1.趣旨
企業がこれまで取り組んできた復興に向けた活動事例を手がかりにしながら、これからさらに企業の力を生かしていくためにはどうしたらよいか、参加した皆さんが一緒に語り合い、考える場として開催しました。
2.行事概要
- (1)日時 平成24年3月17日(土曜)13時から16時
- (2)場所 仙台市市民活動サポートセンター 地下1階 市民活動シアター
3.実施結果
(1)参加者
総参加者数 約40名
内訳 参加者31名、事例報告者4名、コーディネーター1名、その他見学者等
(2)プログラム
- 開会
- はじめに
- 復興に向けた企業の取り組み報告
- 車座フリートーク
- おわりに
- 閉会
4.復興に向けた企業の取り組み報告
復興に向けた企業の取り組み報告として、震災後、企業が復興に向けて取り組んできた活動事例を4社の皆さんからご報告いただきました。
- キリンビール株式会社仙台工場 只野京子さん(総務担当リーダー)
「これからも東北で~地域とのコミュニケーション強化の取り組み」というテーマで、「地域食文化・食産業の復興支援」、「子どもの笑顔づくり支援」、「心と体の元気サポート」を3つの幹とした「復興応援 キリン絆プロジェクト」や、工場施設を活用した近隣地域の復興支援の取り組みについてお話いただきました。
- 凸版印刷株式会社 小池弘恭さん(ブックワゴン仙台事務局)
「本を通じた交流で人を繋ぐブックワゴン」というテーマで、被災地の仮設住宅を巡回する移動図書館「ブックワゴン」の取り組みについて、社員提案から始まった事業スタートの経緯や実際の活動の様子、そしてこれからの課題などについてお話いただきました。
- 株式会社ファミリア 藤澤明弘さん(経営管理部門)
「東日本大震災における支援活動の軌跡から『環境・福祉・防災による復興プロジェクト』へ」というテーマで、震災直後からの被災者支援の活動や現在行っている雇用創出プロジェクト、これから進めていく6次産業化モデルファームの取り組みについてお話いただきました。
- 株式会社プレスアート 川元茂さん(取締役、Kappo/別冊編集長)
「ともにPROJECTのいままでとこれから」というテーマで、「ともにPROJECT」がスタートした経緯や、メディアという立場を生かして取り組んできたラジオによる災害情報の発信や雑誌での被災地特集などのさまざまな活動、これからの展望についてお話いただきました。
4名の方にお話いただいた後、コーディネーターから「事業を始めるときに苦労したことは何か。」などの質問を行い、「仮設住宅の方に理解が得られないこともあり、なじむまでが大変だった。(小池さんから)」、「被災した工場をまず元に戻すことから始めるというところで、散らばったビール缶などを一本一本回収することが大変だった。(只野さんから)」、「雑誌を出すことに意味があるのか、その根本的な問いが大きな課題であったが、実際に出してみて、雑誌を出すことは日常性の回復につながると感じた。(川元さんから)」、「農園やパン工房での雇用を維持していくため、ある程度利益を獲得していかなければならないが、それを働く人やお客さんにどう伝えていけばよいか苦労している。(藤澤さんから)」など、お答えいただきました。
5.車座フリートーク
参加者の皆さんに、活動報告を聞いて興味を持った報告者のところに集まっていただき、4グループに分かれてフリートークを行いました。最後にグループごとに出されたお話や意見について簡単に発表を行い全体で共有しました。
【出された主なお話など】
(キリンビール株式会社仙台工場 グループ)
- 従前から地域住民のもとをまわったり、近隣商業施設と定期的に情報交換会を開いたりしていたことが震災後も地域とつながるというところで生きた。(只野さんから)
- 雇用創出支援の一環として、仮設住宅の皆さんが製作している手作り品を買い取り、ノベルティのようなかたちで自社製品につけ、販売・PRしていってはどうか。(参加者から)
- 他企業や大学が連携して行っている仮設住宅の食生活改善の取組みの場にビールを提供して、引きこもりがちな、特に中高年男性に交流の場に出てきてもらえるような取組みはできないか。(参加者から)
(凸版印刷株式会社 グループ)
- ブックワゴンの取組みを会社内で企画したときになかなか理解が得られず、始めるまで苦労した。(小池さんから)
- これからもぜひ継続して取り組みを進めてほしいが、費用や人材などの面で課題がある。そのためは、スポンサー探しや同種の活動をしているNPO、行政への働きかけなど、積極的につながって工夫をしていかなければならない。(参加者から)
- 活動を通じ一番心に響いたこととしては、この事業のキャッチフレーズは「ホンのちょっとしあわせはこぶブックワゴン」というのだが、本を借りに来た女の子に「ホンのちょっとじゃないよ」と言われた。そのとき「これでいいんだ」と思えた。(小池さんから)
(株式会社ファミリア グループ)
- 生産から加工、販売まで行う6次産業化により、地元東北に利益が落とせるようなしくみをつくりたい。将来的には東北6県に6次産業施設をつくっていきたい。(藤澤さんから)
- マネジメントできる人材が不足していること、同じような取組みをおこなっている企業やNPOとのつながりがないということが課題としてある。(藤澤さんから)
- このグループで話し合ったみんなはファミリアが大好きになった。(参加者から)
(株式会社プレスアート)
- 震災後、最初はとにかく「頑張ろう」というメッセージを、その後は各地で頑張っているお店や職人、事業者などを紹介し発信してきた。現実には仙台とそれ以外で、同じ被災地同士が時に対立する場面なども見られるが、仙台以外にも視野を広げながら試行錯誤してやっている。(川元さんから)
- 震災後、既存の紙メディアや有料誌への信頼は、むしろ高まったかもしれない。反響や、行動する人も増えている。震災後、雇用の問題が非常に重要だが、地元のものを地元で回していくような取り組みをどう増やすか。復興に向けた取り組みを紹介して鼓舞していく、商品をPRして市場を広げていくことなどが出版社の役割ではないか。(川元さん+参加者から)
6.写真
7.まとめ
30代を中心に20代、40代の方に多くご参加いただきました。フリートークではそれぞれのグループで熱い語り合いが行われ、閉会後も会場に残り名刺交換や情報交換をしている様子がみられました。また、出席いただいた企業の方からは、「参加者の方からたくさんの意見や励ましをいただき刺激になった。」、「いろんな提案をいただくことができた。自社で報告したい。」などの声もいただきました。
アンケートでも「取組み企業の生の声が聞けてよかった」、「フリートークの時間があり、話を深めることができた」という意見を多くいただき、参加者から、企業の取組みを知ることができ、企業とつながることのできる場として一定の評価をいただくことができたように思います。
企業の力をまちづくりに生かすというテーマを追求していく際に、企業や地域・NPOの取組みを知ることや、話し合いの中で課題や意見を共有していくことが重要なものであると改めて感じられ、また、それらのきっかけと場として、このような場を活用していく可能性が感じられました。