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更新日:2023年3月22日

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令和3年度包括外部監査結果報告書「仙台ブランドの維持・構築に関する施策・事業に係る財務事務の執行について」

報告書全文(PDF:1,515KB) / 概要版(PDF:545KB)

外部監査の概要

1 外部監査の種類

 地方自治法第252条の37第1項に基づく包括外部監査

2 特定の事件を選定した理由

(a)キーワードを活用したまちづくり

 仙台市は、地域ブランドとして無形の資産を有している。

 最も有名なものとして、「杜の都」という特徴的なキーワードがある。また、「杜の都」にとどまらず、「学都仙台」や「楽都仙台」、「劇都仙台」等多様なキーワードも市政に有効に取り入れ、活用している。

 これらのキーワードは、仙台市のイメージを向上させ、都市の魅力を高め、人々を引き付けるのに役立つものであることから、関連してどのような事業や施策が行われているか、その内容や評価については市民にとっても関心の高い領域であると思われる。

 これまで仙台市は、このような地域特性を顕著に表す象徴的なキーワードを積極的に有効活用し、様々な事業や施策を企画・実行してきた。特に内部組織にも「百年の杜推進課」という特徴的で、独自性の高いユニークなネーミングの課を創設し、様々な活動を行っている。

 キーワード・ブランドという切り口で見た場合に、どのように有効的なまちづくりが行われているか、第三者が確認・検証することは意義があるものと考えた。

(b)アフターコロナを見据えたまちづくりの推進

 仙台市では令和2年度を終了期間とする「仙台市基本計画」及びそれに基づく「仙台市実施計画」を策定し、取り組みを行ってきた。しかしながら令和2年に入り新型コロナウイルス感染症による影響が拡大し、市が計画していた事業にも大きな影響を与えている。このような中、今後の10年間を計画期間とする新たな「仙台市基本計画」を令和3年3月に策定した。その中では新型コロナウイルス感染症による人々の行動様式の変化を踏まえて、世界からも選ばれるまちを目指すことを理念に掲げている。

 監査対象年度である令和2年度の主要事業にも「杜の都」という表現は数多く出てくる。それ以外にも仙台市は「学都仙台」や「楽都仙台」「劇都仙台」等のキーワードも頻出しており、いわば仙台を象徴するブランドとして、それを維持向上するための様々な事業を行っている。

 コロナ禍により人々の価値観が変容し行動様式が変わりつつある中で、これまでの東京一極集中から、住みやすいまち、働きやすいまちを求める傾向が強まると考えられる。そのため「杜の都」を代表する、仙台のブランドを維持向上するための事業について、このタイミングで包括外部監査のテーマとすることは、今後のアフターコロナを見据えたまちづくりの観点から有用と考えた。

(c)新たな仙台ブランドづくり

 仙台市は、災害に強いまちづくりとして新たに「防災環境都市」のブランド化を推進している。また、市民に愛される仙台市を形づくるためにスポーツ推進事業を行っている。コロナ禍において影響が大きい観光事業は、アフターコロナを見据え、新たな仙台のブランドづくりに欠かせない存在であると考える。これらの新たなブランドづくりのために、どのような活動を行っているのかは、仙台市民にとって関心の高い領域である。また、これら防災環境都市推進、スポーツ推進及び観光事業は今後の仙台市にとって重要な役割を担っていると考えられるため、新たな地域ブランドづくりとして、これらに関連する施策も併せて選定し監査対象とした。

 

外部監査の結果及び意見

(総論)

1 成果の把握及び改善について

 今回対象とした事業や施策についてヒアリングした結果、明確な成果指標がないと回答があったのは16件であった(当初回答)。

 これは担当課が行政サービス自体の効果、さらにいえば費用対効果をそれほど重視していない姿勢が表れている。地方自治法による「最小の経費で最大の効果を上げるようにしなければならない」との地方公共団体の使命から鑑みると実に物足りないと感じた。進捗状況についての総括は、仙台市実施計画の策定及びその取りまとめにおいて行われているとの声があったが、実施計画・重点課題の自己評価を見ると、「新型コロナウイルス感染症の影響により進捗が進んでいない」という文言が目立ち、実際の進捗や評価は市民にとって実に分かりにくいものであった。

 令和2~3年の状況からはコロナ禍の影響があるのは当然であるため、コロナ禍の中で、その状況をどのように想定し、実績の振り返りを行い、それを次年度への申し送りにしたかの説明がないと事業の評価は市民から見えにくい。

 確かに、ブランドイメージを高める施策の場合は、直接の支出効果を把握することが困難な施策が多いかもしれない。しかしながら、間接的・部分的な補助効果を示すと考えられる指標を調査・把握し、できるだけ補助効果を示す指標を明確にすることは不可能ではないと考えられ、仮に指標がない場合には、PDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを効果的に行うことができない。また、定量的な目標を設定できないまま支出が行われると、更に支出内容を改善しようとする姿勢が薄れ支出自体の意義が乏しくなり、結果として経済性、効率性、有効性が低下する可能性が高まる。

 一般的に、たとえどんな小さな金額であっても、事業や施策に税金を投入するにあたっては、費用対効果を重視する姿勢を市民は期待していると考える。そのためどのような効果があるから支出を行うのか、予め分析を行うことが望まれる。また、支出を行った結果どれくらい効果を得られたかについても、市民はこれを分かりやすく伝えてもらうことを期待していると考える。もし効果が明確に把握できないにもかかわらず、それでも支出を実施するのであれば、その合理的な理由を整理・文書化し説明することが望まれる。仮に、効果を把握できる定量的な指標が存在しない場合でも、個々の事業単位で間接的・部分的な補助効果を示すと考えられる指標を定めた上で、事業を行い、その効果を説明する責任が市にはあると考える。

 このような評価に対する姿勢の欠如の根本原因は、どこにあるのだろうか。あくまで監査人の推定ではあるが、前例ありきの姿勢、改善意欲・変更意欲の不足が大きいと感じた。

 また、課題を把握したとしても結局実効的な解決に繋がっていないのは、短い期間でのローテーションが弊害となっている面が大きいと感じた。改善のインセンティブが十分に働く仕組みを整備する必要性がある。

 総合的人材の育成のために、ローテーションは必要であることから、例えば、各課から大小課題を吸い上げ、業務改善を専門的に行う部門を設置するのも1つの考え方だろう。

2 総合的・包括的な戦略策定について

 今回、各ブランドに関連する事業を対象として監査した。

 仙台市はかねてより「杜の都」というイメージが有名であるが、そのほかにも「楽都」「学都」といったイメージもあり、また、近年は「防災環境都市」を強く推進している。加えて、特定のワードを用いてはいないが、都市の魅力を高めようと「観光」「スポーツ推進」にも力を注いでいる。

 「仙台と言えば○○だ」というイメージを広めることは、この多様な価値観が混在する時代において、差別化を図ることができるようにするため、ブランド戦略として大変意義のあることであるが、反面徒に手を広げすぎて中途半端になっている印象もある。

 より効果的にブランド戦略を行うならば、究極的には対象を一つにしぼり、集中的に資源を投下した方が効果は高まるだろう。

 それぞれの担当者は、与えられた役割の中で熱意をもって業務を行っていたが、横断的なブランド管理・ブランド推進という点では、明確な担当者は存在していない。そのため大局的な見地から戦略的な取捨選択が行われているかといえば、この点は非常に物足りなく、何よりもったいないと感じた。

 また、「杜の都」推進のため主要な役割を果たしている「緑の計画」は、理念や使命はあるものの数字による説明は多くなく、資金的な情報はほとんどない。これを進めるにあたりどれくらいの費用を見込んでいるのか、またその効果としてどのような用益をもたらす見込みなのか、どれくらいの価値を見込むのかについて、全体的なシミュレーションを行い、より戦略的に実行することが望まれる。

 総じて仙台市のブランド戦略という意味では、せっかくの強みを生かし切れておらず、有意義に利用しきれていない。全体最適の観点から、戦略的に行う姿勢を持って実施することで、より効果的効率的に実施できるのではないかとの感想を持った。

3 予算の弾力的運用について

 主な監査対象期間である令和2年度は、新型コロナウイルス感染症が拡大し、いわゆる第1波~第3波が到来した事業年度である。

 これにより当初予定していた事業の中止等により、予算の組み替えが行われた。

 しかしながら、最終的に行われた支出の詳細を見ると、弾力的な見直しや支出継続の是非の検討が不十分と思われる事例がいくつか見られた。このような支出には、客観的に第三者として見た場合、必要性の乏しいとまでは言わないものの、根本には予算消化の意図がないとは言い切れないように感じるものも含まれていた。

 コロナ禍という事態は、誰も経験したことがない未曽有の事態であるため、これに適時適切に対応することは困難であるのは当然である。

 しかしながら、誰もが予想しきれない変化が往々にして発生するのも一つの事実である。

 将来の不確実性に対処するためにも、各事業や施策において、どのように考え、どのように対応したのか、残った課題はどうだったのか、また、将来の課題にどのように対応するのが良いのか等の取りまとめを行い、検討しておくことが望ましい。

 今回のコロナ禍に関し、それぞれの担当者レベルだけではなく、より広い関わりのなかで、この経験を活かし効果的効率的な市政運営の礎としてほしい。

4 文書管理に対する意識について

 今回監査の過程で、市が作成しもしくは提出を受ける文書について、記入誤りや日付の誤り、記載の脱漏等が頻出された。

 市の担当者は、日々膨大な行政文書に囲まれており、それらを全て人の目により完璧に確認するのは困難である状況も理解できないわけではないが、それを差し引いても今回は多くの誤りが目につく状況であった。

 これらが生じた理由などについて、担当者と意見交換を行った結果、本質的な不備には繋がらないので問題ないとの回答が多くなされ、個々の担当者レベルで文書管理に対する意識が希薄になっているのではないかとの印象を抱いた。

 往々にして、大きな問題は小さなミスが積み重なって生じるものであり、結果としてこれまでは大きな問題とはなっていないだけの可能性もある。本質的な不備につながらなければ問題ないとする意識で業務が行われると、後々取り返しのつかない事態になる可能性も否定できないため、市の職員においては、高い意識・高いレベルでの業務が行われることを期待する。個人としての取り組みは限界があると思われるため、文書管理に対する意識を高めるような組織的な取り組みについて検討するべきである。

 

(各論)※指摘事項のみ抜粋

I 個別検出事項

項目

区分

報告書ページ

内容

改善措置

契約書の文言利用について

指摘1

36

 青葉山公園(仮称)公園センターに係る工事の契約書において、特則として読み替え条項が挿入されていたが、読み替え前の条項で使用している文言と、読み替えしようとしている文言との間に差異が生じていた。

 契約書に不明瞭な点があると権利関係が不明確になることから、使用する文言については判断や解釈の入らない明確なものとする必要がある。

令和4年11月9日公表(PDF:262KB)

契約書の記載事項について 指摘2 37  契約書の課税事業者・免税事業者の区別及び受注者名の記載が空欄のままとなっていた。
 市で使用している標準の契約書のひな型が当てはまらない場合であっても、契約書の記載事項に関しては厳密に運用すべきである。
令和4年11月9日公表(PDF:239KB)
業務委託仕様書について 指摘3 54  Route227s‘Caféでのイベント実施における業務委託仕様書において、記載誤りがあった。
 市は、書類事務を適切に行うため、書類が適切に作成されていることを漏れなく確認する必要がある。
令和4年6月1日公表(PDF:122KB)
1 杜の都

 

項目

区分

報告書ページ

内容

改善措置

助成金の支出対象事業について

指摘4

79

 地域団体が大学の知見を活かす等大学と連携した地域づくりを推進するために行う事業において、助成額の中に助成対象とならない経費も含まれている。
 要領の趣旨に沿って助成対象となる事業を明確にしたうえで適切な対応を進めるとともに、今後は、助成対象となる事業および経費の範囲を慎重に検討し、適正な助成金の交付に努める必要がある。

 

2 学都仙台

 

項目

区分

報告書ページ

内容

改善措置

実績報告の書類について

指摘5

96

 楽都仙台推進事業を委託するに当たり、仕様書において、「成果物提出の留意事項」として「次年度以降における展開案も盛り込むこととする」との内容があった。しかしながら、提出された成果物の中で、当該事項を確認することはできなかった。
 市の担当者としては、仕様書に留意事項が盛り込まれた趣旨を十分に勘案して、委託者には仕様書通りに確実に報告させるように指導する必要がある。

令和4年9月1日公表(PDF:106KB)
3 楽都仙台・劇都仙台

 

項目

区分

報告書ページ

内容

改善措置

契約書の日付について

指摘6

120

 契約書を確認したところ、契約日の記載がなかった。
 契約書は、対外的に法律関係を明確にする書類として特に重要であるため、金額の大小にかかわらず厳格に管理・運用される必要がある。
 市は、原因を究明し、同様の記載漏れが起こらないよう努めるべきである。

令和4年6月1日公表(PDF:118KB)
4 防災環境都市・仙台

 

項目

区分

報告書ページ

内容

改善措置

業務仕様書の記載誤りについて

指摘7

133

 業務委託契約の際に添付されている業務仕様書の履行期限が前年の日付になっていた。
 書類が適切に作成されていることを漏れなく確認する必要がある。

令和4年6月1日公表(PDF:126KB)
5 スポーツ振興

 

項目

区分

報告書ページ

内容

改善措置

業務委託仕様書の記載誤りについて

指摘8

148

 業務委託仕様書において、成果品である実施報告書の納期限が前年の日付になっていた。
 市は、書類が適切に作成されていることを漏れなく確認する必要がある。

令和4年6月1日公表(PDF:120KB)
補助金交付申請書について 指摘9 159  補助金交付申請書について、申請書の日付誤りがあった。
 市は、申請書が適切に作成されていることを確認する責任がある。
令和4年6月1日公表(PDF:116KB)
完了報告について 指摘10 168  委託仕様書や契約書において、完了報告書の提出が求められているが、作業時間を中心とした一部完了報告が12か月分提出されているだけで、全体的な完了報告は受け取っていない。現状の実務は、契約書の文言規定と一部乖離が生じており、妥当とは言えない。
 仕様や契約の趣旨を勘案し、適切な報告を求めるべきである。
令和4年6月1日公表(PDF:112KB)
6 観光促進

 

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