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更新日:2020年2月7日

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平成29年度施政方針要旨

平成二十九年第一回定例会の開会にあたり、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べます。

千年に一度という未曽有の大災害から、私たちは、復興に向けた長く険しい山を登ってまいりました。そして今、目に映るのは、なお山並みは続く中にも雲間に一筋の陽光が差し込む光景であります。
東北の人口が戦後初めて九百万人を割り込んだことが明らかとなり、自治体の消滅という議論が現実味を感じさせるものとなってまいりました。国全体に目を向ければ、他の国々が未だ経験したことのない急速な高齢化が進み、社会保障制度をはじめ、人口増加の時代に築かれた社会システムが転換の渦中にあります。
こうした中、これからの本市に求められますのは、将来にわたって人々をひきつけ、活力を持った都市であり続けるための基盤づくりであります。大震災の経験を踏まえ、海外にも通ずる独創的なまちづくりを進め、東北を力強く牽引する都市へとこのまちを発展させていかなければなりません。
世界の諸都市を見渡しますと、豊かな自然と中小企業の活力を背景に、アメリカで最も住みたい都市とされるポートランド、ヨーロッパ最古の大学を有する学術都市であり、近年は国際的なコンベンション都市としても名を上げるイタリアのボローニャなど、低成長が続く二十一世紀においてもなお、人々をひきつけ、独自の輝きを放つ都市がございます。これらの都市は人口や経済などで圧倒的な集積を誇る「巨大都市」として、その優位性を保っているのではなく、各々の歴史と文化を基盤として、そこに住む住民の方々が、そのまちならではの良さを掘り下げ、磨き上げた結果、今日においても人々を魅了する都市たりえていると思うものであります。
折しも、本年は、藩祖伊達政宗公生誕四百五十年にあたります。仙台の千代に続く繁栄を願い、まちを開いた政宗公は、まだ見ぬ異国の地に家臣団を遣わすなど、進取の気性に富む方でした。諸国から人材を招き、城下に新しい文化の風を吹き込むとともに、治水技術を高め、四ツ谷用水に代表される近世の都市の生命線ともいうべき上下水道システムを整備するなど、現代にまでつながるまちの原型を築かれました。
外部からの知識や技術を積極的に取り入れ、自らを変革する力へと変えていくしなやかさを仙台らしさというのであれば、それはこのまちに連綿と続く伝統であり、私たちにとってかけがえのない財産であると思います。仙台の名を世界に広げた「仙台防災枠組」。二〇三〇年までの国際的な防災指針であるこの枠組が採択された第三回国連防災世界会議においては、多くの市民が震災の体験を胸に、それぞれの思いを発信し、学び合い、まちを挙げて仙台開催を支えました。会議で得た知見は本市のまちづくりに取り込まれ、防災環境都市という新たな都市像を形作っております。さらに、国家戦略特区の取り組みもまた、現代において高度化する地域課題に対し、市民や起業家の方々とともに柔軟な発想で解決を図っていこうとする試みであり、仙台が持つ変革力の一つの表れであろうと自負しております。
そしてまた、私たちの足元、身の回りに目を向ければ、郊外地域や中山間地などにおいて、外部の力を引き込みながら、市民、企業、団体等がつながり合い、新たな試みに取り組む具体の動きが始まっています。私たちの暮らしの場には、未だ隠れたまま、何気なく見過ごされてきた可能性が数多く眠っていると感じます。私は、こうした「地域」の潜在力に改めて焦点を当て、行政が多様な主体のつなぎ手となって地域力を育てる仕組みづくりをスタートさせたいと考えております。地域発の新しいまちづくりの力が重なり合い、束ねられることによって、都市としての総合力が高まり、ひいては新たな時代においてなお吸引力を持つ、深みのある都市の魅力へとつながっていくのではないでしょうか。本市にはそれを可能とする創造力と粘り強さがあると信ずるものです。
このような考えのもと、新年度を「仙台らしさで挑む、まちづくり推進の年」と位置付け、議会をはじめ百八万市民の皆さまとともに確かな未来を創るべく、各般の施策を推し進めてまいります。

まず施策の柱の第一は、「都市個性を生かした交流都市づくり」です。
海外にも通用する仙台を代表する都心空間であり、せんだいメディアテークをはじめとした文化的施設が連なる定禅寺通について、道路空間の再構成やエリアマネジメントの導入など、杜の都の風情を感じさせる、都市の文化が薫る街区の形成に向けた検討に着手いたします。
併せて、市内中心部の遊休不動産や公共空間を対象に、事業化を目指すワークショップの開催や、民間の発想を取り入れた公共空間の利活用の促進により、新たなにぎわいの創出と、魅力ある都市空間の形成を進めます。
また、政宗公生誕四百五十年を記念し、博物館において特別展を開催するなど、戦国武将であるとともに、文化人であり、泰平の世における領国経営者でもあった政宗公の姿や事績を広く発信する機会を設けてまいります。
そして、あの震災の苦難に満ちた中でも、大勢の市民の心を癒し、力を与えてきた音楽。その音楽とともに歩みを進めてきた仙台の復興のシンボルとして、また、楽都仙台ならではの文化拠点として、音楽ホールはこのまちが未来に向け備えるべきもののひとつと考えます。新年度には、有識者の方々からなる組織を設置し、まちづくりの観点を踏まえ、規模や立地などの本格的な検討に着手いたします。
交流人口の拡大に向けては、スイスのダボスで開催されている防災会議と連携した「世界防災フォーラム」を本年十一月に本市で開催いたします。仙台・東北の復興状況を伝え、震災からの復興の過程で私たちが得た知見を世界と共有するとともに、大規模国際会議開催の実績を積み重ね、国際的なコンベンション都市としての地位の確立につなげます。
震災からの復興と鎮魂を願って、東北が一丸となっての取り組みを進める中、昨年の青森での開催をもって六市を一巡した東北六魂祭については、その後継となる「東北絆まつり」を、仙台で開催し、二巡目の皮切りといたします。また、復興ツーリズムとして被災四県等と共同し、東北太平洋沿岸部への来訪者の増加に向け、被災の甚大さや復興の現状を直接感じていただけるよう、受け入れ環境の整備と情報発信を進めます。
海外からの観光需要の取り込みについては、昨年協定を結んだ山形市をはじめ、関係各都市と連携し、海外メディア等を活用した誘客を図るほか、タイ、台湾等からの外国人観光客のニーズに合わせたプロモーションを展開してまいります。
また、東北のゲートウェイ機能の中心となる仙台駅周辺において、鉄道と観光バス等の結節機能強化に関する検討を行うなど、来訪者の受け入れ環境の整備に向けた取り組みを進め、広域観光の促進を図ります。
世界の注目が日本に集まる東京オリンピック・パラリンピックに向けては、ホストタウン事業として、イタリアとの青少年によるスポーツ交流を行うほか、事前キャンプの誘致を引き続き進めてまいります。
仙台は、オリンピックのフィギュアスケートで男女ともに日本初となる金メダリストを輩出いたしました。市民の強い期待を背に、世界の舞台で栄冠を勝ち得た荒川静香さんと羽生結弦さんの活躍を讃えるモニュメントの設置を記念し、セレモニーを開催いたします。
提携五十周年を迎える国際姉妹都市のレンヌ市をはじめ、ダラス市、光州広域市に公式訪問団を派遣するとともに、観光セミナーを実施し、相互交流を一層活性化させてまいります。

第二の施策の柱は、「地域から発想する仙台型まちづくり」です。
本市は、中心部、郊外地域、中山間地など、様々な特色を有する地域で構成されております。それぞれに固有の成り立ちと特性があり、人口減少や少子高齢化の進み方を見ても、異なる推移をたどってまいりました。各々の地域で起きつつある生活環境の変化を敏感に感じ取り、状況に応じて、目的を共有する多くの方々と力を合わせ、新たな発想で地域資源を生かしていく試みが重要です。
郊外住宅地や西部地区において、各地域で行動する市民、地域団体、NPO、民間事業者等、様々な方々とともに、人口減少や超高齢化社会の到来を見据えたまちづくりプロジェクトを進めてまいります。併せて、地域行政の第一線である区役所において、多様な主体をコーディネートしながら課題解決に取り組むための体制の構築を図ります。
まちが抱える社会的課題の解決に加えて、なお一層市民協働を促進させる取り組みを進めるため、拠点施設である市民活動サポートセンターの機能強化を図るとともに、複数の団体が連携して実施する取り組みへの助成など、市民のアイデアを生かした事業を展開いたします。
今後の地域経済に目を転ずれば、時代の変化に柔軟に対応していく上で、IT産業は、重要な鍵と考えます。
大学等の知的資源や海外都市との連携の枠組みを活用しながら、専門的知識を有する人材の育成・確保を積極的に進め、広がりを見せるIT企業の立地をさらに促進するとともに、技術の活用を考える地域事業者に対する相談や助言などを通じて、地域経済のイノベーションを下支えしてまいります。
また、起業家の成長に向けた集中的な支援プログラムの実践や、地域課題にビジネスの発想を取り入れて解決を図る社会起業家育成プログラムの本格的な実施、国家戦略特区を活用した外国人起業家の受け入れなど、厚みのある起業支援を展開いたします。
さらに、中小企業支援の拠点施設として新年度にオープンする中小企業活性化センターを活用しながら、人材の確保や定着、海外販路の拡大、資金調達の多様化などの支援を強化いたします。
地元企業の魅力を内外の学生に伝える取り組みに加え、仙台での起業や就職を希望する大学生の海外留学を支援する制度を設け、国際経験が豊かな人材の育成及び学生の本市への定着を促進いたします。
東部の農地では、震災後に設立された農業法人が新たな品目の生産やブランド化に向けた取り組みを進めるなど、新規の試みが始まっております。このような農と食を連携させたビジネスや農業の収益向上に向けた取り組みを積極的に後押ししてまいります。
若い世代の方々が仙台で働くことに魅力を感じ、このまちに住み続けたいと思っていただくためにも、子育てしやすい環境づくりは欠かせません。
本市独自の子ども医療費助成について大幅な拡充を行い、本年十月から通院助成の対象となる年齢を、現行の小学三年生までから中学三年生まで引き上げます。併せて、待機児童対策のための保育所等の整備や放課後児童クラブの受け入れ枠の拡大、保育所併設型の病児保育施設の新設など、安心して子育てができる環境の充実に向けて取り組みます。
子どもの貧困対策として、学習・生活サポート事業などを継続するほか、高校生の中途退学防止に向けた支援に取り組むとともに、各区役所の家庭相談員を増員し、相談体制の強化を図ります。
いじめ問題については、従来の取り組みに加え、小学校における専任教諭を増員するなど、早期発見、早期解決に向けた対策の充実を図ります。
新年度から開始する介護予防・日常生活支援総合事業に関しては、短期集中予防サービスの提供など、介護予防サービスの拡充を図るほか、住民主体の集いの場へのリハビリテーション専門職の派遣など、介護予防の取り組みへの支援を充実させてまいります。また、地域包括支援センターを中心に、地域を構成する多様な主体の相互連携を強化しながら、高齢者が住み慣れた場所で安心して暮らし続けることができるよう、支え合いの体制づくりを進めます。
昨年度制定した、いわゆる障害者差別解消条例に基づき、障害及び障害者への理解を促進するための普及啓発を引き続き行うとともに、障害者支援施設等の防犯設備整備への補助など、防犯対策の強化を図り、安全・安心を確保してまいります。

施策の柱の三点目は、「防災と環境を基軸とした未来を創るまちづくり」です。
東部沿岸地域における防災集団移転跡地の六十五ヘクタールという広大な土地については、市民、事業者の方々の自由な発想や提案を取り入れつつ、多くの人々が集い、活気あふれるにぎわいの地となることを目指して復興を進めてまいります。また、東六郷小学校の敷地については、地域住民の方々とワークショップを重ねながら、コミュニティ・センターと合わせて地区の新たな交流拠点となるよう、跡地利活用を図ります。
復興の長期的な課題として、かさ上げ道路や避難道路の整備による災害対応力の強化を図るとともに、海岸公園の再整備、ふるさとの杜再生プロジェクトを進め、復興のシンボルとして、沿岸部の緑豊かな風景の再生・創出に向けた取り組みを着実に進めます。
また、今年度内には、市内で被災された方々は全て、恒久的な住宅へと移られる見込みであり、再建先での新たなつながりの中で安心して暮らしていけるよう、コミュニティづくりに取り組むとともに、市外で被災され、応急仮設住宅に入居されている方々へのきめ細かな対応を続けてまいります。
地域防災リーダーの養成、学校における継続的な防災教育の実施、地域版避難所運営マニュアル充実への支援等、ひとたび災害が発生した場合に迅速、適切に災害への対応行動が起こせる仙台ならではの「防災人」の育成を進めます。併せて、震災での経験や教訓について、市民が思いを共有し、意見を交わすための場ともなる仙台防災未来フォーラムを開催いたします。
昨年も、熊本地震、福島県沖の地震による津波など、多くの自然災害が発生しました。昨年度に開設した「せんだい3.11メモリアル交流館」に続いて、津波の脅威を実感する震災遺構として保存・整備を進めてきた荒浜小学校を一般に公開し、より幅広い人々に向けて震災の記憶と経験を発信・継承してまいります。市内中心部におけるメモリアル拠点施設につきましても、その整備に向けた検討をさらに深めてまいります。
これまで、環境に高い意識を持ち、緑を大切にする市民の力は環境に優しいまちづくりの原動力となってきました。本市の多様な生物や自然、豊かな生態系への理解を深めるための機会を幅広く提供するとともに、大学生をはじめとする若者や地域の方々との協働により一層のごみの減量や分別・リサイクルを促進いたします。また、市民参加型のアートイベントを開催するなど、環境問題への新しいアプローチを工夫し、さらなる市民意識の向上に努めます。
市役所本庁舎については、老朽化に伴い建て替えが急務であることから、新年度には外部の有識者による検討委員会を立ち上げ、防災環境都市にふさわしい災害対応機能を備え、環境にも配慮した新庁舎の建設に向け、基本構想の策定に着手いたします。

国内外の社会経済情勢は不透明感を増し、先行きの見通しづらい時代環境ではございますが、これまでの仙台の伝統に、震災を経て私たちが身につけた新たな力を武器に、市民の皆さまと行政がともに力を合わせて、一歩一歩確かな歩みを続けてまいりたいと存じます。
来るべき未来においても、このまちが一層の輝きを放ちますよう、私も全力を挙げて取り組んでまいる覚悟でございます。

以上、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べてまいりました。
議員各位及び市民の皆さまのご理解ご協力を心からお願い申し上げます。

仙台市長 奥山 恵美子

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まちづくり政策局政策企画課

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