水し易い地区であり,その対策や費用等が不明である。
<2> 同地区は地盤が軟弱であり,地震による液状化現象を克服するほどの対策費を投じてまで地下鉄を設けるべき地区なのか疑問である。
<3> 平成12年以降の地震対策は,平成10年に発表した計画の中には含まれていないから,建設費は確実に膨張し,採算性が崩れる。
<4> 東西線ルートは,長町利府断層を横断しているので,断層がずれたら地下鉄隧道断面が剪断される懸念がある。
<5> 広瀬川架橋から青葉山までの連続勾配隧道内で火災が起きた場合,「煙突効果」により延焼速度が数倍速くなり,人的被害を大きくする恐れがある。
<6> リニアモーターカーに勾配制動破綻時の安全装置=大型の抵抗器を施すと,車輌断面も隧道断面も大きくなり,「小断面隧道だから安くできる」という仙台市の主張が崩れる。
<7> 急曲線が多く危険箇所の連続する路線となる。

請求の要旨に添付された事実を証する書面は,別紙1のとおりであり,その書面の内容については,記載を省略した。

第4 請求の受理

本件請求は,平成15年1月27日付けでこれを受理した。
第5 監査の実施

本件請求については,法第242条第4項の規定により,次のとおり監査を実施した。
1 証拠の提出及び陳述の機会の付与
請求人に対して,法第242条第6項の規定に基づき,平成15年2月27日に証拠の提出及び陳述の機会を与えたところ,新たな証拠の提出があり,請求人が請求の趣旨を補足する陳述を行った。
新たに提出された事実を証する書面は,別紙2のとおりであり,その書面の内容については,記載を省略した。

2 監査の対象部局
都市整備局,建設局

3 事情を聴取した職員
都市整備局長,同局次長,同局総合交通政策部東西線調整課長
建設局百年の杜推進部管理課長

4 監査対象事項
本件請求の趣旨等を勘案し,今後仙台市長の権限により支出することとなる本件事業に関する一切の公金支出(以下「本件支出」という。)が違法・不当なものとなるかどうかを監査対象事項とした。

第6 監査結果
本件請求については,合議により次のとおり決定した。

本件請求は,請求に理由がないものと認め,これを棄却する。

1 監査対象事項に係る主な事実の経過等
(1)東西線は,昭和56年に仙石線の連続立体交差事業と併せ,仙石線との相互直通運転を前提とした「地下鉄東西線計画(仙台駅〜西公園)」を推進することから検討が始まった。さらに昭和60年代には,西公園から茂庭団地方面への「南西線」と併せ,三位一体の交通軸形成を目指すものとして検討されていた。
(2)事業の採算性に問題があること,仙石線の相互直通運転に対するJR側の負担分の資金調達が困難であることなどの理由から,事業化が困難として,平成3年に上記(1)の「地下鉄東西線計画」を断念した。
(3)平成5年に市議会に「東西交通軸促進調査特別委員会」が設置され,平成7年には市民19万人の署名により建設推進が陳情された。仙台市長は,平成8年に東西一貫した路線であれば事業化が可能であるとして,検討の方針を表明した。
(4)仙台市長は,平成10年2月に新しい「地下鉄東西線」として『平成14年度事業許可申請及び平成16年度着工』を目標とする整備方針を市議会に提示し,同時に市民に公表した。
(5)平成10年3月に「仙台市基本計画(仙台21プラン)」を策定し,「軌道系交通機関を基軸とし,高次な都市機能が連携する都市構造の形成」へのまちづくりの方向を示した。
この中で東西交通軸構想(八木山付近〜青葉山〜都心〜東部流通業務地区付近)の推進並びに東西交通軸を地下鉄南北線とJR在来線に結節させ,拠点間の連携を高める都市内の軌道系交通体系の構築が位置づけられた。
(6)仙台市長は,平成10年8月に整備ルート案を公表した。
(7)平成11年4月に東北運輸局長の諮問機関である「東北地方交通審議会」から答申(宮城県における公共交通機関の維持整備に関する計画について)があり,この中で東西線整備の必要性や整備区間などについて具体的な整備の方向が位置づけられた。
(8)平成11年度に「公共交通を利用して,市街化区域内の居住地から都心や主要拠点間を概ね30分で移動できるような利便性の高い交通体系」を目標とした「アクセス30分構想」を策定した。この中で東西線は,構想の実現のための中核となる施策として位置づけられた。
(9)平成12年3月にルート及び導入機種(リニアモーター地下鉄方式)を,また同年10月に駅位置と駅名(仮称)をそれぞれ決定した。
ルートについては,八木山動物公園付近から都心部を経て東部道路の仙台東IC付近に至る約14kmの区間のルートとされた。
(10)平成14年度当初から,地下鉄東西線の事業化に当たっては,「鉄道事業法」適用を前提とした国の地下高速鉄道整備事業費補助によることとして,平成16年度の事業着手という目標達成に向け,国の平成15年度予算案へ盛り込むことを前提とした新規の整備路線として事業採択を得るため国土交通省を始め関係省庁と協議を開始した。
(11)平成14年12月に国の補助事業として新規採択するとの内示を受けた。
(12)上記の内示を受けた後の計画概要は次のとおりである。

I 需要予測結果
予測年度 平成27年度
対象区間 動物公園〜荒井(営業キロ14km)
輸送需要 ・総需要(千人)            130
・輸送人キロ(百人km)      5,500
・輸送密度(人)          39,200
・キロあたり需要(人)        9,300
・平均乗車距離(km)         4.2

II 東西線建設費内訳
事業採択時(平成14年12月)
費目 費用
(単位:億円)
積算根拠
直接費 調査設計費 33 ・南北線実績に基づく,建設費に対する率により算定した。
用地費 143 ・宮城県作成の地価調査価格に基づき算定した。
土工費 46 ・基本設計に基づき,主となる工種については,国土交通省積算基準及び単価により算定した。
橋梁費 33 ・各橋りょう毎に,基本設計に基づき,橋脚など下部工については国土交通省積算基準及び単価により算定し,桁などの上部工についてはコンサルタント見積により算定した。
ずい道費 1,240 (開削工法の駅及びトンネル部)
・主となる工種については,土質及び掘削規模により標準的な4駅(川内駅・西公園駅・卸町駅・仙台駅)を選定し,基本設計に基づき国土交通省積算基準及び単価により算定した。また,下水道幹線やNTT洞道など大規模地下埋設物防護工や各駅及びトンネルの現場条件による特殊な工種はコンサルタント見積等により算定した。出入口換気口は南北線五橋駅市立病院前出入口換気口を標準規模とし,仙台市建築工事積算基準及び単価により,各駅の条件に応じて算定した。
(開削工法以外の駅及びトンネル部)
・これまでの調査や基本設計を基に各トンネルの工法別(NATM・シールド)の標準的な工種について,国土交通省積算基準や下水道工事歩掛りにより算定した。また,急曲線施工など特殊な工種については,コンサルタントの見積により算定した。
(工事経費)
・沿道補償費・地下埋設物移設費・下水道使用料・道路本復旧費・工事借地料などの経費は,南北線実績を物価補正して設定した価格を基に算定した。文化財調査費は,近年の仙台市内での実績により算定した。
軌道費 100 ・他都市の契約実績等を参考とした。
停車場費 283 (上屋・内装等建築工事)
・基本設計において標準駅(六丁の目駅)を設定し,仙台市建築工事積算基準及び単価に準拠し床面積当りの単価を設定し算定した。出入口についてはずい道費と同様,標準出入口を設定し算定した。
(設備・電気工事)
・製造者公表価格,刊行物及びコンサルタント見積を参考として,基本設計に基づき算出した。
車両費 156 ・他都市契約実績を参考として,基本設計に基づき算出した。
諸建物費 114 ・コンサルタント見積を参考に,基本設計に基づき単価を設定。
・車庫検修機械は,他都市契約実績を参考に,基本設計に基づき算出した。
通信線路費 75 ・製造者公表価格及びコンサルタント見積を参考として,基本設計に基づき算出した。
電力線路費 88 ・同上
変電所費 85 ・同上
2,396  
間接費 総係費 168 ・南北線および他都市の実績に基づく,直接費に対する率により算定した。
消費税 121  
建設利息 50  
339  
純建設費
(直接費+総係費+消費税)
2,685  
総建設費
(純建設費+建設利息)
2,735  

III 収支計画

項目 基本条件(事業採択時)
建設区間 動物公園〜荒井
建設キロ(営業キロ) 14.4km(14.0km)
事業手法 全線地下鉄補助事業
事業主体 仙台市(交通局)
建設工程 平成15〜26年度(12カ年)27年度開業
総建設費 2,735億円(190億円/km)
需要予測 130千人/日(9,300人/km)(H27)
工事費上昇率 建設費等上昇率 0%/年(建設工事費デフレータ(総合)の過去5年平均値)
(-0.6となったが0%とする)
用地費上昇率 0%/年(仙台市公示価格変動率の過去5年平均値)
(-5.3%となったが0%とする)
車両費上昇率 0.14%/年(過去5年間の消費者物価指数の平均値)
資金計画 補助制度 市負担:{建設費総額−(車両費+総係費+建設利息)}×1.02(必要事
務費)×0.8(有償資金比率)×0.35(補助率)
国負担:市負担×0.9(調整率)
補助は建設当年度に一括交付
資金構成 出資金:547億円
補助金:1,273
企業債:915
(うち建設利息):(50)
事業費総額:2,735
資金財源(企業債)
・政府資金
・公営企業金融公庫資金
・民間資金
割合金利
(過去5年間の南北線実績の平均値)(過去5年間の平均利率)
46%2.0%/年
17%2.0%/年
37%2.3%/年
短期借入金利 1.5%/年(過去5年間の平均利率)
収支計画 収入
・運賃体系
・運賃改定率
・運輸雑収率
南北線との通算運賃制
5%/5年
5.6%(過去5年間の南北線実績の平均値)
支出
・人件費上昇率
・経費上昇率
・減価償却方法
0.48%/年(南北線過去5年間実績平均)
0.14%/年(過去5年間の消費者物価指数の平均値)
みなし償却適用
収支結果 損益単黒8年
累黒13年
最大赤字123億円
資金単黒8年
累黒13年
最大赤字139億円


収支結果
収支条件 収支結果 備考
ケース 需要
(千人)
(達成率)
損益 資金
欠損解消年次 最大欠損累計額(億円) 欠損解消年次 最大欠損累計額(億円)
単年度 累積 単年度 累積
事業採択時 130(100%) 8 13 123 8 13 139 ・開業H27
・みなし償却適用
117(90%) 9 18 199 10 17 222
104(80%) 13 25 309 11 24 325
91(70%) 17 39 473 13 33 451

2 請求人の主張に対する仙台市の見解
(1)第3-1-(1)の機種の選考に係る請求人の主張について
 東西線は,本市の基幹交通軸として十分な輸送力を持ち,南西地域から都心部で南北線やJRの仙台駅を横断し,南東地域へと連絡することにより,鉄道不便地域の解消により市域の不均衡な交通環境の改善を図ることを目的に計画してきた経緯から,路面交通状況に影響されず,定時性や速達性を併せ持つ必要があるという要件や市街地の環境を考慮し,当初より導入空間は地下とすることを基本として計画してきた。(特に市街地部分においては選択肢は地下以外にない。)また,ルートは,必要とされるサービス圏域の地勢と自然環境への影響,市街地地下空間の状況,南北線やJRの仙台駅との結節,将来の土地利用やまちづくりの方向性との整合性などを総合的に考慮して最善のルート案を設定したものである。したがって,この地下空間への導入とルート案は,東西線を検討していく上での本市の政策的な基本前提であり,その基本前提の基に採算性や機種の検討を行ったものであり,全ての機種とその導入空間を考慮した様々なルートを取り上げて検討するのが基本であるとは考えていない。

(2)第3-1-(2)-[1]の一律地下走行を前提としているとの請求人の主張について
 東西線は地下を導入空間の基本としたことから,機種検討においても同様の前提の基に検討を行ったものである。したがって,機種とルート及び採算性とを密接不可分なものと捉えて検討してきたものではない。

(3)第3-1-(2)-[2]の過大設備であるとの請求人の主張について
 輸送能力は列車編成(1編成当たりの車両数)や最少運転間隔により変わるものであり,設備が過大か否かは,需要に見合うシステムが構成でき,そのシステムで採算性があるかどうかということにより判断すべきものであり,東西線へのリニアモーター式地下鉄の採用は過大設備であるということはない。

(4)第3-1-(2)-[3]の機種の安全性に係る請求人の主張について
 東西線における車両のブレーキ方式は,常用,非常,保安ブレーキからなり,常用ブレーキは電力回生ブレーキを優先し,ディスクブレーキの負担を軽減する方式である。”制動破綻”がどういう状況を指しているのか不明であるが,車両のブレーキ装置の性能は「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号。以下「省令」という。)により定められており,南北線と同様に十分な保守・点検体制を構築することにより,制動の信頼性及び運行の安全性は確保できるものである。
 なお,回生失効による急激な制動力低下を防ぐため,変電所に回生電力吸収装置を設置し,信頼性を向上させている。
 隧道内の火災については,通常の隧道と同様の考えで十分であり,南北線同様,異常時の対応マニュアル「異常時運転等取扱内規」等を定め,対応することにより安全対策は十分整備されるものと考えている。

(5)第3-1-(2)-[4]のリニアモーター方式固有の問題点に係る請求人の主張について
ア 車両に搭載されたリニアモーターと軌道に敷設されたリアクションプレートとの間隔については,現時点では12mmを標準間隔として計画している。この間隔は,主に走行中の間隔確保の観点から設定されているもので,リニアモーターやリアクションプレートの取り付け公差,車輪やレールのある程度の摩耗など,保守上の余裕も考慮し決定しており(車輪及びレールの摩耗量については,各々1mmを考慮している。),間隔が一定程度減少した場合には,その原因が車輪の摩耗によるものであればリニアモーターの取り付け高さを,レールの摩耗によるものであればリアクションプレートの取り付け高さを調整することになっている。現東西線計画の路線や運転条件からすると,車輪半径が1mm摩耗するのに1年数ヶ月,直線区間のレールが1mm摩耗するのに10年程度かかるものと想定しており,このことからして,リニアモーターまたはリアクションプレートの間隔調整の頻度はそれほど多くはならないものと認識している。このように,リニアモーターとリアクションプレートの間隔には保守上の余裕があり,間隔調整も頻繁に行われるものではなく,また,リニアモーターの特徴からして,回転モーターのような軸受けや潤滑の仕組みが不要であることなど,保守費を低減できる要素もあることから,単純に保守費が増加すると判断できるものではない。
イ リニアモーター電車と回転モーター電車については,モーターのみの比較をした場合には,リニアモーターの方が30%程度効率が悪いとされている。
 実際の地下鉄運行における電力使用量を比較する場合には,車両の補助装置(照明や制御電源等)や駅舎の設備(照明や換気設備等)に要する電力量を含めた総電力量の比較で見るべきであり,この場合ではリニアモーター電車の方が6%程度の増加となるものと想定している。リニアモーター式地下鉄の動力または運行に要する電力量が,通常地下鉄に比較して30%多く掛かるということはない。なお,リニアモーター方式は,路線形状への対応性や電力量の増加なども含め総合的な評価により選定しているものである。
ウ 横風による車両の転覆については,省令により安全性を確認することになっており,転覆限界風速の計算式により評価している。車両の横風に対する安全性は,車両の重量だけでなく,横風を受ける面積(車両側面積),軌間長,カントあるいは車両重心高さに左右されるものである。東西線で導入予定のリニアモーター電車は,小型のため横風を受ける面積は狭く,軌道は標準軌(軌間1,435mm)を採用し(南北線は軌間1,067 mm),かつ車両重心も低いため,走行安定性が高いということができる。
 現東西線計画の車両緒元や橋梁区間の路線条件により安全性を評価した結果,風速30m/s(南北線において列車の運転を休止する風速)での走行においても,十分な安全性を有しており,密閉式の橋梁とする必要はない。

(6)第3-1-(2)-[5]の他の交通機関や機種の検討がなされていないとの請求人の主張について
 東西線は,本市の基幹交通軸として,南西地域から都心部で南北線やJRの仙台駅を横断し,南東地域へと連絡することにより,鉄道不便地域の解消による市域の不均衡な交通環境の改善を図ることを目的に計画されてきた経緯から,当初から導入空間は地下とすることを基本として計画されてきたものである。
 したがって,例えばLRTの採用を考えた場合,輸送力を確保するために4両編成が必要となるが,仙台駅周辺の中心部を路面,専用軌道,または高架により運行させることは,現在のような市街地に於ける交通環境においては非現実的である。また,地下空間となれば信号・保安設備が必要となり,通常の地下鉄と何ら変わりなくなる。
 また,仙石線の延伸については,昭和61年頃,仙石線の地下化,地下鉄東西線(西公園まで)及び南西線を合わせ,三位一体の交通軸形成を目指す方針としていたが,相互直通運転に対するJR側負担分の資金調達が困難であること,仙台駅〜西公園駅間の事業の採算性が確保できないこと,西公園駅での乗換えが不便であること,などの理由により平成3年に断念し,新たな路線のあり方を探るものとして整理されたものである。
 仙石線延伸の場合では西公園までしか延伸できず,西公園からは他の交通システム(例えばモノレール等)により南西地域まで到達するということになるが,JR在来線の西公園までの延長は建設費が大きい割に需要はさほど期待できないうえ,南西地域の利用者は西公園で乗換を強いられることになり,都市内交通機関としては現在の計画と比較してもかなり劣ったシステムとなる。

(7)第3-1-(2)-[6]の需要予測が過大見積もりであるとの請求人の主張について
 平成12年度の国勢調査による人口と「仙台21プラン」に示している同年の推計人口の間には差が生じているが,これは,厳しい経済状況のもとで,東京圏への転出超過が増加していることなどにより社会増が鈍化していることが主な要因と分析している。社会増は社会情勢の変化等により大きく変動する傾向があり,本市は,現在雇用創出につながる新たな産業の創出や都市機能の一層の集積・高度化などに鋭意取り組んでいるところであり,これらの取り組みにより,都市の吸引力を高めることになると考えており,現行の推計人口を基本指標としても,大きな乖離は生じないと考えている。
 東西線の需要は,仙台市基本計画の目標年度としている平成22年の仙台市の計画人口及び道路,バス,東西線を含めた鉄道その他の交通ネットワーク,更には軌道系交通機関を基軸とした集約型の市街地形成を前提とした東西線沿線まちづくり構想やバス結節,パークアンドライドなどの交通結節機能を充実させることなどを基本として予測している。予測にあたっては,「交通需要予測モデル」と呼ばれる予測システムを用いており,これは,平成4年度に実施した「第3回仙台都市圏パーソントリップ調査」における各種交通機関の利用実績(どの地域の人が,何の目的で,どのような交通手段で,何人移動したか)などを取り入れて開発したもので,現時点で最も信頼性の高い予測方法である。南北線建設時のように地下鉄の利用実績が反映できないという条件での需要予測とは,信頼性が全く異なると考えている。
 平成4年度パーソントリップ調査から得られた南北線の利用実績と東西線の需要予測における「駅からの距離別夜間人口当たりの乗車人数」や沿線人口と乗車人員の比率を比較しても,十分妥当な予測になっていると考えている。
 なお,埼玉高速鉄道の予測と実績の乖離していることについては承知しており,その主な要因としては,沿線人口の張り付きや沿線開発の遅れなどが挙げられると考えている。
 しかし,東西線の沿線人口及び予測需要においては,本市の今後のまちづくりと連携を図りながら進められるものであり,他事業者の実績を十分参考とするにしても,都市環境やまちづくりの方法が異なる他都市の事例が,仙台市に適用されるものではないと考えている。

(8)第3-2-(1)の低廉すぎる事業費であるとの請求人の主張について
 東西線の建設費算定にあたっては,南北線や他の地下鉄路線のうち施工条件が類似するものを参考とし,平成12年度,13年度に行った基本設計に基づいて東西線の路線条件に見合った建設費用を算定しており,十分妥当なものであると考えている。
 東京大江戸線や神戸市海岸線が開業しているが,これらの路線は,地域における地勢条件や地質条件の違い,また,鉄道施設規模などが異なることから,機種が同じリニアモーター地下鉄であっても,本市の東西線と路線全体の費用をもって比較検討することは適切ではないと考えている。
 東京大江戸線については,環状線としたことにより既設の地下鉄やJR,私鉄との交差が多いこと(地下鉄線とは20数本,JRや私鉄とは10数本),さらには駅での乗換が可能なように既設駅のホームの更に下にホームを設けなければならなかったことなどにより,建設費が増加したものと考えられる。
 昭和62年開業時の南北線(八乙女〜富沢間)の地上部分は全路線長の約14%に過ぎず,南北線と同時期の他都市の建設費が240〜300億円/kmであったことを考えれば,仙台における地下鉄の建設費が他都市に比較すると少なくて済むということが解る。
 これは,地盤が良好である部分が多く安価な工法が採用可能であったことや,地下埋設物等支障となるものが少なかったことが理由であると考えられる。
 東西線の建設においても建設環境は南北線とさほど変わらずかなり良好といえる。地盤が悪いとされる東部地区においても,東京などの湾岸部に見られる軟弱地盤ではなく,隧道が設置される深さの地層は十分な強度を持っている。このような地盤に必要な対策を検討の上,今回の建設費に盛り込んでいる。
 また,曲線箇所が多いことや青葉山〜川内駅間の急勾配は,現在採用予定の工法にとっては大幅な建設費増要因とはならない。
 以上のように,建設費が妥当なものであることは明らかであり,したがって東西線建設事業が仙台市の財政を破綻させることはない。

(9)第3-2-(2)の国の交付金の負担保証がないとの請求人の主張について
 国からの補助金や交付税については,国の財政事情などにより変わり得るものであるが,収支計画の検討にあたっては,現行の補助体系に基づいている。
 仙台市の支出金については,交付税算入率の見直しにより現行制度では実質的な負担が40%から55%になったが,これにより増加する180億円については高速鉄道建設基金によって対応可能である。
 この基金は昭和55年に設置され,地下鉄関連事業のため長期にわたり準備されてきたもので,地下鉄関連事業の建設・運営に対応できるものとなっている。
 高速鉄道建設基金の平成13年度末残高は,約450億円となっている。この基金には条例に基づき法人市民税の超過課税分の1/2と事業所税の1/2を積み立てており,毎年約40億円の積立で推移していくものと考えている。
 なお,この増加する金額は市の一般会計で対応するものであり,事業者(交通局)が負担する企業債の増減には無関係であり,事業収支自体への影響はない。

(10)第3-2-(3)の損益収支に係る請求人の主張について
ア 東西線はせいぜい1日当たり6万人程度しか利用されないというのがどのような根拠に基づくものなのか明らかではないが,需要予測の数値は妥当性のあるものと考えている。
なお,収支に対する様々なシミュレーションによる適切な検討も行っている。
イ 『見なし帳簿原価』に基づく減価償却費計算を採用した収支計算については,
a 平成14年3月の「公営地下鉄事業の経営健全化に関する研究会(事務局:総務省自治財政局及び社団法人公営交通事業協会)」報告の中で「地下鉄事業の場合,施設更新時に再投資する財源として内部留保すべき資金規模は初期投資に比較して小さくなるものと考えられることなどから,地下鉄建設補助金を以て取得される固定資産は「見なし償却」の対象とすることが適当である。」旨の整理がなされたこと。
b 先進の地下鉄事業者においては,建設費補助を受けて主に新規に整備する路線を対象に「見なし償却」が適用されていること。
c 国との調整においても,上記の状況や,「地方公営企業法施行規則」の取扱に基づく指摘があったこと。
などの理由により採用することとしたものであり,仙台市民オンブズマン等からの公開質問状(平成14年10月22日及び12月6日)を受けて収支計算の方法を変更したものではない。
 国との協議・調整の最中で,かつ,事業採択されるかどうか微妙な時期での公開質問の提出となったため,公開質問状へは平成9年度の計画を前提に回答したものである。
 東西線は,南北線と同一の事業者(交通局)の運営となることから,南北線と同一運賃体系,かつ,乗り継ぎの場合も通算運賃となる予定である。
 また,公営企業としては,大きな利潤を得ることが目的ではないが,事業採算性を確保することが求められる。しかしながら,将来的に収支が好転すれば運賃の据置きまたは値下げもあり得ることである。

(11)第3-2-(4)-[1]の問題があるルートの選定であるとの請求人の主張について
 ルートについては,採算性だけでなく,本市の東部や南西部の鉄道不便地域を解消し,市民生活の利便性の向上や新しい都市構造の誘導を可能とするため,現況及び将来の土地利用,他の交通機関との連携,導入空間確保の容易性,環境への影響などを考慮するとともに,建設費と需要のバランス等から見て最大の利便性が供給できることなどを総合的に勘案し決定したものである。
 若林区役所や卸町の中心部を経由するように現計画ルートを迂回させることは,路線延長を長くすることや広幅員の道路がないことなどにより,建設費を増加させるだけでなく,南東部から中心部への速達性を損なうこととなる。また,路線長の割には利用客の増加が望めず,キロ当たりの輸送需要を減少させることになり,事業採算性に不利に働くこととなる。
なお,区役所が鉄道駅に隣接していないことが市民的公平さを欠くことになるという議論は,他都市の例を鑑みてもおかしい。
薬師堂駅から若林区役所へのアクセスは,都市計画道路七郷堀線の整備や,薬師堂駅に整備する駅前広場に結節するバス路線の再編等により確保するものとしている。
東西線は,南北線と一体となった都市基幹交通として位置付けられていることから,南北線との乗り継ぐ構造とすることが必然である。このことから,現南北線仙台駅下を十字交差することとしたものであり,すでに完成した南北線駅の構造及び既存施設から見ると,東西線ホームが南北線駅の下となることは選択の余地のないことである。ホームの深さが地表面下約29mとなることから,ホームからの移動には上下方向にエスカレーターを配置することなどにより,乗降客の負荷軽減を図っている。
なお,東西線仙台駅の駅舎が現南北線の駅舎よりJR仙台駅に近づくため,乗換所要時間は現在より少なくて済み,東西線のホームからJR仙台駅の最寄りの改札口からまでは約3分40秒前後となる(現在南北線ホームから南改札を経由した場合では約6分を要している。)。
民有地等の地下に鉄道を敷設する場合には権利を設定する必要があり,鉄道事業者が応分の補償をすることとなる。したがって,東西線の建設費を積算する際に,JR仙台駅の下を通過することに対するJR東日本への用地補償についても宮城県が作成している地価調査価格を基にして費用を計上しており,新たに負担が増えることはない。

(12)第3-2-(4)-[2]の急曲線続きで安全性に不安があるとの請求人の主張について
 急曲線箇所は,平成13年までの基本設計においては南北線の最急曲線である半径160m以下の箇所が7箇所,半径160m程度の箇所が5箇所設定している。リニアモーター電車は車輪を駆動させないため,カーブの具合に応じて車軸の向きを変えるステアリング機構が使用できることにより急カーブへも対応できるようになるという特性を有しており,通常の電車より急曲線を通過させることが可能である。さらに,現在検討中の信号システムでは,こまめに曲線通過速度が設定可能であり,このことに基づくシミュレーションによっても,表定速度を南北線とほぼ同様の30km/hに確保できるという結果が得られている。
すでに成熟した市街地が形成されている都心部では,道路の線形に大きく制限されることから,路線に急曲線が存在することは都市内交通である以上避け得ないものである。

(13)第3-2-(4)-[3]の現状より割高な運賃などにより利用が敬遠されるとの請求人の主張について
 運賃については現南北線と同一運賃体系,かつ,乗り継ぎの場合も通算運賃とする予定である。5年毎5%の運賃値上げは事業採択されるにあたって収支計算上想定したものであり,その時々の経済情勢によって変化するものである。
また,請求人の主張のような悪循環は,まさに路面公共交通である市電が辿ってきた道であり,こうした状況などを踏まえ,地上の交通状況に影響されないよう地下鉄南北線を建設し,東西線においても地下鉄を採用しているものである。
南北線沿線の渋滞は,南北線沿線以遠に人口が張り付くとともに,一世帯当たりの自動車保有台数が増加したことによるものである。現在,南北線が1日約16万人を運んでいることを考えれば,南北線が無く,その需要の処理をバスや自家用車で行っているとしたらどのような交通状態になっているかを考えれば,南北線が交通渋滞緩和に貢献していることは明らかである。

(14)第3-2-(4)-[4]のJR仙石線の直通運行に係る請求人の主張について
 仙石線延伸による東西線計画においてはJRと協議を重ねながら検討し,事業化を断念したものであり,仙台市単独で進めてきたものものではない。
また,東北本線,常磐線,仙山線の乗客はどちらにしても乗り換えしなければならないうえ,圧倒的に多い南北線の乗換客が,システムが全く異なり,石巻への特別快速等があって運行間隔も異なることになるであろう仙石線の延長路線に乗り換えしなければならなくなり,都市内の交通需要を処理する交通機関としては欠陥のあるものとならざるを得ない。
現計画の東西線ならば南北線と同一の運行形態とすることも可能であり,例えば仙台駅への到着が交互になるようにすれば,ほとんど待ち時間なしで乗り換えすることも可能となる。このような利便性を享受出来ないことの方が,市民にとって大きな損失となることは明らかである。

(15)第3-2-(4)-[5]のバス及び東西線利用の運賃に係る請求人の主張について
 初乗り運賃は,開業時(平成27年)における想定である。また,バスとの乗り継ぎ割引は今後政策的に検討すべきものであり,現行のバス運賃に基づき議論するのは適当ではない。
東西線開業時のバス路線は利用者の利便性等を最大限考慮して再編することにより,目的地への所要時間の短縮や到達する時間が計算できることなど,市民に大きな利便性と効果をもたらすことができるものと考えている。

(16)第3-2-(5)の景観や生態系の破壊に係る請求人の主張について
ア リニアモーター地下鉄が風に対して通常の地下鉄に比較して弱いということは全くなく,したがって,広瀬川橋梁,竜の口橋梁とも密閉型架橋とする必要はない。
広瀬川橋梁を架設することになる仲の瀬橋と大橋の間は,歴史的な経過から市内の広瀬川の中で比較しても自然景観の優れている箇所と捉えている。そのため,河川占用条件を前提としながらも,環境影響評価の一環として,橋梁イメージアンケートなどの手法も用いながら,景観に適合した橋梁デザインを橋梁形式選定段階から景観と一体的に捉え検討してきている。
 竜の口渓谷では,自然の改変を最小限にしたいという観点から,橋梁形式選定に際しては,都市計画変更を予定している都市計画道路川内旗立線と同一ルートとし,道路と鉄道の併用橋として計画し検討している。橋梁上部を道路とし,その下を東西線が走行することで,道路と鉄道がそれぞれ単独で架設するよりも自然の改変範囲を最小限にでき,効率的な施設整備と,維持管理費の低減などを見込んで検討を進めているところである。
 また,橋脚の数を減らし長大スパンとすることで,自然改変を小さくすることも検討している。
イ また,東西線南西部の現ルートについては,向山を経由する案等様々なルートを比較検討した上で,自然環境保護の観点も含めた総合的な判断により採用したものであり,東北大の青葉山地区の「国際学術研究交流拠点」や川内地区へのアクセスに有効なルートとしたことにより,天然記念物である「青葉山」を迂回し,周辺の自然環境や景観に及ぼす影響を最小限に抑えるために設定したルートともなっている。他ルートは,広幅員の道路がないこと等から既存道路の交通容量の問題,密集市街地での住環境への影響などから,採用は困難である。

(17)第3-2-(6)の青葉通りのケヤキ等の移植,伐採は条例違反であるとの請求人の主張について
ア 本市では,杜の都の環境をつくる条例第18条に基づき,昭和50年6月5日に,青葉通のケヤキ街路樹及び西公園のヒマラヤシーダー林を保存樹林に,西公園のイチョウを保存樹木に,それぞれ指定している。
 保存樹木・樹林である青葉通のケヤキ街路樹等について,その所有者及び管理者として,生育環境の調査を継続的に実施するとともに乾燥時の潅水,病害虫駆除,雨水浸透枡の設置等を行うなど,上記指定の後,「杜の都の環境をつくる条例」に基づき適切な保全に努めてきた。
イ 今回の東西線建設工事に伴うケヤキ等の移植等に関連して保存樹木・樹林の指定解除を行う考えはない。ただし,同条例においては,第18条第2項において第9条第5項の規定を準用していることから,指定した保存樹木・樹林について,当該指定の解除も予定されていることは明らかである。保存樹木・樹林の指定制度の趣旨から考えれば,その指定の解除にあたっては慎重な対応が必要であることは当然であるが,所有者のやむを得ない事情や都市計画等のまちづくりという広い観点の中で調整が必要な場合には,指定の解除や当該樹木・樹林の移植等は条例上許容された行為である。
ウ なお,本市では,ケヤキ街路樹等が保存樹木等に指定されていることの重要性に鑑み,今回の東西線計画への対応も含めた「青葉通ケヤキ街路樹等に関する方針<素案>」を作成し,条例第8条第1項に基づき「杜の都の環境をつくる審議会」に諮問し審議するとともに,約1万人を対象とした市民意識調査の実施,仙台市ホームページ及び市政だより平成14年12月号と15年1月号への特集記事の掲載によるパブリックコメントの募集,更に市議会におけるご議論など,広く市民のご意見をいただく手法で検討を進めており,同条例の規定に則りながら,開かれた議論の中で「青葉通ケヤキ街路樹等に関する方針」を定めようとしている。

(18)第3-2-(7)-[1]の東部地区の冠水対策等が不明との請求人の主張について
 台風などによるこれまでの冠水状況などから見ても,既存の地下鉄などで採用されている遮水板などで十分対向可能な程度であり,遮水板自体も簡単な構造で出入口等に付加できる物であることから特に著しく費用を要するものではない。

(19)第3-2-(7)-[2]の液状化対策費を投じても必要な地区か疑問であるとの請求人の主張について
 これまでの調査結果では,卸町付近から東の区間は地表面下4〜9mには軟弱な表層地層が存在するが,その下は締まった砂層となっていることがわかっている。砂層でありかつ,地下水位が高いことからも液状化の検討が必要な地質であると捉えている。
 しかし,地下鉄を敷設する深さの地層での検討では,地層の強度が比較的高く,宮城県沖地震レベルの地震動に対しては地層の液状化への抵抗能力も高いと判断しており,特別な対策の必要性は認めていない。

(20)第3-2-(7)-[3]の地震対策による建設費が膨張するとの請求人の主張について
 現在の鉄道構造物の設計に際しては,平成11年10月に定められた耐震設計標準に基づくこととされており,東西線においても平成13年までの基本設計では,同標準に基づく検討を行っている。平成14年3月に改定,公布された鉄道構造物技術基準でも,上記のとおり規定されている。
 また,東西線では具体的に宮城県沖地震に対する耐震性についても検討を進めており,現在までの検討では上記耐震設計の基準に基づくことで,宮城県沖地震に対しても十分な耐震性を有していると判断している。
 今回の東西線の建設費算定に当っては,上記検討に基づく構造物を前提としており,所要の耐震性は確保されていると考えている。

(21)第3-2-(7)-[4]の長町利府断層による地下鉄隧道断面の剪断についての請求人の主張について
 主張の”大地震”がどのようなものを指しているのか不明であるが,長町利府断層と直接関係のない大地震の場合,それによって誘起される地層のずれはあったとしても僅かである。
 また,長町利府断層の断層面は地下鉄敷設位置よりもはるかに大深度に位置しており断層面が破壊した場合でも,断層面のずれそのものが直接地下鉄構造物へ影響を及ぼすものではない。
 ただし,同断層の副断層であり,地表面近くまで達する大年寺断層の存在が近年明らかになってきており,この断層と東西線とは交差する可能性が高いものと捉えている。このことに対して,現計画では断層の変位に対して構造物を補強することは不可能であると判断し,断層付近を通過する隧道の径を大きくし,隧道が断層とともに剪断されたとしても,早期の復旧が可能となるように検討を進めている。

(22)第3-2-(7)-[5]の連続勾配隧道内での火災に係る請求人の主張について
 トンネル及び駅施設は「地下鉄道の火災対策の基準について(昭和50年1月30日付鉄総第49号の2(運輸省鉄道監督局長から陸運局長あて通達)」により不燃化することが義務づけられている。また,車両についても省令により,不燃,極難燃,または難燃材で構成することが義務づけられている。これらの材料は,可燃物が接触して存在し,燃焼している場合は着火及び着炎するが,可燃物が燃焼しきった後には炎は残らないもの等と規格が定められており,車両自体が炎を上げて燃焼することはない。
 トンネル火災においては,排煙機により強制的に気流を発生させ,煙と逆方向に避難路を確保する方法を採用している。気流の速さは,コンピュータ解析を行った上で適切な速さに制御するため,煙突効果による影響はほとんどないと考えている。
 なお,オーストリアのケーブルカーの火災は,軌道の最大勾配が42%[高低差1,530m]もあり(東西線は最大勾配5.7%[高低差70m]),しかも車体に可燃性のFRP(グラスファイバー強化プラスチック)が使用されていたこともあることから,東西線を同列に扱うべきものではない。

(23)第3-2-(7)-[6]の安全装置により隧道断面が拡大するとの請求人の主張について
 東西線における車両のブレーキ方式は,常用,非常,保安ブレーキからなり,常用ブレーキは電力回生ブレーキを優先し,ディスクブレーキの負担を軽減する方式である。
 車両のブレーキ装置の性能は省令により定められており,南北線と同様に十分な保守・点検体制を構築することにより,制動の信頼性及び運行の安全性は確保できるものである。
 なお,回生失効による急激な制動力低下を防ぐため,変電所に回生電力吸収装置を設置し,信頼性を向上させている。したがって,車両に抵抗器を搭載する必要はなく,隧道断面は大きくならない。

(24)第3-2-(7)-[7]の急曲線が多く危険箇所の連続する路線であるとの請求人の主張について
 平成12年3月8日の地下鉄日比谷線の事故原因は,「帝都高速度交通営団日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故に関する調査報告書,2000.10」において『今回の脱線は,左急曲線に続く緩和曲線の始端付近(この箇所は,構造上の軌道面の緩やかなねじれ(保守基準内の誤差を含む。)により,右側車輪の輪重の減少と横圧の増加が生じる)という線形条件の箇所において,輪重減少や横圧増加を引き起こす複数の因子の影響が複合的に積み重なったことにより,8両目車両第1軸の右側車輪の脱線係数が増大し,車輪がレールに乗り上がって脱輪したことによるもの(いわゆる「乗り上がり脱線」)と推定される。』と取りまとめられている。
 つまり,事故の大きな要因が急曲線だけにあったわけではなく,複数の因子の影響が複合的に積み重なったことにより脱線したと推定している。
 同種の事故防止対策に関しては,この報告書で提言されているほか,その提言を踏まえて防止対策方法が通達(「急曲線における低速走行時の脱線防止対策について」(平成12年10月26日付鉄保第148号,鉄施第153号,その他運用に関する通達))されると共に,この事故後に省令が改正されており,これらを遵守することにより脱線を防止できるものと考えている。
3 理由
(1)住民監査請求は,地方公共団体の機関又は職員による公金の支出,財産の取得・管理・処分,契約の締結・履行,債務その他の義務の負担の行為,又は公金の賦課・徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「財務会計行為」という。)が違法・不当であると認めるときに,これを証する書面を添えて,住民が監査委員に対して監査を求め,違法・不当な財務会計行為の防止,是正又は当該財務会計行為によって地方公共団体が被った損害の補填に必要な措置を講じさせるよう請求することができる制度であり,本来,監査委員の監査の対象となるのは違法・不当な財務会計行為そのものについてである。
 本件請求において請求人は,本件事業に関する一切の公金支出は違法・不当な公金の支出に当たるとして監査を求めているが,その理由については,当該支出行為そのものに違法・不当な点があるとするのではなく,本件事業計画の内容が違法・不当であるとし,「第3請求の要旨」の理由を述べているものである。すなわち本件請求は,基本的に財務会計行為の前提又は原因となる非財務会計行為(以下「先行行為」という。)の違法性・不当性を問題としているものである。
 このように先行行為の違法性・不当性を理由として提出された住民監査請求については,住民監査請求制度の趣旨や,選挙権を有する者の総数の1/50以上の連署をもって地方公共団体及びその機関の処理する一切の事務を対象として監査を求める事務監査請求の制度(法第75条)との整合性等を考慮して取り扱うべきである。
 また,先行行為が違法・不当であれば財務会計行為も違法・不当となると解してすべて住民監査請求の対象となるとすると,結果的に住民監査請求によって広く行政一般の可否を問えることになってしまい,住民監査請求の対象を財務会計行為に限った法の趣旨,目的を明らかに逸脱することとなる。
 このため,先行行為の性質,違法・不当事由の内容と程度,先行行為と財務会計行為の関係等を総合的に考慮し,当該財務会計行為が財務会計の適正な執行の確保の見地から見過ごすことのできない瑕疵があるとき,又は先行行為に重大かつ明白な瑕疵がある場合について,当該財務会計行為も違法・不当性を帯び,住民監査請求の対象となりうると解すべきである。
 以下,この観点から判断するものとする。

(2)請求人が本件支出が違法・不当であるとする理由は,違法・不当性の根拠との関係で,要するに巨額の経費を費やす本件事業の計画内容について,[1]機種選定について必要な事項の検討を欠き,過大な需要予測に基づく過大設備である。[2]建設費が低廉すぎ,過大な需要予測に基づく収支計画である。という点にあるものと考える。

(3)上記[1]の機種選定及び過大設備に関する主張については,仙台市は,昭和56年から始まる「東西線」の検討,JRとの協議による「東西線」の断念,市議会での審議や19万人の市民の陳情を受けての新しい「地下鉄東西線」の整備方針の公表等の経過を経て,導入空間とルート案を決定し,それを基本前提として学識経験者,専門家の協力を得て採算性や機種の検討を行ったことが認められる。
 請求人は,過大設備であることや検討の欠除・不十分性などを指摘しているが,仙台市の検討の前提と異なる前提の基に立った主張であり,仙台市の長期間にわたる慎重な検討に鑑みても,機種選定に重大,明白な瑕疵があるものとは認められない。

(4)上記[2]の建設費が低廉すぎるとの主張については,仙台市は,東西線の建設費算定に当たっては,南北線や他の地下鉄路線のうち施工条件が類似するものについて,客観的な路線条件,地勢条件,地質条件,施設規模の比較検討の上で,上記事実の経過等(12)IIの「東西線建設費内訳」のとおり具体の積算根拠に基づき算定しているものと認められる。
 請求人は,大部分が地下走行であること,急曲箇所が多いこと,傾斜地を走行すること,架橋があること,軟弱地盤や洪水被害対策などから190億円/kmで納まらないとしているが,これらの状況は周知のこととして,当然仙台市の算定の前提となっているものであり,請求人が加算要因として具体的な根拠を示しているとも見られず,単なる推測の域を出ないものと認められる。したがって,仙台市の算定に重大かつ明白な瑕疵があるものとは認められない。

(5)[1]及び[2]の需要予測については,経済の全般的な動向その他さまざまな経済的,社会的要因により変動する数値につき将来の推移を予測することは非常に困難と考えるが,仙台市の需要予測は,現在考え得る客観的な資料,すなわち「仙台21プラン」に示す推計人口,平成4年実施のパーソントリップ調査(請求人のいう,平成9年の調査は「仙台都市圏物資流動調査」であり,平成14年のパーソントリップ調査は平成16年までの調査期間で調査・分析中である。),仙台市が国・県と共同開発した仙台圏における「交通需要予測モデル」などに基づき行われたものであり,その予測の方法あるいはその根拠となる資料が明らかに合理性を欠き,重大かつ明白な瑕疵があるものとは認められない。

(6)その余の請求人の主張については,具体的な違法・不当事由を主張するものとは認められず,市長の政策判断の当否についての意見の表明にすぎないものと判断する。

 以上のことから,請求人の主張理由は,いずれも請求人の求めている財務会計行為の違法性又は不当性に直接結びつくような重大かつ明白な瑕疵に該当するものとは認められず,請求人の主張には理由がないものと考える。
※ 別紙1,2は記載を省略します。


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