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更新日:2018年2月13日

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平成30年度施政方針要旨

平成三十年第一回定例会の開会にあたり、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べます。

未来の仙台に住まう人々がこの時代を振り返ったとき、どのような時代だったと感じるのでしょうか。
新年度は、昭和から平成となり、仙台市が政令指定都市としてスタートをしてから三十年という節目の年となります。現在、我が国が直面している人口減少と高齢化は、地域や都市のあり様に関わる構造的な問題です。私たちは、発展か衰退か、都市の行く末を左右する分岐点におり、これまでの延長線上にはない、新たな課題解決の手法が求められています。
このような状況に直面する今、私は、このまちが立脚すべき原点を見つめ直すことが必要と考えます。仙台の原点とは何か。様々な現場を訪れ、多くの皆さまの声を伺いながら、考えてまいりました。そして、私が生まれ育ったこのまちの基盤は、「人を育み、成長する、品格と強さを兼ね備えたまち」という自然的、精神的な風土にあるのではないか、と思い至ったのです。
「杜の都」の呼び名は、藩祖伊達政宗公の先駆的な植樹政策に端を発しています。城下町の樹木は空襲により壊滅的な被害を受けましたが、戦災から再生する中で植樹された定禅寺通や青葉通のケヤキ並木は、今も市民の心の拠り所となっています。戦後の急速な経済成長の中においても、広瀬川をはじめとする美しい自然と生活環境をひたむきに守り、百万人を擁する政令指定都市として前進してきました。そして、あの東日本大震災からも敢然と立ち上がり、復興のシンボルとして東部沿岸地域の緑の復活に取り組んでいることも特筆すべきことです。
厳しい状況の中にあっても、このまちをより美しく、より強く再生していく市民の意思と力。これは政宗公のまちづくりにおける先見性や文化性が息づく仙台の風土が育んできたものであり、それこそがこのまちを支えてきた原点、仙台のシビック・プライドであると、私は確信するものです。
自ら課題解決に関わり、仙台の明日を切り拓いていきたいという市民のマインドを高めていくこと。そして、人が暮らし、活躍する器としてのまちの姿が市民の意思により魅力的に再構築されていくこと。この二つが生み出す相互作用こそが、まちが輝き続ける鍵となるものと考えます。
このような観点から、第一のポイントである「人」について私が力を入れたいことは、未来を担う子どもたちを取り巻く環境づくりです。子育てや教育、就業支援体制を整えるとともに、人生のあらゆるステージにおいて人を育て、支えながら、そこで育まれた力がまちの活力につながっていく、そのような好循環を目指します。
今後、さらに複雑化・多様化する地域課題の解決には、それぞれの地域特性に沿った対応が必要となります。地域の最前線である各区、総合支所と本庁が一体となって多様な主体の力を結び付け、線から面へと広げられるよう、困難な課題へのチャレンジを積極的に支援してまいります。
もう一つのポイントは、都市が発展し続けるためのデザインです。私は、その方向性もこのまちの風土に求めるべきと考えます。緑豊かな美しい街並みに加え、コンパクトな中に整然とした都市機能が備わる「快適で上質な都市空間」は、本市の誇るべき特性です。定禅寺通をはじめとする公共空間の利活用や、都心の再構築、市役所本庁舎や音楽ホール整備の検討などについても、このまちの特性を基盤としながら、市民の皆さまとともに新しい息吹を吹き込むことで、持続的な活力と交流を生み出します。
このような考えのもと、新年度の主題を「人とまちがともに育つ、新たな杜の都に向けて」と定め、議員各位はもとより、百八万市民の皆さまとともに、未来を目指して確かな一歩を踏み出してまいります。

施策の第一の柱は、「人を育み、人がつながるまちづくり」です。
市民お一人おひとりが仙台の未来を創る一員であるという意識を育み、その想いを高めていくことが、まちづくりの推進力となります。
そのためにも、子どもたちが健やかに育ち、学びながらこのまちに愛着を抱き、将来への希望を膨らませることができる環境づくりに力を注いでまいります。
まず、新年度には、中学二年生を対象に三十五人以下学級を拡充いたします。併せて、特別支援教育指導補助員や不登校学校訪問相談員など教育現場における人員体制の拡充等を図り、子どもたち一人ひとりに目配りができる体制を整えるとともに、教職員の負担軽減に資する施策を進めてまいります。
次に、喫緊の課題であるいじめ防止については、教育環境の改善と併せ、子供未来局に関係機関との円滑な連携を図る「いじめ対策推進室」を設置し、施策の総括と客観的な検証などにスピード感をもって対応します。また、いじめ相談専用電話に加え、SNSの活用により相談体制の充実を図るとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる支援体制を強化し、いじめの早期発見、早期対応につなげます。
切れ目のない子育て支援の充実に向けましては、出産間もない時期における産婦の健康診査への助成と併せて、育児不安を抱える産婦に対して、医療機関等で心身のケアや育児指導を行う産後ケア事業を開始し、安心して育児ができる環境づくりに努めてまいります。さらに、不妊に悩む方の特定不妊治療費の負担を軽減するため、独自に助成を拡充いたします。
平成三十二年度末までの待機児童解消を目指し、私立保育所等の整備など保育基盤の強化に取り組むとともに、保育士等の研修受講に際しての助成や若手職員への処遇改善策など、従事者の資質向上、人材確保を図ります。
また、全ての児童発達支援センターに専門の相談員を配置するとともに、アーチルと連携しながらアウトリーチ型の相談支援等を強化することにより、発達に不安を抱える就学前の児童やその家族への支援体制を整えます。
幼児期の教育・保育につきましては、「(仮称)仙台市幼児教育の指針」を定め、幼児教育の充実に努めてまいります。また、仙台自分づくり教育を推進し、子ども体験プラザをはじめとする職業体験活動等を通じて、子どもたちの職業観、人生観の形成につながる取り組みを進めます。
子どもの貧困対策については、「(仮称)つなぐ・つながる仙台子ども応援プラン」のもと、放課後における小中学生への学習・生活支援や高校生の中途退学防止への取り組みに加え、いわゆる子ども食堂への助成などを行い、地域で子どもたちを支える機運を醸成いたします。 
また、高齢者や障害のある方々が地域の中で生きがいを持って活躍できる施策も進めてまいります。
地域包括ケアシステムの構築とともに、健康寿命の延伸や交流の場づくりなどに取り組む自主グループへの支援、就労や社会参加に向けた広報などを実施し、元気な高齢者を活躍の場へつなげるよう関係機関と連携してまいります。
介護業界における人材不足に対しては、本市が培ってきたネットワークを活かし、業務の効率化やニーズに合ったサービスの開発につながるよう介護とICT分野の連携を加速させます。
障害のある方が自立した生活を送ることができるよう、ジョブコーチの増員により、障害の特性に応じた業務の掘り起こしや事業者と求職者の相互理解を深める取り組みを強化し、就労の定着につなげます。
これからの地域づくりにおいては、地域にお住まいの方々の発想をより活かすための手法、さらなる協働の進め方について、考えていく必要があります。
各区中央市民センターの体制強化により、市民センターと区役所等の連携を促進し、地域を担う人材の育成などコミュニティの力がより一層発揮できる環境を整えてまいります。
各種支援制度と先進事例等をワンストップで紹介するポータルサイトの構築や地域間の交流会の開催などにより、地域課題解決への糸口となるような取り組みを幅広く共有し、担い手の輪を広げます。
郊外地域におきましては、「郊外住宅地・西部地区まちづくりプロジェクト」など、地域発のアイデアを活かした取り組みを進めます。
未来に向けた地域のあり様を考える上で重要な地域交通の確保に関しましては、庁内横断的な連携体制を整え、運行計画策定や実証実験費用への助成など、地域における検討を実践につなげるための新たな支援を実施します。
市民生活における安全安心の確保に向けては、自転車の安全利用に関する条例の策定を進めるとともに、市中心部での客引き対策として、街頭啓発活動の強化と併せ、関係団体等との協議を進めながら規制条例の制定に向けた検討を本格化させてまいります。

新年度における第二の柱は、「まちを育む、活力デザイン」です。
藩政時代から続く都市の風格を保ちつつ、東北の発展を担う中枢性を高めるためには、発想の新鮮さに加え、歴史の積み重ねの上に立つ文化性を意識しながら、持続的に活力を生み出す都市基盤を創り上げる必要があります。
このような考えを踏まえ、都市空間形成の指針となる都市計画マスタープランの改定に着手します。とりわけ、仙台・東北の顔というべき都心部においては、東北の玄関口にふさわしい都市空間を形成し、にぎわいの創出が図られるよう、エリア特性を高めるまちづくりを公民連携で進めてまいります。
定禅寺通の活性化や青葉山公園の(仮称)公園センター整備事業は、新たな杜の都の物語を紡ぐ重要な鍵となります。検討段階から地元関係団体や市民の参画をいただきながら、未来へ誇れる資産となるよう取り組みを推進してまいります。
榴岡公園の管理運営に民間活力を導入し、市民に親しまれる新たな公園の魅力を引き出すほか、豊かな暮らしを育む緑の多機能性、自然風土や歴史といった都市個性を強く意識しながら、緑の基本計画の改定作業を進めます。
楽都の拠点となる音楽ホールの整備について、機能や立地場所などに関する検討を進めるとともに、本市のシンボルとなる市役所本庁舎の建て替えに向けた基本計画の策定に着手いたします。
都市が持続的に発展していくためには、地域経済基盤の強化が必須であり、新年度には、仙台の経済成長に向けた新たな方針を定めます。
「東北放射光施設計画」は、学術研究面のみならず、多大な経済波及効果をもたらすものであり、その実現に向け、独自に支援制度を創設することにより、将来における研究開発機関の開設などにつなげてまいります。
本市経済の中核をなす中小企業には、優れた事業開発能力を有する外部人材の活用や、販路開拓につながる仙台ならではのブランド構築を支援するなど、新たな事業展開へのチャレンジを後押しいたします。
経営者の高齢化に伴う事業承継については、後継者育成のための経営スクールや関係機関とのネットワークを活かした個別のコンサルティングを通じ、事業継続に向けた支援を実施します。さらに、四方よし企業大賞や若者の地元就職に向けた効果的な情報発信などにより、人材の確保と定着に努めてまいります。
農業基盤の強化に向けましては、生産性向上や集落のコミュニティ維持のため、宮城地区内において、ほ場整備事業を進めます。また、組織マネジメントや販売戦略の研修などにより、認定農業者等の経営力の向上を図ります。併せて、国際基準の生産工程管理に係る認証取得等の支援、食品関連事業者等との連携を通じたブランド化の推進により、地元農産物の価値を高める取り組みを進めます。
本市が注力する起業支援におきましては、東北全体の人材育成を見据え、ビジネスの成長に向けた集中プログラムを実施し、仙台発東北全域への起業家輩出の流れを加速させてまいります。
G20関係閣僚会議の誘致は、国際コンベンション都市・仙台のプレゼンス向上にとどまらず、東北のインバウンドの拡大に資するものであり、私自身、国等へ積極的に働きかけ、実現に向け全力で取り組みます。このほか、東北の魅力発信拠点の活用に加え、各地の観光案内所をつなぐネットワークの拡大により、東北の観光復興を牽引いたします。
東京オリンピック・パラリンピックに向けましては、開会式等への「東北絆まつり」の参加を目指し、プロモーション活動を行います。また、事前キャンプの誘致を目指すイタリアとの交流事業、障害者スポーツの体験会やシンポジウムなどにより、残り二年と迫る開催に向け、機運を高めてまいります。
本市を訪れる方々が仙台ならではの魅力に触れることができますよう、バーチャルリアリティ技術を活用し、大手門や芭蕉の辻などの歴史的風景を再現するほか、デザインマンホールや仙台版図柄入りナンバープレートを導入するなど、伊達の息吹が感じられる取り組みを進めます。

第三の柱は、「次代へつなぐ、防災環境都市推進」です。
このまちの豊かな環境と高い防災力は、市民の皆さまが主体となって育んできた大切な資産です。良好な都市環境づくり、そして、残された復興事業の完遂と「仙台防災枠組」の実践に力を尽くし、防災環境都市・仙台を内外へ、未来へと届ける使命をしっかりと果たしてまいります。
震災を経験していない子どもたちが増える中、様々な教訓や復興への想いが確かに受け継がれるよう、震災遺構荒浜小学校や、せんだい3.11メモリアル交流館の校外学習における積極的な活用などにより、仙台ならではの防災の担い手づくりに取り組みます。
また、多様な主体による防災・減災活動の促進に向け、仙台防災未来フォーラムを開催するとともに、国家戦略特区の活用を視野に入れ、災害対応への実用化を想定したドローンの実証実験を行うなど、市民、企業一丸となって都市の防災力を高めてまいります。
震災の記憶と経験を伝える新たな拠点として、市中心部におけるメモリアル施設に関する有識者委員会を立ち上げ、検討を進めるほか、荒浜地区の住宅基礎群について、震災遺構としての整備を進めます。
市民や事業者との協働による、杜の都の環境づくりに向けましては、生活ごみの減量・分別をより一層推進するとともに、事業ごみの指導啓発を充実させてまいります。
温室効果ガスの削減については、パリ協定を踏まえた本市の削減目標の達成に向け、事業者を対象としたアクションプログラムの検討に着手するとともに、石炭火力発電所の稼働を受け、仙台港周辺における監視体制を強化いたします。
さらに、かさ上げ道路と津波避難道路の完成を目指すほか、集団移転跡地の利活用や蒲生北部地区への産業集積など、東部地域に新たな活力を生み出す取り組みを推し進めてまいります。また、心のケアを含む健康支援や孤立の防止に向けたコミュニティ活性化支援に引き続き取り組むとともに、復興公営住宅の家賃負担に対する入居者のお声も踏まえながら、被災者の方々に寄り添った復興を進めてまいります。

最後に、市役所改革の推進についてです。
今後の人口減少や、複雑で広範な都市課題に的確に対応していくためには、課題に向かう職員の心構えや取り組み方についても変えていかなければなりません。
現場に足を運び、課題を肌で感じながら、地域の方々とともに解決の糸口を見出していく「現場主義」。先例に学びつつも知恵を絞り、新たな発想で道を切り拓く「創例主義」。これらを職員全員で共有することが、今後、一層強く求められると考えます。
このような職員の意識改革を進めながら、事務事業の不断の見直しや効率的・効果的な行財政運営を行うことにより、持続可能な都市経営に向けて取り組んでまいります。
市役所の出身ではない私だからこそ、見えてくる改善点もあります。自らが先頭に立って、市役所改革を力強く推し進めてまいります。

私は、このまちに住む未来の人々に、今の時代が震災を乗り越え、「新たな杜の都」に向けて力強い一歩を踏み出した節目の時であったのだと振り返っていただきたいと思います。未来へのつなぎ手はもちろん、市民の皆さまお一人おひとりです。
人口減少がもたらす課題への挑戦は長きにわたることとなりますが、決してその歩みを止めてはなりません。
そのような決意のもと、新年度には、仙台の新たな羅針盤となる総合計画の策定に着手いたします。変化が激しさを増す時代環境に対し、連綿と受け継がれてきた誇りと伝統を胸に、市議会の皆さま、市民の皆さまとともに、果敢に取り組んでまいります。

以上、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べてまいりました。
議員各位及び市民の皆さまのご理解ご協力を心からお願い申し上げます。

仙台市長 郡 和子

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まちづくり政策局政策企画課

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