新型コロナウイルスワクチンについて医師にお話しをうかがいました
医療現場において長年様々な接種に携わり、ワクチンに精通されている、仙台市医師会予防接種担当理事でかわむらこどもクリニック院長の川村和久(かわむら かずひさ)先生に、新型コロナウイルスワクチンについてお話をうかがいました。
これからの接種を検討されている方や、すでに接種予約をされた方、接種がお済みの方もご覧いただけます。
動画では、皆さんのワクチン接種に関する疑問や、不安に感じていることを、川村先生が、温かくやさしい語り口でわかりやすく説明してくれています。この動画をきっかけに、ワクチンの接種について改めて考えてみませんか。
※この動画は令和3年9月に初回(1・2回目)接種に関し、作成したものです。
【有効性編】
【接種対象者編】
【副反応編】
【みなさまへのメッセージ編】
コロナワクチンとは 有効性編
質問1.コロナワクチンはどんなワクチンですか。インフルエンザのワクチンとは違いますか。
川村先生の回答
- 季節性のインフルエンザのワクチンは、種類としてはウイルスの感染力などを失くした「不活化ワクチン」と呼ばれるものです。不活化ワクチンを接種し、免疫を付けるというものです。
- 今回のコロナワクチンは、いくつか種類はありますが、日本で多くの方が接種しているファイザー社製や武田/モデルナ社製のワクチンは、「メッセンジャーRNA」ワクチンというものです。
メッセンジャーRNAワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の設計図を持たされています。
このワクチンを注射することで、細胞の中の、簡単に言えば製造工場のようなところでスパイクタンパク質が産生され、それが放出されることで、人間の体は異物と考えて免疫を作ります。
- 基本的には、不活化ワクチン(インフルエンザのワクチン等)は、日本では皮下注射で接種します。メッセンジャーRNAワクチン(コロナワクチン)は、筋肉注射で接種します。
質問2.ワクチンを接種するとどんな効果がありますか。
川村先生の回答
- ワクチンの効果には3つあります。
1つ目は「感染予防効果」といい、感染すること、つまり病気にかかりにくくなる効果です。
2つ目は「発症予防効果」といい、ウイルスが体に入り感染しても症状が出にくくなる効果です。
3つ目は「重症化予防効果」といい、ウイルスが体に入り病気にかかってしまうけれども、重症化しにくくなる効果です。
- 感染予防効果は証明することがなかなか難しいのですが、これまでの研究や臨床試験から、発症予防効果については高い効果が確認されており、重症化予防効果も期待されています。
質問3.ワクチンの種類によって効果に違いはありますか。
川村先生の回答
- 基本的に、医薬品が承認される条件の中には有効性がありますので、すでに承認を受けているものであれば、大きな差は無いものと思います。
そのため、しっかり接種をすれば、その効果を十分に期待できると思います。
- 多少の違いがあるとすれば、副反応の違い等がデータ的に出ているところがあります。
例えば、ワクチンを2回目接種した後の発熱の割合や、接種後の腕の腫れやかゆみ、また、まれではあるものの血栓症が確認されるなどといった違いがあるようです。
- ワクチンを接種するということは、体に異物が入るということですので、それに反応することで副反応が出ます。
副反応が必ずゼロということはありませんが、ワクチン接種による様々な効果が確認されていることや、重症化予防効果も期待されていることから、接種の検討をしていただければと思います。
質問4.ワクチンを接種すれば新型コロナウイルス感染症には感染しなくなりますか。
川村先生の回答
- インフルエンザを例に挙げますと、ワクチンを接種したけれどもインフルエンザにかかってしまった、という話しはよく耳にします。どの感染症に対するワクチンでも、その効果は100%ではありません。ワクチンを接種した後でも感染する可能性があり、それを「ブレークスルー感染」と呼びます。
- 今回のワクチンについても、1回の接種では十分な免疫を得られないため、2回目の接種を行っています。
ワクチン接種後、2週間程度で十分な免疫が確認されていますが、100%の発症予防効果が得られるわけではありません。
- そのため、「ワクチンを2回接種したので、もうマスクを外し、飲食も自由に出来るのでは」という話もありますが、みなさんには、ワクチンを接種した後も、基本的な感染対策(マスクの着用、手洗い・手指消毒、三密を回避する)を、これからも続けてほしいと思います。
質問5.「集団免疫効果」とはなんですか。
川村先生の回答
- ある集団の中の7割程度の人がワクチン接種を受け免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守られる状態です。
- こうした効果は、これまでのワクチンではよく言われてきたことですが、コロナワクチンについても同様のことが言えるのか、まだはっきりとしたデータは出ていません。
- ただ、ワクチンが普及すればするほど、感染しにくい人が増えていくこととなり、結果的には感染者数の減少につながることが期待できますので、出来るだけ多くの方に、接種について検討いただきたいと思います。
接種対象者編
質問1.コロナワクチンは誰でも接種できますか。持病があっても大丈夫ですか。
川村先生の回答
- 誰でもワクチンが接種できるかと言うと、そうではありません。
どのワクチンの説明書にも、接種することが出来ない人について記載があります。
- 例を挙げますと、熱がある人や明らかな急性期の病気にかかっている人、また、ワクチンの成分でアナフィラキシーなどの強い反応が出た人や、ワクチンの成分に特別な反応がある人などが該当します。
- また、医師が接種出来ないと判断する場合もあります。
- ただし、一般的な病気で、その症状が安定している場合には、基本的に接種ができる場合が多いとされています。その際は、必ずかかりつけの先生に相談をして、接種できるかの判断をしっかりとしてもらいたいと思います。
質問2.妊娠中や授乳中でもワクチン接種はできますか。
川村先生の回答
- 現時点では、妊婦さんや授乳中の方でも、出来る限り接種をしていただきたいというのが今の考え方です。
妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方も、ワクチンを接種することができます。
- また、これまでの研究から、ワクチン接種を受けた方の臍帯血や母乳中にもウイルスに対する抗体が確認されており、子供を感染から守る効果が期待されていますので、ワクチンについて正しく理解し、主治医等に相談のうえ検討してもらいたいと思います。
質問3.大人がワクチン接種をすれば、子どもは接種しなくても良いですか。
川村先生の回答
- 子どもの感染経路を調べた報告では、その7割が家庭内感染というデータがあります。
そのため、家庭内で感染させないためには、まず、家庭の中の親世代の方々に、「自分を守る」という意識以外に「子どもを守る」という意識を持ち、ワクチン接種を検討してもらいたいと思います。
- また、子どもへのワクチン接種について高い効果が確認されたことが、海外で報告されています。
- この感染症を考えた時に「集団」ということが大きなリスクになると言えます。
インフルエンザを考えるとよくわかりますが、インフルエンザは学校で流行し、学級閉鎖となることもあります。
その集団にいた子ども達が家に持ち帰り、健康な大人やお年寄にうつしてしまうこともあります。
そういう意味で、集団生活をしていることは、感染のリスクが高いといえます。
- 子どもを感染から守るために、周囲の大人はもちろん、集団生活をしている子どものワクチン接種も重要な要素のひとつと言えます。
副反応編
質問1. ワクチンを接種するとどんな副反応が出ますか。1回目より2回目接種の方がつらいですか。
川村先生の回答
- どんなワクチンの接種も、異物を体に入れることになります。異物が入ることに対して人間の体が反応して免疫をつけます。その反応によって、副反応が現れます。
例えば、ワクチンを打った場所が腫れる、だるさが出る、熱が上がる、頭痛、節々が痛いという症状が起こり得ることは確かです。また、ごく稀な副反応の中には血栓症などもあります。
- ワクチンを接種することで副反応が出るのは、体に入った異物に対しての人間の免疫反応だということはお話ししましたが、2回目のワクチンを接種すると、1回目の接種ですでに出来上がった免疫によって反応が強まることで、余計に副反応が強く出るというのがだいたい一般的です。
例えば、ファイザーのワクチンの場合、1回目よりも2回目の方が発熱の割合が多く、30%から40%くらいの方は熱が出るようです。ただ、全員が高熱となるわけではなく、副反応の出方は人それぞれ差があります。
また、もし副反応が起きても、ワクチンの副反応は1日、2日で治まりますが、コロナにかかってしまった場合、もっともっと長く苦しい思いをするということは、理解しておいてもらいたいと思います。
質問2. インターネットには怖い情報がたくさん流れていますが、本当のことですか。
川村先生の回答
- 起こりうる可能性がない副反応、例えば、「ワクチンを打ったら死んでしまう」、「ワクチンを打ったら不妊症になる」など、様々な情報がインターネット上に流れています。
- こういう時に重要なのは、インターネットから得る情報が、正しい場所から出されている情報なのかどうかということです。人間というのは、不安になると不安な情報を拾い上げてしまう習性があります。それはやむを得ないし、否定するつもりはありません。
- 正しい情報は、例えば厚生労働省や、不妊の問題であれば産婦人科の学会、お子さんの場合であれば日本小児科学会などで発信されています。また、お子さんであれば、普段見てもらっているかかりつけの先生はもちろん、妊婦さんであれば産婦人科の先生とよく相談をして、接種の意義をちゃんと理解したうえで選択をすべきだと思います。
- お子さんへの接種で不安がある場合、保護者が正しい情報をしっかり伝えて、妊婦さんも含め、接種を考えていく。そのうえで、個人的に接種を受けないことは個人の権利ですから、それはやむをえないと思いますが、根拠がない情報を、さも、自分の意見が正しいような形でインターネット上で拡散するということは避けてもらいたいです。
質問3. アナフィラキシーとは何ですか。接種が怖いです。
川村先生の回答
- 「アナフィラキシー」と聞くと、ワクチン接種とすぐ短絡的に結びつけますが、実際は、他の原因で起こることの方がはるかに多い可能性があります。アレルギーの重症反応として起こるのが、アナフィラキシーです。
例えば、「お子さんが給食で、食物アレルギーのため禁止されている食べ物を食べてアナフィラキシーが起きた」「スズメバチに刺されてアナフィラキシーが起きた」など、ワクチン特有の反応ではないわけです。
ただ、異物が体に入るということではまったく一緒です。
- 例えば、発疹が出る、呼吸が苦しくなる、意識がなくなるなど、そういった総合的な重い反応がアナフィラキシーの症状です。ただ、ワクチンを接種する場所がどこなのかを考えてもらいたいです。
ワクチンを接種する場所には、必ずドクターがいます。アナフィラキシーの対応は、時間が一番の問題です。早く対応すれば、命に関わることはまれだと言われています。
接種会場にはアナフィラキシーが起きた時に対応するための機材、薬剤が準備してありますので、通常の場合、時間的には早く対応でき、大きな問題になることは少ないと考えられ、あまり「アナフィラキシー」という言葉に振り回される、引きずられる必要はないと思います。
質問4. 子どもが接種を怖がっているので、ワクチンを接種しなくても大丈夫ですか。
川村先生の回答
- 例えば、これは笑い話ではないんですが、「ワクチンを打った実験のネズミが2年で死んだ」という情報が流れています。そうすると僕らは、研究で使っていたネズミの寿命は何年なのだろう、と考えます。ほとんどのネズミの寿命は2年ほどと言われており、「2年でネズミが死んだ」ということは、逆に考えれば、人間だったら80〜90歳で天寿を全うしたというような意味になると思います。
しかし、お子さんにはそれはわかりません。ですので、まずは保護者が、お子さんが納得できる正しい情報を探し、お子さんに提供する。そして、お子さんの未来に関わることですから、膝を突き合わせ、お子さんと話し合いをしながら決定していくということが大事なことです。
- 医療の中では、新型コロナウイルスにお子さんが感染して症状が出ても軽症だから、わざわざ接種しなくてもいいのではないか、という考えもあります。ただ、色々な情報を集めていくと、例えば、幼児でも重症となり人工呼吸器をつけたケースや、乳児でも重い症状の子が確認されたというケースもあります。
もちろん割合からいけば、はるかに、高齢者の方が感染した場合と比べれば少ないです。しかしながら、この先、このウイルスの変異がどのようになっていくのかはわかりません。
- お子さんに接種する意味は、お子さんはもちろん、その周りにいる人たちの病気を防ぎ、その人たちを守るということにあります。それは大人でも同じです。大人が接種してお子さんたちを守る。若い人が接種して感染拡大を減らす。そのように全てがつながり広がっていけば、感染して命に関わるような人も減ってくると思います。
質問5. 副反応で熱が出たら市販の解熱鎮痛剤を服用しても大丈夫ですか。どこかに相談できますか。
川村先生の回答
- ワクチンを接種して出る熱も、風邪をひいて出る熱も、基本的な体の中の仕組みは一緒です。ですから、風邪をひいて熱が出た時に、解熱鎮痛剤を服用して熱が下がり楽になる、という発想から考えれば、基本的に、市販の解熱鎮痛剤を使うのは全く問題ないと思います。
(ただし、他の薬を内服している場合や、妊娠・授乳中の方、ご高齢の方、病気治療中の方、薬によるアレルギー症状や喘息を起こしたことがある場合などは、服用について主治医や薬剤師にご相談ください。また、激しい痛みや高熱など症状が重い場合や長く続く場合、ワクチン接種後にみられる一般的な副反応ではない症状が見られる場合も同様です。)
- 副反応の種類にもよりますが、接種直後に見られる反応の一つはアナフィラキシーです。もう一つは、迷走神経反射と言って、ひどい立ちくらみのような症状です。
- その次に起きるのは、局所的な痛みや全身的な反応で、その場合、個人差はありますが、接種から24時間後あたりから目立ってきて、接種から48時間程度で軽快し、元に戻ります。
つまり、接種後、遅くとも48時間程度で症状が消えると考えてもらえばいいと思います。
- 副反応に関しては、宮城県のコールセンターがありますので、そこで相談をしてもらうことも出来ます。また、不安感が非常に強ければ、病院を受診して安心して帰るということが基本的な対応です。
- 難しいのは、接種後の副反応で熱が出たと思っていたら、実は新型コロナウイルス感染症に感染していたというケースです。その場合、その症状は辛く長く続きます。副反応が心配であれば、早めに診てもらうこと。普通に考えれば、48時間以上症状が続くものは、やはり診てもらった方がいいというのが基本的な考えだと思います。
みなさまへのメッセージ編
川村先生からのメッセージ:これから接種を検討されている方へ
- 感染症というのは数限りなく世の中に存在します。しかし、そのうち、ワクチンで守られる病気というのは、非常に少ないです。「病気にかかることのメリット・デメリット」と、「ワクチン接種のメリット・デメリット」をてんびんにかけながら、接種の意味合いと目的を考えていただきたい。
守るのは自分であり、家族であり、社会であり、ひいては国全体という意識を持ちながら、ワクチンの接種を進めていっていただきたいと思います。
川村先生からのメッセージ:接種を終えられた方へ(接種後の生活について)
- 新型コロナウイルス感染症が、今後どのようにその形を変えていくのか、続いていくのかは、正直誰にも分かりません。今考えられるのは、ワクチンの接種はひとつの区切りでしかないということです。
つまり、ワクチン接種をすれば、感染を予防できる人もいますが、ブレイクスルー感染(ワクチン接種の後に新型コロナウイルス感染症に感染すること)となる場合もある。
また、ワクチン接種をしない人もいれば、感染してしまい重症化する人もいるという事実もあります。つまり、ワクチンを接種することでゼロになるわけではありません。
- 時間とともに制限等は変わってくるかもしれませんが、当面の間は、ワクチン接種と、これまでの生活で身に付いた感染予防策(マスク着用、手洗い、消毒・換気の実施、三密を回避するなど)の両方を合わせて、感染を予防をしていくという意識が重要だと思います。
川村先生からのメッセージ:みなさまへのメッセージ
- ワクチン接種の効果というのは、世界的に証明されています。しかし、ワクチン接種をして感染者がそのまま減り続けたというデータは残念ながらありません。
- 一旦少なくなった感染者がまた増えていくこともある状況の中で、社会的・経済的な面と、病気を減らす、感染者を減らすというバランスは非常に難しいものではありますが、今後は、経済を立て直すことも合わせて考えて行く必要があります。
- その第一歩としてワクチンを接種する。ワクチンの接種が行き渡った時からは、今、あちこちで言われていますが「ウィズコロナ」という言葉を使い、コロナと共存しながら生活を作り上げていく、そういう考え方が必要です。
- 個人の力ではどうにもならない。しかし、個人の力が集まれば、この感染症も乗り切れるという意識をみんなが持ち、自分、家族、社会を守るためにみんなが努力し力を合わせていくということが、一番重要なことではないでしょうか。
仙台市新型コロナウイルスワクチン接種専用コールセンター
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