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更新日:2021年7月29日

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第3回「協働がつなぐ仙台 郡市長とふれあいトーク」(6月30日)

6月30日(土曜)は、外国につながる子どもたちに日本語や日本の文化などを教える「特定非営利活動法人ICAS(アイカス)国際都市仙台を支える市民の会」の皆さんにお話をうかがうため、団体の皆さんが開催している「さっと日本語クラブ」の会場の青葉区中央市民センターを訪問しました。

集合写真

「さっと日本語クラブ」の授業を見学

皆さんにお話をうかがう前に、「さっと日本語クラブ」での授業を見学しました。
「さっと日本語クラブ」は、「親の事情で外国から来日した」「日本で生まれ育ったが、両親またはどちらかの親が外国籍」など、海外に自分自身のルーツがあり、多様な言語、文化、価値観、慣習などの中で育ってきた子どもたちを対象に、日本語学習支援を行う場として平成16年に開設されました。「さっと日本語クラブ」の名前には、開催される土曜日の「Saturday」の「Sat」に、「さっと早く日本語を覚えよう」という願いが込められています。
この日は小学生のクラスと中学生のクラスの授業が行われており、小学生のクラスでは日記の書き方の授業、中学生はことわざや慣用句の授業が行われておりました。
小学生のクラスでは、市長が自己紹介を兼ねて名前を板書した文字を、子どもたちがかわるがわる堂々と音読してくれました。  

懇談に参加された皆さんと団体の概要

特定非営利活動法人ICAS(アイカス)国際都市仙台を支える市民の会
  
理事長 氏家 洋子 さん  
高橋 光子 さん 「さっと日本語クラブ」日本語講師
河田 文子 さん 「さっと日本語クラブ」日本語講師
熱海 惠美子 さん 「さっと日本語クラブ」日本語講師
千葉 日可里 さん 学生ボランティア 大学1年生
下妻 幸子 さん  学生ボランティア 大学2年生
大庭 佳乃 さん  学生ボランティア 大学3年生

「特定非営利活動法人ICAS国際都市仙台を支える市民の会」は、日本語教育及び文化交流に関する事業を行い、市民の国際相互理解の増進と国際性豊かな都市づくりの推進に寄与し、国際社会に貢献することを目的として、昭和62年に設立されました。

活動のきっかけと担い手の育成

市長
先ほど授業を拝見いたしましたが、多くのお子さんが参加されていて、仙台にも外国につながる子どもたちが増えていることを改めて認識しました。これまでなかなか間近に接する機会がなかったので、子どもたちが学校や日本での新しい生活に慣れるために頑張っているのだと今日改めて感じました。
氏家理事長はどのようなことがきっかけでこちらの団体を立ち上げられたのでしょうか。

氏家さん
(当時の記事を見せながら)これは三十数年前の写真です。私と一緒に写っているのは、イスラエル、ニュージーランド、イギリスの方です。仙台が政令指定都市になる少し前になりますが、当時、留学生や外国人研究員のご主人と来日された奥様方から「赤ちゃん連れの私たちも日本語を学びたい」という切実な声があり、託児付き日本語教室を昭和63年にスタートさせたのが活動の始まりです。その後、外国につながる子どもたちが増えてきました。外国人の家族から、子どもたちが新しい生活、新しい学校に入るときに「どうしたらすんなりと入っていけるのか」ということを相談されたことがきっかけで、平成16年に「さっと日本語クラブ」を立ち上げることになりました。

市長
30年間活動を続けていらっしゃったということですが、この間、日本語講師の方の人材確保は、どのようにされてきたのでしょうか。

氏家さん
ICAS設立当時、すぐに日本語講座を開講したのではなく、先進的な取組みをしていた金沢市から講師を呼び、ボランティア希望の方々に日本語を指導するうえで必要な知識と能力を育む研修を行いました。最初の半年間は市民レベルの勉強会を中心に取り組んだのです。この取り組みは、当時の仙台市民に大きな反響を呼び起こしました。実はこうした活動を認めバックアップしてくださったのは、当時の市の担当者でした。「ここにお集まりの皆さんは、これからの国際交流のよき担い手となっていってくれるでしょう。」とおっしゃって下さったことは本当に嬉しかったですし、その後の活動の励みになりました。その後、SenTIA(仙台観光国際協会)の主催で定期的に日本語ボランティア育成講座(現在は「日本語ボランティア入門講座」)の開催が継続され、市民センターとの協力体制も整い、少しずつ少しずつ活動が広がっていきました。

市長
この30年間で、仙台へいらっしゃる外国人の数に変化はありましたか。

氏家さん
ありましたね。仙台は東北では大きな街だということで、いろいろな職種の方が来るようになりました。その家族として来る子どもたちも増えました。

氏家さん

当時の記事を見せながらお話しする氏家さん

市長
「さっと日本語クラブ」の日本語講師の皆さんは、どのようなきっかけで、この活動に関わることになったのですか。

高橋さん
私は小学校の教師を退職した時に「何か社会に恩返しをしたい、社会貢献していきたい」と思っていたところ、市政だよりの日本語ボランティア育成講座の案内が目に留まり受講しました。講座受講を修了し最初は大人に教えていましたが、「子どもに教えませんか」と声をかけられ、こちらの活動に関わることになりました。

河田さん
私はもともと言語を習ったり教えたりすることに興味があり、先ほど理事長から話のありましたSenTIAで開講している日本語ボランティア育成講座を受けたのがきっかけでした。私も最初は大人に教えていましたが、高橋さん同様「子どもにも教えませんか」と誘われて、こちらの活動に関わることになりました。

熱海さん
私も小学校の教師でした。もともと外国に興味があり旅行も好きでした。退職後、日本語ボランティア育成講座を受けたことがきっかけで、最初から子ども向けの「さっと日本語クラブ」の活動に関わることになりました。

市長
学生ボランティアの皆さんはどういったことがきっかけで、この活動に関わることになったのですか。

千葉さん
私は以前より大学に入学したら大学外での活動やボランティア、中でも子どもたちと関わる活動をしたいと思っていました。そんなときに大学から「さっと日本語クラブ」のボランティア募集のメールが届き、初めてこちらの活動を知り「やってみようかな」と思い、応募したのがきっかけです。

下妻さん
私も大学からの募集案内を見て応募しました。将来教員を目指しているので、子どもと関わる活動をしたいと思っていたことと、大学で英語教育を専攻しているので外国に興味があったこともあり、この活動にとても魅力を感じました。

大庭さん
私は、別に加入していた大学のボランティアサークルの先生からの紹介で、見学に来たことがきっかけです。ここは勉強だけを教える場所というだけではなく、外国から来たばかりの子どもたちがのびのびと過ごせる「子どもたちの居場所」になっていて、子どもたちがすごく良い雰囲気で過ごしているところに惹かれました。
また、私は日本語を専門に研究したいと思っているのですが、子どもたちに教えることを通して自分が気づかない日本語についての「気づき」を得られるかもしれないと感じました。そのような理由で、見学のつもりで来たのですが、その日に入ることに決めました。

高橋さん

川田さん

写真左 日本語講師の高橋さん
写真右 日本語講師の河田さん

教え方の工夫は子どもたちへ寄り添う思いから

市長
この教室が日本語を教える場所だけではなく、子どもたちが居心地の良さを感じられる、「居場所」になっているというお話がありました。一方で、色々な国籍の子どもたちそれぞれに教えるというのは難しい面があるのではないでしょうか。何か工夫されていることはありますか。

熱海さん
子どもたちは、話し言葉はわりと覚えるのが早いです。難しいのは読み書きです。話すようになったら、語彙、読み書きを中心に教えていきます。例えば、幼児向けの絵本や教材を使って語彙をたくさん獲得させるようにしたり、アクティビティを取り入れるなどして、教え方の工夫をしています。

市長
日本語がきちんと理解できていないと、国語はもちろんですが、その他の教科、例えば算数等の文章題なども読み解けないと思うのですね。その点で気をつかわれていることはありますか。

河田さん
話し言葉で自分の身の回りのことを理解できても、学校の教科に関わる言葉の理解は、難しい点があります。母国語ではわかるのに、日本語で問われるとわからない、ということはよくあることで、本人も悔しく感じているようです。そのようなときは、算数の簡単な問題の音読や、わかるところまでレベルを下げて説明し、また本人にも説明させるなどして指導しています。また、年齢に応じて小学校低学年、高学年、中学生と分けて、その中でも個々の習熟度に合わせた教材を使って指導しています。日本語学習の他に、学校の宿題やドリルを使って、教科学習の手伝いもしています。

市長
高橋さんは中学生に教えていらっしゃいましたが、指導面で工夫していることはありますか。

高橋さん
中学生で日本へ来た場合、母国では成績優秀だったのに、こちらに来て日本語がわからないことによる挫折を感じる子どもがいます。子どもにとっては辛い状況ですね。中学3年生になりますと、高校受験があり、今後の進路に関わる悩みや思春期特有の悩みを抱える時期でもあります。
日常では色々な気持ちを抱えていても、ここに来て同じ立場の仲間と週に一度会って、日本語を学んでいる中でざっくばらんに話ができ、自分の気持ちを話せる場になっているように私は感じています。
自分の知識として日本語がわかる、自分の気持ちを日本語で表現できる、というところを身近に感じられるものとして「ことわざ」や「慣用句」を、今日の授業で取り入れました。日本語で自分の気持ちを表現するときに、幅が出ているように感じます。「こうしてあげたい」という思いはありながら、できていないことの方が多いかもしれませんが、子どもたちの気持ちに寄り添えるように心がけて指導しています。

熱海さん

日本語講師の熱海さん

楽しく学べるみんなの居場所

市長
学生ボランティアの皆さんは、この活動を通して、ご自身にどういった学びがありましたか。

千葉さん
子どもたちはある時間を過ぎると集中力が切れてきます。そんな時にどうやって机に向かわせるか、どう声をかけて集中力を持続させるかというところについて、毎回勉強になっています。例えば、直接勉強に関わらないことでも、子どもが興味のある話題を振り、その内容を発展させて子どもを勉強に向かわせるようにするなど、いわば「指導力」を日々学ばせてもらっています。「さっと日本語クラブ」の開講式で、理事長から「身体をつくるためにご飯を食べるように、勉強をすることは頭への栄養である」というお話があり、「なるほど」と思いました。子どもに言葉をかける時も、言いくるめる方法ではなく、相手の頭に入る栄養だと思い、言葉の使い方を考えて伝えてあげると、子どもの方にもすんなり入っていくようだと最近は感じています。

下妻さん
学生生活を送っていると、普段は子どもと関わる機会はそんなに多くないので、私にとっては貴重な時間になっています。また、日本語講師の皆さんの子どもたちへの言葉のかけ方、指導の仕方、関わり方を間近で見ていますと、毎回、その姿が本当に勉強になります。

大庭さん
学びとは違うかもしれませんが、「さっと日本語クラブ」は子どもたちにとってだけではなく私にとっても和める空間、自分の居場所の一つになっています。ここでボランティア活動を始めて2年弱になりますが、顔見知りの子どもたちが増えて、「ひさしぶり」「元気」「学校どう」などと気さくに話せることが嬉しく、毎回エネルギーをもらっています。
先日子どもに「谷ってなに」と聞かれ、どう説明したらいいのか考えました。辞書をひけばすぐわかるかもしれませんが、私たち日本人にとっては当たり前と思っていることを説明する難しさを感じましたし、試されているような気持ちになりました。その時は絵を描いて必死に説明しましたが、こういった普段の学生生活では気づきにくい点に気づくことができ、毎回勉強になることばかりです。

千葉さん

下妻さん

大庭さん

写真左 学生ボランティアの千葉さん
写真中 学生ボランティアの下妻さん
写真右 学生ボランティアの大庭さん

子どもたちの未来への下地を作っている時期に立ち会っているという意識をもって取り組んでいきたい

市長
これからの活動はどのように展開していきたいとお考えですか。

氏家さん
日本語講師はもちろんのこと、学生たちにもこのように参加してもらって、良いかたちで運営できているのではないかと思っています。講座の目的は早く学校教育になじめるようにというのが大前提にありますが、それに加えて、ICASの日本語教育理念に、「母語の保持」があります。子どもたちに日本語を教えることによって、母語を削っていくのではなく、共存させていくことが目的です。子どもたちは自分が受けた教育を50年、60年先の未来へとつないで社会へと貢献していく存在。今は大変な思いをして日本語を勉強していても、このことを強みに将来は国際交流の懸け橋、多文化共生の担い手として、貴重な人材になってくれると思っています。子どもたちの未来への下地を作っている時期に立ち会っているのだという意識をもって、これからも取り組んでいきたいですね。

期待されるサポートの広がり

市長
先ほど外国につながる子どもたちが増えてきているとうかがいましたが、今後はさらにこのような取り組みへの需要が増えていくのではないでしょうか。

熱海さん
仙台市内にここしかなく、小学生の子どもたちが通うには親御さんなどの送迎が必要なので、通うのに苦労している子どももいます。外国人の子どもたちが多いほかの区にもあると通いやすく勉強しやすいかもしれません。

高橋さん
中学生は時間の問題が大きいように思います。部活などもあり、学校生活と両立するには実施日が土曜日しかないことはちょっと大変なようです。また受験も控えていますので、日本語を習得できないことは受験に関わる切実な問題です。もう少し通いやすい環境が整えば、受験を控えている子どもたちにとっても寄り添えるのではないかと考えています。 

市長
各地域の中で、子どもたちをサポートできる体制があるといいですね。今後も外国人の方の増加に伴い、講座への需要も増えると予測されますので、今後の課題として検討が必要ですね。

お互いの国の文化や言語、民族性を尊重し合う人間関係を未来へも築いていきたい

懇談全景

市長
30年間にわたり続けてこられた活動への情熱、お気持ちを聞かせてください。

氏家さん
私たちICASの活動の合言葉は「知性と善意」です。子どもたちは自分の意志で日本に来たわけではないので、挫折、孤独感など、色々な気持ちを抱えやすいのです。日本語を習得して早く新しい生活に慣れていくことを何よりも望みますが、活動にあたっては子どもたちがほっとできる場所の提供になればいいと常に思っています。
言葉は民族の最大の文化だと思います。相手の国の少しの言葉を手掛かりにして異なる文化の人とも話せます。言葉をツールにして異なる民族同士で心を通わせていくことができます。お互いの国の文化や言語、民族性を尊重し合うといった人間関係を未来へも築いていきたいと考えます。また「さっと日本語クラブ」を巣立つ子どもたちは良き市民として社会に貢献できる大人になってほしいと願います。母国へ帰った子どもたちは日本のことはすぐ忘れてしまうかもしれませんが、子ども時代に住んだ仙台という街をいつか思い出したとき、「仙台はあたたかい街だった」と思い返してもらえたら嬉しいのです。

市長
異なる国の子どもたちが日本語を一生懸命勉強している様子や皆さんのお話をうかがい、様々な工夫をして指導していること、時には悩みながら心配りをし、子どもたちの心に寄り添って接してくださっていることを知りました。国際都市仙台は皆様の活動に支えられ、次の世代へつながっていくことを改めて認識し、心強く感じました。これからますます需要が高まると思いますので、ぜひ長く活動を続けていただきたいですし、今後も多くの学生さんたちに参加していただきたいと思いました。
多文化共生社会の担い手を育てているというお話がありましたが、外国へ戻る子どもたちはもちろんのことですが、仙台の中で多文化共生の担い手になりうる人たちをどのように育てていくのかということを考える学びの機会にもなりました。
国籍、民族、文化が違っていても、誰もが住みやすく安全に安心して暮らしていける共生社会の実現を、市民の皆様とともに目指していきたいと思います。

本日は、ありがとうございました。

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