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更新日:2016年9月20日

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24年度包括外部監査報告書・高齢者の保健福祉と介護保険事業の事務の執行について

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平成24年度包括外部監査の結果報告書

仙台市包括外部監査人 公認会計士 今野利明

「高齢者の保健福祉と介護保険事業の事務の執行について」概要版

第1 外部監査の概要

1.特定の事件を選定した理由

仙台市は、「支え合いのまち推進プラン-仙台市地域保健福祉計画-」をはじめとした他の関連する計画と連携した総合的な計画である「仙台市高齢者保健福祉計画(介護保険事業計画)」を平成21年3月に策定し、高齢者保健福祉施策の充実と介護保険事業の円滑な運営に努めている。

その背景として、仙台市の高齢化率は全国平均よりも低いものの、平均寿命の伸長や少子化の影響等により、今後高齢化は確実に伸展していくことにある。

このような状況に鑑み、高齢者の保健福祉と介護保険事業の事務の執行について、その合規性を見るとともに経済性、効率性、有効性の観点から検討する必要性を認めた。

第2 外部監査の結果及び意見

1.老人福祉の措置について

[1]措置継続の要否判定について(指摘)

仙台市養護老人ホーム入所等措置実施要綱等に基づき、被措置者に関して年1回本人との面接、施設からの聞き取り等により措置継続の要否を見直さなければならないことになっている。

しかしながら、青葉区および宮城野区の福祉事務所の一部のケースで本人または成年後見人との面接または施設からの聞き取りを行っているとのことであるが、書面が残されていない、又は、記録が不十分であることから実際に措置継続の要否判定が行われたかが不明瞭な状況となっていた。

今後は、少なくとも年1回は本人との面接または施設からの聞き取り等により措置継続の要否を見直し、その結論を書面で残す必要がある。

[2]費用徴収事務の妥当性について(意見)

福祉事務所長は、入所等の措置を受けた者又は被措置者の扶養義務者で主として当該被措置者の生計を維持するものから当該入所等の措置に要する費用を毎月徴収するものとされているが、太白区において長期にわたる未徴収の費用が存在していることが確認された。平成19年2月以降に発生したものであり、その額は682,500円であった。

被措置者が死亡した平成22年11月に扶養義務者から費用の一部を徴収したのを最後にその後は連絡がつかず、督促をしていない状況が続いていたとのことであった。

今後、区は徴収事務管理を強化し、訪問調査を実施するなどして当該費用の徴収に努める必要がある。

2.仙台市敬老乗車証について

[1]各区役所での発見事項

ア.再交付および交換時における受領確認について(指摘)

各区役所では敬老乗車証の紛失による再交付及び磁気不良による交換の申し込みを受けた場合には「第一種敬老乗車証 再交付申込書兼受領書」または「第一種敬老乗車証 交換申込書兼受領書」の受領確認欄に本人または代理人のサインまたは押印を得ることになっている。

各区において当該書類をサンプル抽出して閲覧したところ、青葉区、宮城野区、太白区ではごく一部の例外を除いて本人または代理人のサインまたは押印が得られていなかった。また、若林区においては抽出したすべてのサンプルに若林区障害高齢課による押印がされていた。

受領確認のサインまたは押印は再交付または交換の事実を仙台市と本人または代理人との間で相互に確認し、後日の紛争を防止するためのものであり、受領確認のサインまたは押印を得ることは非常に重要な手続である。
上記の各区においては受領確認のサインまたは押印をもれなく受領すべきである。

イ.委任状への本人署名について(指摘)

敬老乗車証の申し込みにあたり、代理人が申込を行う場合には仙台市所定の委任状に代理人の氏名、住所を記載の上、本人の署名、押印が必要とされている。

各区で委任状の記載状況をサンプルで閲覧したところ宮城野区において代理人の氏名、住所および押印はあるものの本人の署名がないものが1件発見された。

本人による署名は、本人以外の第三者が本人に無断で敬老乗車証を入手することを防止するためのものであり押印のみで足りるものではない。

宮城野区においてはもれなく本人の署名を得るべきであった。

ウ.重複交付について(指摘)

敬老乗車証の交付を受けようとする者は第一種敬老乗車証と第二種敬老乗車証のいずれかを選択することと定められている。また、各区役所では敬老乗車証の交付の都度、交付した乗車証の種類、発行日を台帳に記入することによって重複交付の防止を図っている。

しかしながら、当該台帳を閲覧したところ若林区において2件の重複交付が発見され、1件については返還に係る台帳への記載がなかった。

重複交付の原因は、敬老乗車証の交付は台帳上の交付履歴を確認して行うこととなっているが、一斉交付期間中の交付件数の多い時期には、台帳への記載が適時に行われていなかったことから、交付済みにも関わらず台帳での交付記録がないことから再度交付してしまうケースが生じたとのことである。これら重複交付の事実は、後日、台帳を整理する過程で判明している。

若林区においては、申込書や返還届等の書類を確実に受領・保管し、重複交付が起きないよう交付実績を台帳で適時に管理すべきであった。

エ.敬老乗車証の保管場所について(意見)

宮城野区と太白区では外部者は入室できないが職員であれば入室可能な倉庫に、段ボールに入れて一目で敬老乗車証が入っていることが分かる状態で保管していた。有効期間内の敬老乗車証は有価物であり、区役所の職員であっても盗難の誘因がないとは言えない。

したがって、今後は少なくとも業務上関係ある職員以外が開けることができないキャビネットなどを用意して保管すべきである。

オ.残高枚数管理について(意見)

各区役所で敬老乗車証の残高管理の状況について確認したところ、全ての区において第一種敬老乗車証の残高管理は一斉交付期間から翌年9月まで行っていなかった。

また、第二種敬老乗車証について、宮城野区および泉区においては一斉交付期間中の残高枚数の管理を行っておらず、若林区においては、一斉交付期間を含めてそれ以降も、残高枚数の確認を行っていなかった。
第一種敬老乗車証および第二種敬老乗車証ともに定期的な残高枚数の確認を行うべきであった。エ.に記載のとおり、職員が自由に立入ることのできる場所に保管されている場合には、残高確認は特に重要な管理手続きである。

[2]敬老乗車証作製費用について(意見)

仙台市は交通事業者との協定書において、敬老乗車証の作製に係る費用のうち交通事業者に支払う負担金を以下のように定めている。

負担金額=乗車証作成枚数×6.3円(ただし、仙台市交通局が登録用フロッピーディスクへデータ変換作業を行った場合は更に6.3円を加算した額)×敬老乗車証輸送実績割合

しかしながら、1枚当たりの作製単価6.3円および登録用フロッピーディスクへのデータ変換作業の単価6.3円については、平成14年に決まって以来見直しされておらず、算定根拠も現時点では不明とのことであった。

平成14年度と平成23年度では仙台市交通局のコスト構造も変化していることが考えられ、単に過去の単価を引き継ぐことは望ましくない。今後、仙台市交通局と協議のうえ算定根拠を明確にすべきである。

3.社団法人仙台市シルバー人材センターについて

[1]事業費補助金の精算について(指摘)

市シルバー人材センターでは、その運営に係る人件費について補助金の交付を受けており、平成23年度は理事、監事および職員のうち12名および臨時職員3名分の人件費を補助事業に要する経費として市に実績報告し、概算交付額との差額を精算している。

実績報告を検証したところ、退職金掛金および法定福利費の項目について誤った実績報告が行われていたことが判明した。

あるべき金額との差額は少額ではあるが、事業費補助金が誤って交付されたことになるため、速やかに差額の精算を行うべきである。また、具体的なチェック手順を確立する等、同様のミスが生じないような工夫を行うことが必要である。

[2]銀行印の管理について(意見)

市シルバー人材センター本部において、銀行印が業務時間内は施錠されていない収納箱に入れられたまま総務課共有の机の上に置いてあることが判明した。業務の効率性を重視しているための対応ということであったが、預金等の横領されるリスクが高い状態にあるといわざるを得ない。したがって、業務時間内であっても、銀行印は常に施錠された場所に保管し、必要の都度、保管責任者の承認を得て使用する必要があると考える。

[3]補助対象経費について(意見)

補助金交付要綱には補助対象経費の記載がない。市の平成23年度の市シルバー人材センターに対する補助金は人件費および企画提案事業費が対象となっているが、補助対象経費が記載されていないため、市シルバー人材センターから補助金の交付の申請がなされる際に、市が申請内容を審議するための基準がない状況となっている。したがって、仙台市は補助金交付要綱の補助対象経費を明確に記載する必要があると考える。

4.財団法人仙台市健康福祉事業団について

[1]自主事業と指定管理事業の経費区分の明確化について(意見)

事業団が交付申請した経費の内容を検証した結果、指定管理事業の経費である嘱託職員3名に係る人件費・福利厚生費6,908,289円を自主事業補助金の補助対象経費としていることが判明した。当該相談業務は、事業団の自主事業ではないため、自主事業補助金の補助対象経費には該当しない。

一方、シルバーセンターの指定管理業務には相談センターの事業の実施が含まれていたものの、その実施に要する人件費等は上記自主事業補助金の対象経費としていたことから、指定管理業務の経費には含めていなかった。
今後は自主事業と指定管理事業の経費区分を明確にし、補助金及び指定管理料の算定基礎となる経費を適正に把握する必要がある。

5.高齢者福祉施設に係る指定管理者制度について

[1]モニタリングについて

ア.現場往査について

指定管理者の事業の遂行状況を確認するためにサンプルとして台原老人福祉センター(非公募)、泉中央老人福祉センター(公募)、仙台市シルバーセンター(非公募)の3か所を視察した。

A.指定管理者による物品管理について(指摘)

台原老人福祉センター、泉中央老人福祉センター及び仙台市シルバーセンターにおいて、仙台市からの貸与備品台帳に基づきサンプルベースでその管理状況を確認したところ、台帳に記載のあるものの、現物の無いものがあった。

老朽化等による廃棄処分を行ったときに仙台市に対して廃棄申請を行っていなかったためとしているが、今後は、貸与備品の廃棄時には協定書に基づき適切に廃棄の報告を行うとともに、毎年の市からの確認に対しては十分な調査を行ったうえで回答を行う必要がある。また、寄附受けした資産の適切な処理がされていなかった。寄附の申し出があった場合、寄附を明らかにする書類を作成し、仙台市会計事務の手引に従い適切に処理する必要がある。

B.超過勤務の管理について(指摘)

3事業所それぞれにおいて出勤管理簿、時間外労働管理簿の備え付けの状況を確認したところ、泉中央老人福祉センターでは時間外労働管理簿が備え付けられていなかった。

時間外労働管理簿を備え付け、時間外労働時間を正確に把握するとともに、正確な時間外賃金の計算を行う必要がある。

C.アンケートの実施および苦情対応について(意見)

仙台市シルバーセンターにおいては、各種の事業ごとに利用者にアンケートを行っているが、そのアンケートの結果について開示することはしていない、また、苦情対応については、個別に寄せられた苦情への対応は行っているが、意見箱の設置など利用者からの意見・苦情を収集する手段は講じていないとのことであった。

指定管理者としてよりよい施設運営のためにアンケート結果の開示や苦情の受付等に係る意見箱の設置について前向きに検討すべきである。

イ.「仙台市老人福祉センター監査実施要領」による監査の実施について(意見)

仙台市では老人福祉センターの指定管理者に対する監査について、公募による団体に対してのみ監査を行っている。

非公募の事業者については選定の段階でその管理能力も含めて選定しているため特に監査の対象になっていないとのことであった。

しかし、募集の方法によって監査を実施するか否かを区分することに合理性はないと考えられる。今後は、非公募の事業者に対しても公募による事業者と同様に監査を行うべきである。

[2]指定管理者の募集方法について(意見)

指定管理者は指定手続に関する条例に基づき、原則として公募によらなければならない。非公募によることができる場合は、公募の手続をとる暇がないとき、当該施設の適正な運営を確保するため必要と認められるとき、その他市長が特に必要と認めるときに限られている。

仙台市では仙台市シルバーセンター、老人福祉センターおよびデイサービスセンターのうち台原、高砂、郡山、沖野の施設について非公募により指定管理者を募集している。それぞれ施設の適正な運営を確保するため、非公募による選定を行っているとしているが、指定管理者の選定は公募が原則であり、現在の指定管理者と同等水準のサービスを提供できる事業者であれば指定管理者となりうるはずである。

したがって、仙台市は非公募による選定とする前に現在の指定管理者と同等水準のサービスを提供できる事業者の存在を十分調査するか公募による選定を行うべきと考える。

6.仙台市軽費老人ホーム事務費補助金について

[1]研修の充実について(意見)

軽費老人ホームにおける本人からの利用料の徴収額は、本人の対象収入の階層区分に基づき決定される。要綱に基づき仙台市が行った補助事業者の調査における指摘事項(23年度)では、この本人の対象収入の決定に関して、問題点が挙げられている。

計算方法が詳細で複雑であることから、同じような問題が多くの軽費老人ホームで発生しており、利用料の徴収額が変更される場合もある。

これまで対象収入に関する研修会は、平成21年3月に行われたが、その後の調査においても問題が発生しており、研修機会を増やし指導していくことが問題点の改善に効果的と思われる。

7.認知症介護研究・研修センター運営事業費等補助金について

[1]補助金交付要綱における補助対象経費の明確化について(意見)

給食管理業務費について、研修参加者へ併設する介護老人ホーム入居者に提供している食事と同じものを提供し、施設介護における給食について考えることも研修の一環と捉えているので運営費として負担しているとしているが、研修に係る受講料収入等と当該研修に係る経費は研修センターの運営費とは別会計で処理されており、食事の提供が研修の一環であるとするなら給食代金の一部負担も当該別会計で負担することが合理的であると思われる。

これらの疑問点は補助金交付要綱に基づく補助対象経費が研究センター運営事業に要する経費とのみ規定していることから生じるものであり、補助対象の運営事業費を再検討のうえ補助金交付要綱等で明確化する必要がある。

8.仙台市民間高齢者福祉施設整備費補助金について

[1]補助金にかかる消費税および地方消費税に係る仕入控除税額の報告について(意見)

補助金が交付された事業者が消費税の課税事業者である場合、事業者が補助金の交付と課税売上に係る税額からの控除または消費税の還付という二重の交付を受けることと同様の事態が生じる。これらの弊害を取り除くため、「この補助金にかかる消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額が確定した場合には、様式第6号により速やかに市長に報告しなければならない。(中略)また、市長に報告があった場合は、当該消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額の全部又は一部を市長に納付させることがある」と定められている。

市は、補助金を交付した事業者の消費税に係る状況を把握していない。

今後は補助金を交付した事業者が課税事業者か免税事業者であるかを把握し、課税事業者である場合には補助金にかかる消費税および地方消費税に係る仕入控除税額の取扱いを把握した上で、必要に応じ仕入控除税額の全部または一部を納付させるような対応が求められる。

9.公有財産の管理について

[1]土地台帳および建物台帳の記載方法について(指摘)

高齢企画課が作成している土地台帳および建物台帳の通査を行った。その結果、以下の事項が検出された。

  • 土地台帳および建物台帳に記載されている資産のうちその過半について、価格の記載がなされていない。また、価格の記載がなされている資産についても台帳価格の改定が行われていない。
  • 仙台市太白区茂庭台2丁目15-1外にある茂庭台健康福祉エリア用地に係る土地台帳が2枚存在する。
  • 修正液を用いて、あるいは取り消し線を記載して、項目の修正が行われている。
  • 鉛筆書きによる情報の記載が行われている。

このように、適切に管理されるべき土地台帳および建物台帳の作成において不備がある状況では、公有財産を適切に管理できているとは言えない。

公有財産は市民の財産であるということを今一度認識し、公有財産自体の適切な管理はもちろん、その台帳である土地台帳および建物台帳の記載方法および管理の方法を再度検討するべきである。

[2]公有財産の現物と台帳との不整合について(指摘)

平成24年3月31日時点の増減及び現在高報告書と土地台帳および建物台帳を照合したところ、増減及び現在高報告書には記載がないが、土地台帳および建物台帳には記載がある資産が、土地2件、建物6件あった。

その内容としては、所管換え、売却、取り壊し等による物件の減少を台帳に反映していないことから生じていた。

「各課公所の長は、その所属に係る公有財産についての台帳を備え、所管換、所属替、用途の変更又は廃止その他の変動があった場合においては、直ちにこれを台帳に記載するとともに、財政局長に報告しなければならない」という「規則」第35条に違反するものである。また、現状では台帳と公有財産との照合が行われていないことは「規則」第12条に違反するものである。

所管する公有財産と台帳との照合を定期的に実施するとともに、土地台帳および建物台帳がその実態を適切に表示するよう作成する必要がある。

[3]遊休土地について

ア.遊休土地の有効活用について(意見)

土地台帳を通査し、担当者に質問したところ、高齢企画課所管の土地のうち、以下の8件は現在更地であり、遊休状態にあるとのことであった。

所在地

実測面積(平方メートル)

備考

太白区茂庭台2-15-4

3,880.20

茂庭台健康福祉エリア用地

太白区茂庭台2-16-1

276.56

太白区茂庭台2-17-1

539.15

泉区虹の丘1-14-13

335.47

いずれも老人憩の家用地として寄付された土地

泉区館1-1-622

330.59

泉区長命ヶ丘6-7-20

1,314.05

泉区紫山2-31-2

1,500.80

泉区高森6-15-3

600.06

太白区茂庭台の遊休土地については平成22年度包括外部監査で指摘されており、仙台市はこの結果を受けて平成24年度において売却等の処理を検討している。

泉区虹の丘、館、長命ヶ丘、紫山および高森の各土地は、いずれもそれぞれの住宅地を開発した事業者から老人憩の家用地として利用することを条件に寄附されたものであるが、紫山を除く各地域には、その寄附された土地とは別の土地に老人憩の家の建設が行われており、土地は寄附後更地のままにある。

たとえ寄附の条件が老人憩の家用地としての利用であったとはいえ、老人憩の家を建設する見込みがない土地を寄附の条件に拘束されて遊休のまま保有し続けることは適切な姿勢とは言えない。他の用途としての利用、または、売却の可能性を検討して、遊休状態を解消するための施策を早急に策定する必要があると考える。

イ.老人憩の家用地に係る寄附をめぐる仙台市の対応について(意見)

遊休土地には、A)老人憩の家用地として寄附された土地があるにもかかわらず、その後、その地域内の別の土地に老人憩の家が建設されたことにより残っているケースと、B)同一地域内に老人憩の家があるにもかかわらず、老人憩の家用地として土地の寄附を受けているケースがある。

担当者によると、今後、これらの土地には老人憩の家が建設される計画はないとのことである。

寄附・所管換え後遊休状態が続き、寄附の条件に拘束され、利用・売却計画がたたない現状を鑑みると、寄附により土地を取得する時の対応に問題があったと言わざるを得ない。また、方針が転換され、寄附により受け取った土地がその用途に適していないことが判明した時点で速やかに売却を進める等の対応が必要であったと考える。

今後の対応として、遊休状態を解消するためには寄附の条件を変更する必要があり、また、今後の教訓として、行政の非効率を防止する観点から、寄附を受ける場合には慎重を期する必要があると考える。

[4]行政財産および普通財産の貸付について(意見)

使用貸借契約の変更契約書について、仙台市が保管すべき変更契約書の原本が所在不明であるため、契約の相手方に依頼し取り寄せたものを閲覧した。

仙台市と相手方との契約関係を記載する重要書類である。契約書の管理は厳格に行う必要がある。

また、土地の賃貸借契約書を閲覧したところ、契約書の所在地の表示に誤りのある契約書があった。賃貸借契約書は、仙台市と相手方との契約関係を記載する重要書類である。契約書の作成者はその作成に細心の注意を払い、また、上位者は確認を厳密に行う必要がある。

10.介護保険事業計画について

特に指摘すべき事項は認められなかった。

11.要介護認定および要支援認定の適正性について

[1]一次判定の結果を二次判定で変更した場合の記録について(指摘)

「介護認定審査会の運営について」では、「被保険者に対する保険者の説明責任を果たすという観点からも、変更を行う際には、その理由を明確にする必要がある。一次判定結果を変更する判定を行った場合、事務局に対して、特記事項又は主治医意見書の通常の例と異なる介護の手間が読み取れる具体的な箇所を明示し、これを記録することが重要である。」とされている。仙台市では「介護認定審査会記録票」を作成し、一次判定結果を二次判定において変更する場合の理由を記録しているが、任意に数件のサンプルを抽出して閲覧したところ、記録が残されていないものが発見された。

現状、二次判定に不服ということで県の介護保険審査会へ審査請求の提出されている案件は1件と少ないものの、被保険者への説明責任を果たすためにも変更理由を明確に記録する必要がある。

[2]処分延期通知の発送について(意見)

介護保険法では、要介護・要支援の認定申請に対する処分は、当該申請のあった日から30日以内にしなければならない、また、認定結果通知の到着日が申請日の翌日から起算して30日以降となる場合は、処分延期通知を行うこととしている。

しかしながら、更新申請に関しては、調査対象とした認定結果通知の中には申請日より2か月以上経過しているにも関わらず認定申請日から30日以内に処分延期通知を発行していないものもあった。

このようなケースでは、申請者に対し、担当のケアマネジャーが更新期間に対応するサービスの内容についての相談等を行っており、認定の遅延に係る実質的な問題はないものの、処分決定が大幅に遅れる、又は期限後数日内に該当する申請の具体的な処分予定日が未定であるなら、事前に文書で処分延期通知を送付することが望ましい。

12.介護保険料設定の仕組みと平成23年度の保険料について

特に指摘すべき事項は認められなかった。

13.保険料の減免について

特に指摘すべき事項は認められなかった。

14.介護保険料の収納状況について

[1]効率的かつ効果的な徴収活動の実施について(意見)

現年分と滞納繰越分を併せた普通徴収の平成19年度から平成23年度までの収納率の推移は、70.4%、69.1%、67.7%、62.1%、66.6%と、概ね横ばい、ないし、微減傾向にある。

区はそれぞれ年度ごとに収納対策計画を策定のうえ徴収活動を実施し、また、滞納者の訪問徴収を実施する嘱託職員の報酬は基本報酬に加え、能率報酬および口座振替勧奨報酬が支払われるという体系になっているが、大きな成果は上がっているとは言い難い。

平成16年2月に作成された「介護保険料滞納整理の手引き」は現在使用されておらず、区独自の指針も作成されていないことから、滞納者との折衝時の調査事項が明確でなく、「滞納整理票」の記載内容も担当者の判断に委ねられているため、「滞納整理票」には滞納者との折衝についての担当者の所感が漫然と記載されるにとどまり、必ずしもその後の徴収活動に役立つものとはなっていない。

収納率を向上させるには、徴収活動をより効率的かつ効果的に行う必要がある。そのため、各区で使用できるよう「手引き」の見直しを行い、滞納者への調査事項および「滞納整理票」への記載事項の明確化を図り、また、各区で策定する収納対策計画の精緻化を図る必要がある。

これに基づき、滞納者の態様に即した徴収活動を実施し、実際の徴収活動で浮かび上がった課題の洗い出しと、市、各区、嘱託職員による情報の共有化を図り、その後の収納対策計画へ反映させていくという取り組みが必要である。

15.滞納保険料に係る不納欠損額について

[1]財産調査および滞納処分の実施について(意見)

「滞納整理票」の閲覧および区担当者への質問の結果、滞納者の大半は低所得者であり、支払の余裕が無いというものが大部分であったが、所得段階が第9段階にある滞納者については、介護保険制度に対する不信等から、保険料を納付しない被保険者が存在するのも事実である。これらの滞納者に対しては、介護保険制度の趣旨を十分に説明し理解を得る必要がある。保険料を納付できるにもかかわらず納付しない被保険者を未納のまま放置することは、保険料は納めなくてもいいという風潮を助長し、介護保険制度の根幹を揺るがすことにつながりかねず妥当ではない。

市では、介護保険制度開始以降、滞納処分は実施していないが、介護保険制度に係る財源を安定的に確保するためにも、滞納者に対し、滞納処分を実施する必要があると考える。

滞納処分を実施又は予定している政令指定都市は20都市中15都市にのぼっている。また、市民税等の徴収強化を図り、悪質な未納者に対し強い態度で臨む自治体が増えているのも周知のとおりである。効率的かつ効果的な回収が見込める滞納者を洗い出し、他の部署との連携も図りながら、滞納処分を行う必要がある。

16.介護保険における保険給付について

特に指摘すべき事項は認められなかった。

17.地域包括支援センター(包括的支援事業の実施委託)について

[1]実績報告書の正確性の検証について(指摘)

仙台市では、センターとの委託契約によりセンターが高齢者等実態把握調査を実施した場合、1件あたり2,700円の事業費を交付している。

センターは調査の内容および結果に係る調査票を区役所に報告し、実績報告書を市役所(介護予防推進室)に提出している。実績報告書は事業費交付の基礎資料となるものであるが、市役所では実績報告書の正確性を検証することなく、提出された実績報告書に基づきセンターに対し事業費を交付していた。

実績報告書の正確性は、区役所に提出された実態調査票と照合することにより確認できるものであり、その手続きは確実に実行すべきである。

18.地域支援事業について

[1]介護用品支給事業について

ア.介護用品支給申請書に対する添付書類について(指摘)

介護用品支給事業を利用しようとする重度要介護高齢者またはその介護者は、介護用品支給申請書に必要な書類を添えて市長に申請しなければならないこととされている。

しかしながら、泉区及び宮城野区において介護用品支給申請書に必要書類が添付されていないケースが散見された。確認した書類を添付していないことは、事務執行に当たっての要綱への準拠性、事務処理の効率性および透明性ならびに申請者に対する公平性の観点から、区の担当者は介護用品支給申請書に必要な書類が漏れなく添付されていることを確認する必要がある。

イ.介護用品利用者台帳について(指摘)

仙台市介護用品支給事業実施要綱では、介護用品利用者台帳(様式第5号)その他事業を行うために必要な書類を備え、事業の適正な実施を確保しなければならないこととされている。
しかしながら、若林区においては介護用品利用者台帳を作成するにあたって、様式第5号を使用せず、独自の様式を使用していることが判明した。

事務執行に当たっては要綱に準拠することが求められるため、介護用品利用者台帳は第5号様式を使用して作成する必要がある。

ウ.支給対象者の要件について(意見)

生活保護の被保護者で40歳以上65歳未満の医療保険未加入者は、介護保険の被保険者に該当しないことになっている。しかしながら、太白区および泉区においては、介護保険の被保険者に該当しないにもかかわらず、生活保護の被保護者で、かつ、要介護4または5相当の認定を受けている者であることをもって介護用品支給の決定をしていたことが判明した。

太白区においては、市の高齢企画課在宅支援係に事務処理の照会を行ったうえで対応し、かつ市は要綱の解釈について全区に周知したものの、泉区においては、介護用品支給券が使用されず実質的な影響はなかったが、平成24年度からの後任担当者はこの事実を把握していなかった。泉区の担当者が当該事務執行上の誤謬について後任担当者に対して適切に引き継ぎを行っていなかったことが問題点として挙げられる。

事務執行上の誤謬については、その予防に努めることは当然であるが、必ずしも完全に予防できるとは限らないため、誤謬が発生した場合には適切な対応を図り、かつ、再発防止策を策定し、関係部局に対して周知徹底を図るとともに、関係部局では担当者交代の際には事務執行上の引き継ぎを適切に行う必要がある。

エ.介護用品単価の検証について(意見)

介護用品支給事業においては、委託している介護用品支給事業者から各区が介護用品支給事業利用内訳書を毎月入手し、それに基づいて委託料の支払を行っている。

しかしながら、泉区、若林区、宮城野区及び太白区では内訳書の単価の検証が毎月実施されていないことが判明した。

内訳書の単価の検証を実施しない場合、事業者の不正または誤謬による過大請求を看過してしまう可能性も否定できないため、少なくとも事業者から入手した介護用品のパンフレットに基づき、毎月内訳書の商品名とその単価の対応が正確であることを検証することが必要であると考える。なお、検証する範囲については、各区の事務執行上の費用対効果を勘案して決定すべきと考える。

[2]二次予防事業対象者把握事業について(意見)

二次予防事業対象者把握事業は、平成22年度まで行われていた医師の判断を要する生活機能評価による把握に代わり、平成23年度からは65歳以上の個人に豊齢力チェックリストを直接送付し、その回答に基づいて把握することに変更されており、把握の精度の低下が懸念されるところである。

この点について市の説明によると、回収した回答に基づいて二次予防事業対象者を把握するものの、その精度の低下を避けるために、委託先であるセンターが実際に各人へ訪問・電話掛け等を行い、その状態を確認することによって二次予防事業対象者にさらに優先順位をつけているということであった。しかしながら、センターが優先順位をつけるための明確な基準が存在しておらず、恣意性が介入する可能性を否定することはできない。

したがって、市は優先順位をつけるに当たって恣意性を排除するための明確な基準を策定し、センターに周知させることによって二次予防事業対象者の把握の精度の向上に努めることが必要であると考える。

[3]通所型特定高齢者支援事業について(意見)

平成23年度は実施要綱の改正により二次予防対象者数が11,947人と平成22年度の1,678人に比して約7倍に増加している。この増加は実施要綱の改正による側面が強いものの、高齢者人口の増加により、今後二次予防事業対象者数の増加は確実なものであると見込まれることから、介護予防プログラムの利用者の増加が期待されるところである。しかしながら、平成23年度の利用者実人数は359人であり平成22年度の353人からほぼ横ばいである。

したがって、市では実施要綱改正の趣旨を踏まえて事業実施委託先の増加を検討するとともに、事業実施委託先で実施される介護予防プログラムの開催ごとの参加率を上げるために二次予防事業対象者に介護予防プログラムの実施について事前に広く周知する等の工夫をすることが望まれる。なお、平成24年度においては事業実施委託先を増加するといった取組みは行われている。

19.仙台市高齢者食の自立支援サービス事業について

[1]事業者の審査について(指摘)

募集要項によると受託事業者は申請書類一式を市に提出し、市はそれに基づき審査を行い、事業遂行能力のある事業者を選定することとなっている。

平成23年11月に委託契約を締結していた事業者より、事業所にかかる変更届が提出され、市は新たな事業所への変更を承認した。この事業所は、新規の事業所であるにも関わらず市は募集要項に基づく審査を行っていなかった。

年度途中の変更で通常の審査の時期とは異なるものの、募集要項に基づく審査は、事業所による栄養士の作成した献立により栄養バランスのとれた食事の配食の継続性、さらには利用者の安否確認を継続して行う体制が整備されているかを検証する重要な手続きであり、確実に実施すべきである。

[2]軽自動車の使用貸借について(意見)

市は食の自立支援サービス事業を委託している2事業者に対し、この事業の開始以前に行われていたモデル事業の開始時から軽自動車の使用貸借契約を締結し、軽自動車を無償貸与しており、その状況は現在も継続している。しかしながら、平成12年度にはこの事業が正式に採用され、一般事業者も参入することとなり、平成23年度においては、14事業者20事業所がこの食の自立支援サービス事業を受託している。

このような状況下において、特定の事業者に対し無償貸与を継続する必要性は乏しいと思われ、また事業者間の競争の公平性の観点からも無償貸与を見直すべき時期にあると思われる。

[3]利用者のアンケート調査等に基づく実態調査について(意見)

食の自立支援サービス事業に基づく食事提供数は、平成19年度の344,489食から年々減少し平成22年度は317,227食と約8%減少している。平成23年度は震災による影響等、明確な理由は不明であるが、330,993食と増加している。この増加傾向が続くのか否かは不明である。

近年、食事を宅配する事業への民間事業者の参入が増えており、しかも食の自立支援事業で委託事業者が得られる1食あたり800円(利用者から500円、市から委託料として300円)よりも安価な価格で食事を宅配している状況にある。

このような状況の中、変動の要因について利用者へのアンケート調査等によりその実態を把握し、今後の食の自立支援事業の見込み量を把握していく必要があると思われる。

20.扶助費について

特に指摘すべき事項は認められなかった。

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