更新日:2016年9月20日

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統合失調症について

統合失調症は、全世界で共通して見られる、心の病気の中でも重要なものです。多くは思春期や青年期に発症し、決して稀な病気ではありません。一生のうちにこの病気にかかる人の数は、地域にもよりますが約100人に1人と言われています。つまり、この病気にかかっている人は大勢いるのです。
以下に、統合失調症の基本的な知識について解説いたしました。ぜひご覧いただき、理解を深めてください。

目次

統合失調症とは特別な病気ですか?

統合失調症は、全世界で共通して見られる精神疾患の一つです。多くは思春期や青年期に発症します。一生のうちにこの病気にかかる人の数は、地域にもよりますが、約100人に1人と言われています。決してまれな病気ではありません。

偏見や一部の偏った報道によって、統合失調症をはじめとする精神障害者が不必要に危険視されることがありますが、精神障害者の犯罪率がそれ以外の人に比べて高いという根拠はありません。不幸にしてまれに起こる事件に注目が集まることがありますが、多くの人は地域で普通に暮らしている一般市民です。むしろ、そうした偏見が精神科への早めの受診を妨げる、病気や障害の受容を難しくする、精神科の治療に対する意欲を削ぐことになるなど、病気の早期発見や再発の防止を妨げているとも言えます。また、地域での社会復帰施設整備にへの反対等により社会資源の整備が進まず、支援があれば地域で暮らせる精神障害者がなかなか退院できず入院が長期化しやすいといった状況もあると言われています。

統合失調症の原因は何ですか?

世界各国で様々な研究が進められ、今では特有の症状を引き起こす「発症しやすさ」あるいは「病気へのかかりやすさ」が注目され、それを「脆弱(ぜいじゃく)性」と呼んでいます。脳の発症脆弱性が統合失調症の原因と考えられており、それは遺伝によるもの、妊娠や出産時の障害、社会的な環境によるもの、人格の発達過程など、多くの要因が関係しあって形成されると考えられています。

脆弱性には、脳の神経伝達物質(主にドーパミン神経系)の障害との関係が重視されており、その仕組みもかなり明らかにされています。現在は、この脆弱性と心身両面からのストレスとが関係しあって発病するという考え方(脆弱性-ストレス仮説)が最も広く受け入れられています。

  • Q1 遺伝するのですか?
    A1 遺伝を確実に証明するものはありません。

    高血圧や糖尿病などの一般的な病気と同じように、病気になりやすい体質は遺伝している可能性はありますが、少なくとも、ある一定の年齢に達すると必ず発症するというような遺伝病ではありません。統合失調症の脆弱性に関係する遺伝子を探る研究が数多くなされていますが、今のところ確実なものは発見されていません。
  • Q2 親の育て方が悪かったのですか?
    A2 発症は親の育て方のせいではありません。
    多くの研究が行われてきましたが、家庭環境や子育ての失敗が統合失調症の原因であるという科学的な根拠は見出されていません。一方、発症後の再発率などその後の経過の良し悪しには、家族など本人の身近な人たちの関わりが大きな影響を与えています。家族をはじめ周囲の人たちがこの病気について理解を深め、本人への対応を工夫することで、経過を良い方に変えることができるのです。

どんな経過をたどりますか?

統合失調症は、一般的に「前駆期」、「急性期」、「回復期」、「慢性・寛解期」という経過をたどり回復していくと考えられています。それぞれの時期の長さには個人差があり、必ずしも典型的な経過をたどるとは限りません。また、一旦回復しても再発しやすい面があることもこの病気の特徴ですので、再発予防が回復の大きなポイントになります。

  • 前駆期:急性期を前にして様々な前駆症状(前触れの症状)が出現する時期です。不眠などの身体的不調、漠然とした不安や集中困難などといったもので、はじめは本人も家族も精神症状とは思わずに内科などを受診することもあります。再発の前にも同じような前駆症状が現れることがあるので、これを知っておくことは再発予防に役立ちます。
  • 急性期:ストレスを減らすなどして前駆症状の段階で治まることもありますが、病気の勢いが止まらなければ、幻聴や妄想などの「陽性症状」を中心とした「急性期」に進みます。症状のため日常生活や対人関係に障害が出てきます。
  • 回復期:治療により「陽性症状」が次第にやわらぎますが、意欲、活動性の低下などの「陰性症状」が見られやすく、本人も周囲の人も辛抱強く待つ姿勢が必要になります。
  • 慢性・寛解期:回復期を経て、ほとんど病前の状態に戻る(寛解)場合も、様々な程度の障害を残す場合(慢性期)もあります。

急性期は、どんな状態になるのですか?

急性期になると特に神経が過敏になり、情報を処理する上での障害が現れます。
健康な人の神経は、その時、その場面で必要な情報を選択する働きを持っています。例えば、騒がしい宴会場で近くにいる人と会話をする場面を想像してみましょう。実際には周囲の様々な雑音も、会話している相手の声も、同時に耳の中に入ってきています。脳の神経にはフィルターのように必要な情報と必要でない情報を分けて伝える働きがあり、健康な場合は、会話中の相手の声を選び取って集中して聞くことができるのです。

病気のために神経が過敏になるとこのフィルターに穴が開いた状態になり、情報を選び取る機能が働かなくなります。そうなると、必要な情報もそうでない情報も一緒になって頭に入ってきてしまい、以前なら気にもとめなかったような周囲の物音に敏感になったり、様々な出来事に特別な意味付けをして不安に陥ったりするようになります。このような情報の氾濫から身を守るための必死の対処として、本人が引きこもり状態になる場合があります。

薬を飲むことで過敏になった神経が本来の状態に回復すると、フィルターの働きも回復して周囲の状況を正常に見聞きすることができるようになっていきます。

どんな症状がありますか?

統合失調症で見られる症状は様々で、一人の患者さんに全ての症状が出るとは限りません。また、病気の時期によって目立つ症状が異なるのも特徴です。以下に典型的な症状を挙げます。

陽性症状

異常な体験や感覚として現れる症状です。急性期に多く、回復期~慢性期に残存することもあります。これらの症状が強まると不安が高まり、夜も眠れず憔悴していきます。時には、妄想の対象となった人に苦情を訴えたりします。家族や周囲の人にとっては、本人が症状によって体験している異常な世界の意味が理解しにくく、戸惑うことが多くあります。

  • 自我障害:自分と他人との心理的な境界があいまいになる症状です。自分の行動や考え、感情が外部から操られる、考える内容が外部にもれ伝わるなどの奇妙な体験を感じます。
  • 思考のまとまりのなさ:思考の意味脈絡がなくなり、会話していても何を言っているのかわかりにくくなります。
  • 易刺激性:本来であれば気にしないような些細な刺激に対して反応しやすくなります。興奮したり、怒ったり、大声をあげたりすることがあります。
  • 妄想:事実に反することを病的に確信する症状です。周囲の人たちが意地悪やあてつけをする、自分を陥れるための陰謀がめぐらされている、盗聴、監視、尾行されているなどと思い込む「被害妄想」や、周囲の出来事を何でも自分に関係づける「関係妄想」などがあります。
  • 幻覚:その場にいないはずの人の声による悪口、噂話、命令などの「幻聴」が最も頻繁です。また、見えるはずのないものが見える「幻視」や、「体感幻覚」と呼ばれる内臓などの奇妙な感覚が出ることもあります。

陰性症状

感情や意欲の面に見られる症状です。回復期~慢性・寛解期に多く見られます。日常生活や社会生活における、適切な会話や行動のしにくさとして現れます。陰性症状は「社会性がない」「常識がない」「怠けている」といった誤解を招きやすく、通常の人間関係に支障をきたすようになり、継続して働くことが難しくなることがあります。

  • 感情平板化:物事や場面に対して適切な感情がわきにくく、表情が乏しくなります。また、他人の感情を理解することが難しくなります。
  • 意欲の低下:物事を始めたり続けようとする気力がわかなくなります。このため日中も無為に過ごしたり、部屋が乱雑になったり身なりや清潔の保持に構わなくなったりします。
  • 自閉:人付き合いや会話を避け、自分の世界に閉じこもるようになります。

どのような治療法があるのですか?

様々な治療法を組み合わせることが必要になってきます。治療によって、発症や再発を引き起こす要因と回復を促進する要因とのバランスを回復の側に近づけ、それを維持することを目指します。どの治療法を中心にするかは、その時々によって異なります。

  • 前駆期:ストレスの強い環境から離れることなどで急性発症を防ぐことができる可能性があります。
  • 急性期:薬物療法がより重要となりますが、刺激を避けた環境での休養も欠かせません。入院が必要になる場合もあります。
  • 回復期:薬物療法を継続しながらじっくりと休息し、急性期に失ったエネルギーを充電します。状態を見ながら、家族の協力や社会資源の活用を通して「ストレスに対処する力」を身に付けたり、ストレスが少ない環境で生活できるようにするなど、色々なリハビリテーションプログラムや福祉サービスなどを利用することが大切になります。
  1. 薬物療法
    脳内の神経伝達物質のバランスを整える薬を服用します。薬によって不安を和らげたり、幻聴などの病的体験を軽減したり、考えのまとまりのなさを改善したりすることができます。
    気分を落ち着かせる薬、睡眠をとりやすくする薬、副作用を抑える薬など、いくつかの種類の薬を組み合わせることもあります。調子が悪い時だけでなく、症状が安定した後も薬物療法を維持していくことが、再発予防のために非常に重要です。
    長期に服用していると体質が変わるのではないか、害になるのではないかと気にする人もいます。しかし、抗精神病薬には習慣性はなく、長期に使える比較的安全な薬です。血液検査などで定期的な体の状態の確認ができれば、なお安心です。
  2. 心理社会的療法
    精神療法:治療者と話をすることで、病気や自分の症状への理解を深め、精神的な安定を取り戻すための治療です。
    リハビリテーション:社会復帰、家庭復帰を目指す治療で、日常生活を送る上で障害がある人にとって重要です。身の回りの処理に関する「生活指導」、対人関係やコミュニケーションの問題に対する「生活技能訓練」、集中力・作業能力の回復を目指す「作業療法」、集団参加に自信を持てない場合には「デイケア」、就労準備としての「障害福祉サービス事業所」、本人や家族が病気に適切に対処できるよう学ぶための「心理教育」など、個々の状態に合わせて利用します。

病気との付き合い方

  • 心の全てが病気になるのでしょうか?
    いくつかの病的な症状が確認される場合や、周囲の人から見て奇異な言動を取っている場合は、まるでその人の心の全てが病気に侵されてしまったように思われがちです。しかし、本人の心には健康な面が多く残されており、だからこそ不安や緊張を感じているとも言えます。そして多くの場合、治療はこの健康な面に働きかけることにより行われます。急性期の症状の多くは一時的なもので、やがて本来の自分を取り戻すことができます。病気のために人格が変わってしまうというよりも、病気になったために起こる周囲の人とのトラブルなど、二次的な出来事が人格に及ぼす影響の方が大きいのです。
  • 進学、結婚はできますか?
    個人差はありますが、統合失調症にかかってから進学、結婚する人もいます。発症する前に就いていた仕事を継続している人も少なくありません。本人が病気と治療の必要性についての理解を深め、再発しないよう工夫することが大切です。
  • 再発防止のために
    多くの方が、再発防止のために服薬を続けます。また、家族の協力を得たり、社会資源を活用したりしながら、ストレスに対処する力を身に付け、自分に合った生活環境を整えます。家族が病気への理解を深めて本人への接し方を工夫することも、再発防止にはとても役立ちます。

どこまで回復しますか?

「統合失調症は進行性の病気である」という誤った仮説が19世紀末に唱えられ、長年にわたって信じられてきました。しかし、20世紀後半以降に様々な研究が行われ、統合失調症が進行性の病気とは言えないこと、再発の可能性はあるが、多種多様の経過をたどり完全に回復する例も多いこと、経過が長くなるにつれて症状が安定する人が多いことなどの結論が得られています。
発症後40年までの経過を見ると、3分の1から3分の2の人が自立しているか、または誰かの力を借りながら社会生活を送っていることを複数の研究が示しています。また、現在(※)、約18万人が統合失調症で精神科病院に入院していますが、そのうち約3分の1の人は住まいや経済面など社会的な環境が整えば退院できるとも言われています。
今後、薬物療法やリハビリテーションの進歩による医学的な回復と併せて、住居や障害福祉サービスなど、地域で支える仕組みの発展により、多くの方がごく普通の生活を送れるようになることが期待されます。
※平成23年患者調査(厚生労働省)

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