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更新日:2025年3月18日

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令和6年度包括外部監査結果報告書「交通局に関する財務事務の執行ならびに事業の管理について」

報告書全文(PDF:3,786KB) / 概要版(PDF:558KB)

包括外部監査の概要

1 監査の種類

地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の37第1項の規定に基づく包括外部監査である。

2 事件を選定した理由

公共交通は都市機能の維持と市民生活の質の向上に不可欠な役割を果たしている。仙台市においては、令和4年度に市バスが開業80周年、地下鉄が35周年を迎え、市民にとって必要不可欠な存在となっている。一方、人口動態の変化、労働環境の変化、環境問題、技術革新などの課題に直面している。特に、生産年齢人口の減少と少子高齢化は、乗車人員の減少と収益性の低下を招いており、新型コロナウイルス感染症の流行は公共交通への依存度を一層低下させ、これらの要因は、運賃収入の減少を招き、経営の持続可能性のリスクが高まっている。

具体的には、自動車運送事業(市バス)では、昭和55年度の乗車人員ピーク時の約3分の1にあたる令和元年度の3,757万人まで減少し、乗車料収入も半減している。これにより、平成19年度以降は純損失が続き、資金不足に陥っている。高速鉄道事業(地下鉄)も、東西線開業に伴う費用増加で平成28年度以降赤字が続き、企業債残高も多額に計上されている。令和4年度の損益は両事業とも赤字が続き、剰余金残高は高速鉄道事業で△92,561百万円、自動車運送事業で△7,168百万円となっている。令和4年度の他会計補助金は、高速鉄道事業には299百万円、自動車運送事業には3,367百万円が投じられている。高速鉄道事業においては、令和4年度の企業債残高が119,335百万円、他会計借入金が11,353百万円と多額に上り、返済も開始されている。かつ、高速鉄道事業の南北線に関しては、老朽化に伴い、施設の更新時期を迎えている。

これに対して、仙台市交通局は、「仙台市総合計画」を上位計画に、自動車運送事業と高速鉄道事業の厳しい経営状況に対応し、その持続可能性を確保するために、10年間の経営方針等をまとめた、「仙台市交通事業経営計画2021-2030(令和3~12年度)」を策定している。計画では、以下の「経営の基本方針」と「4つの戦略」を掲げて課題に対応するとしている。

「経営の基本方針」
【両事業共通】生産年齢人口の減少や新型コロナウイルス感染症の影響下でも、安全・安心を最優先にしながら、便利で快適なサービスを提供し、持続可能な公営企業を目指します。
【自動車運送事業】運行効率の低い路線の見直しと適正な運賃設定を通じて、中長期的な安定経営を目指します。
【高速鉄道事業】大規模な資本的支出に備え、投資の選択と集中を行い、増客・増収を図りながら、中長期的な安定経営を目指します。

「4つの戦略」
安全・安心の推進
快適なお客さまサービスの提供
まちづくりへの貢献
持続可能な経営の確保

公共交通は多額の欠損金と企業債を抱え、少子高齢化の進行と共に市民の足としての維持が課題となっており、今後も安心して、継続的に利用できるのかといった観点などから市民の関心も高く、他地域でも活発に議論されているテーマである。

過去には高速鉄道事業が平成14年度、自動車事業が平成11年度及び平成30年度に監査テーマとして取り上げられたが、経営環境は急速に変化している。このため、交通局の事業及び周辺事業を監査テーマとして選定し、財務事務が法規に則り、経済性・効率性・有効性を追求して執行されているか、事業が適切に管理されているかを検証することは、非常に有意義であると判断した。

 

外部監査の結果及び意見

(総論)

1 自動車運送事業について

自動車運送事業は、営業赤字が続き累積赤字が増加している。現在、市はコロナ禍後の経営環境に適応するための事業計画を策定しており、経営改善に向けた取り組みを予定している。このプロセスでは、合理的な事業計画に基づいた検討が必要であり、事業計画策定の基礎となる仮定を適切に設定することが求められる。市が交通局の努力だけでは業績の回復が難しいと判断した場合、公共交通が支える必要がある路線以外を全面的に民間に業務を譲渡することを選択肢として検討することも考えられる。市バスは市民の日常生活に不可欠であり、都市開発においても重要な役割を担っているため、健全な経営が望まれる。

2 減損会計について

会計上、経営状況が悪化している局面では、減損会計の検討が重要となる。減損の兆候の有無を検討し、減損の兆候が認められる場合には、減損の認識の判定以降の検討過程を、第三者に対し客観的に説明できるよう整理するとともに、減損損失に関する注記をもれなく記載することが重要である。

3 その他の指摘事項について

その他の指摘事項として、決裁書の記載ミス、会計伝票の押印漏れ、金庫の鍵の引継ぎ漏れなどの事務的なミスがある。これらは表面上は単純なミスに見えるが、実際にはマニュアルの理解及び遵守意識が希薄であることが根本的な原因と考えられる。そのため、マニュアルの整備だけではなく、職員の意識改革を進めることが必要である。固定資産の実地照合が全ての資産に対して実施されていないことは、過去の包括外部監査で指摘されていた。しかし、所管部署は問題の本質を正確に理解しておらず、改善された業務指示に表面的に対応していたため、今回再度指摘される結果となったと考える。マニュアルに定められた手順・手続きがなぜ必要なのかを理解し順守する意識の醸成が求められる。

 

(各論)※指摘事項のみ抜粋

個別検出事項

 

1 自動車運送事業(市バス)
項目 区分 報告書ページ 内容 改善措置
期末日における固定資産の実地照合について 指摘 76

交通局財務課にヒアリングを実施したところ、仙台市交通局会計規程第百三十九条の二に従い、毎年2回、固定資産を管理している各所管部署から固定資産の実地照合結果を聴取しているとの回答を得た。各所管部署では台帳をもとに照合し、除却が必要な資産については回答書と固定資産除却報告書等を財務課に提出しているとのことであった。しかし、固定資産の実査時に担当者へ確認したところ、実際には、固定資産の台帳管理について期中の取得や除売却手続時の現物の確認を実施しているのみで、全ての現物を照合しているわけではないと回答を得た。すべての実地照合を実施していれば、上記意見(概要版PDFの7ページ参照)の営業所名が付された固定資産について、実際にある場所と名称が異なっていることについて、違和感をもったものと思われる。

実地照合の実施前に目的を説明し、実地照合を適切に運用することで規程が正しく運用されるよう徹底することが求められる。特に取得日が古い固定資産については除却洩れや紛失等のリスクが高いこと、固定資産の正確な貸借対照表計上額を担保する観点から、仙台市交通局会計規程にしたがい、固定資産の実地照合を適切に行う必要がある。

固定資産については多額の資金を投じて購入している財産であり事業存続にとって計画的な更新や使用状態の把握は必要不可欠である。このため各課が実施する固定資産台帳と現物の照合については毎年度全件実施すべきである。また、各所管課で照合を行った結果については財務課が照合した固定資産台帳を入手し結果についてモニタリングを実施すべきである。

 

 

2 高速鉄道事業(地下鉄)
項目 区分 報告書ページ 内容 改善措置
駅務室大金庫の鍵の保管及び引継ぎについて 指摘 103

駅務員の交代時において、大金庫の鍵の引継ぎが適切に行われておらず、前任者が鍵を書類に挟んだまま保管ボックスに収納していない状態で机上に放置し、後任者が鍵の所在が分からない状態であった。大金庫の鍵が適切に管理されていないことは、鍵の紛失や現金の盗難、横領のリスクを高めることになる。また、現金の回収担当者は複数の駅を巡回し回収を行うため、他の駅の業務遅延につながる可能性がある。
大金庫の鍵の管理及び引継ぎにおいて、鍵を保管ボックスに入れ、目視で確認するという運用上のルールを徹底されたい。また、その遵守状況について駅務サービス課職員による定期的なチェックを行うことが望ましい。

 
決裁書の記載について 指摘 110 閲覧した決裁書につき、起案番号の記入漏れや、同じ決裁であるにも関わらず保存種別が異なっており、誤った保存期間の記入がなされていた。決裁書は交通局の活動を記録し保存する重要な書類であることから、記載事項については漏れや誤りがないよう、慎重に対応すべきである。
なお、現在は決裁システムが導入されており、起案番号については自動採番になっているため起案番号記入漏れは防止できると考えるが、保存種別については選択制になっているため、選択誤りの発生する可能性がある。よって、入力に際し保存種別を確認したうえで誤りがないよう入力するとともに、決裁者が誤りを見逃さないよう留意して決裁すべきである。
 

 

3 共通事項
項目 区分 報告書ページ 内容 改善措置
減損会計の検討について 指摘 121

地方公営企業法施行規則では、減損損失を認識しなくとも、減損損失を認識するに至らなかった理由も記載することとなっており、財務諸表利用者が早期に減損損失のリスクを把握することが可能となっている。高速鉄道事業においては、遊休状態にあった資産があるにも関わらず、また、自動車運送事業においても、業務活動から生じる損失が継続しており、業務活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスという減損の兆候の例示に該当する状態であったため、減損兆候の判断には、より慎重さが求められると考える。減損の兆候が認められる場合には、減損の認識の判定以降の検討過程を、第三者に対し客観的に説明できるよう整理するとともに、減損損失に関する注記をもれなく記載することが重要である。

 
会計伝票の押印漏れについて 指摘 124

3月分及び決算関連の会計伝票綴りを閲覧した結果、押印が必要な財務課長、会計係長の押印がなかった会計伝票が散見された。決算関連の振替伝票は財務課長決裁が必要であり、押印が漏れている場合には後日決裁されていることが第三者からは確認できないため確実な押印が必要である。また実際に確認が漏れている場合には、誤った会計処理が見逃されるおそれがある。起票した担当者が決裁を受けたことを確認し、押印漏れがあれば再度依頼することまで含めて確認を徹底されたい。

 

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