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更新日:2025年2月7日
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令和7年第1回定例会の開会にあたり、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べます。
「まちの中心はひと」。ひとが輝くことでまちは躍動し、多くの人を惹きつける。市長就任から私の変わらぬ思いです。
人口減少が進む東北の現状に風穴を開け、社会の閉塞感に立ち向かう。従来の制度や仕組みにとらわれない、自由で創造的なチャレンジが必要です。
性別、年齢、国籍、障害の有無などにかかわらず、誰もが自分らしく活躍し、多様な発想が掛け合わされ、イノベーションにあふれる。「仙台に暮らしてよかった」と思えるまちづくりを進めたいと考えます。
このまちの未来を担うのは、こどもや若者です。
こどもが伸び伸びと成長できる。若者が持つ自由な発想と挑戦を後押しする。仙台で子育てしたい、学びたい。そうした思いに応える「子育てが楽しいまち・仙台」の実現に力を尽くします。
こどもへの応援の第一は、学びの環境です。
デジタルネイティブと言われるこどもたちは、瞬時に世界とアクセスします。インバウンドの拡大や東北大学の国際卓越研究大学の認定など、世界との距離はさらに近づきます。
仙台のこどもたちに、早くから多様な価値観に触れ、柔軟な思考を身に付けてほしい。確かな学力を基本としながら、本市初となる独自の教育課程として、小学校・中学校で一貫して学ぶ、英語を核とした新たな教科の設置に着手するとともに、ALTを全小学校へ段階的に配置します。
こどもたちがしなやかにたくましく自己実現を図ることができる、「学ぶなら仙台」と実感いただける教育環境づくりに向け、新たな一歩を踏み出してまいります。
こどもの遊びは成長そのものです。
こどもは遊びの中で自然や友達と触れ合い、生きる力を身に付けます。杜の都と呼ばれる本市は、海にも山にも近く、多くの公園を有しており、こどもたちの五感を刺激する遊びの宝庫です。市民協働によるプレーパークの取り組みも進んでいます。
都心にあって、清流・広瀬川に面し、豊かな自然の中でこどもたちが思い切り遊べる西公園。新年度、本市の特性を生かし、広瀬川の活用も視野に入れながら、この場所への屋内遊び場整備に着手します。
子育て家庭を社会全体で応援したい。
こどもたちの健やかな成長を支えるため、令和8年度から子ども医療費助成の一部負担金を廃止するとともに、対象を18歳まで拡充します。
また、若い世代が結婚や子育てを前向きに捉えることができるよう、出会いの場の提供やライフデザインセミナーの開催、出産後の母親が温泉等でリフレッシュできる産後ケアモデル事業を展開します。
若者の活躍はまちに新風を吹き込み、活力を創出します。その思いから若者のスタートアップ支援に力を注いでまいりました。この間、創薬や宇宙産業など世界への進出も視野に入れた大学発ベンチャーが誕生しています。
「グローバル・スタートアップ都市・仙台」。学都の知の力を生かし、スタートアップを新たな成長エンジンにする。そのため、海外を見据えたワンストップ窓口の開設や、共創と協業の場となるウェットラボの整備など、現場のニーズに応えながら、起業から海外での活躍までシームレスに支援します。
国内初となる「MCR2030レジリエンス・ハブ」の認定。観光レジリエンスサミットの開催。これらの国際的な評価は、東日本大震災以降、地域、企業、NPO、研究機関など、多くの皆さまと積み重ねてきた取り組みの成果です。
日々進化するデジタル技術を活用し、課題先進地・東北の未来を切り開く。これまで進めてきたオンライン診療や自動運転などの取り組みも注目を集めています。
仙台防災枠組の採択都市として、また、学都の資源を生かしたスマートシティとして、世界に向けた発信や国際会議の誘致など、本市の都市ブランドを強化してまいります。
来訪者の心が躍り、市民も楽しめる「観光都市」へ。
漫画・アニメ、ゲーム、スポーツ、エンターテインメント、震災復興など、新たな観点からのツーリズムを創り出す。「仙台市観光戦略2027」に基づき、思い切った規制緩和も視野に入れながら、宿泊税を最大限活用し、「攻めの観光」に取り組みます。
「仙台はじまりの地」青葉山。
開府以来、連綿と受け継いできたこのエリアの象徴として、政宗公没後400年となる令和18年の大手門復元を目指し、基本構想を策定します。
東日本大震災において、音楽は私たちに希望を与え、復興の大きな力となりました。市民の皆さまとともに進めてきた「楽都仙台」のシンボルとして、また、音楽とまちに刻まれた震災の記憶が響き合う災害文化の発信拠点として、世界に誇る音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設の設計を進めます。
政宗公による慶長遣欧使節団の派遣、東北大学における日本初の女子学生の誕生、全国に先駆けたバリアフリーなど、本市は多様性を受容してきた懐の深いまちです。
こうした風土を生かし、「ちがい」が尊重され、多彩な考えや才能が出会うことで新たな価値を生む。人は支え合う存在であるというケアの視点から、誰もが居場所のあるまちづくりを進める。
全ての人が安心して住み続け、活躍できる仙台らしいダイバーシティの推進により、「世界から選ばれるまち」を目指してまいる所存です。
以上の考えのもと、新年度、「多様なひとの力が生きるまち」、「こどもたちが健やかに育つまち」、「ひとが輝く舞台となるまち」の3つを柱に据え、市議会をはじめ、市民の皆さまとともに、各般の施策を推し進めてまいります。
施策の第一の柱は「多様なひとの力が生きるまち」です。
今年度策定するダイバーシティ推進指針を本市施策に織り込むとともに、市民への周知啓発を図ってまいります。
外国人の方が安心して仙台での暮らしを始められるよう、都心部に外国人住民登録の特設窓口を設置するとともに、生活環境に関する全数調査の実施や、大学と連携した留学生との地域交流を促進するイベントを開催します。
さまざまな属性を持つ人が生き生きと暮らし、地域の担い手としても活躍できるよう、若者や外国人などが参加する町内会活動の事例集を作成するとともに、高齢者のボランティア活動に応じて商店街で使用できるアクティブシニア・ボランティアポイント制度を開始します。また、敬老乗車証が利用できる交通機関拡大に向けた実証実験を行います。
あらゆる人が孤立せず、安心して暮らせる地域社会の実現に向けて、高齢者や障害者など避難行動要支援者に係る個別避難計画の作成や、総合防災情報の音声読み上げアプリを導入し、災害発生時の速やかな安全・安心の確保につなげます。
ひきこもりの方に心理職によるカウンセリングの機会を提供するとともに、精神医療につながっていない方などに対して医師等のチームによるアウトリーチ支援を行います。また、ヤングケアラーへの支援として、その認知度向上に向けた啓発や、家事などの代替サービスの提供による当事者の負担軽減を図ります。
重度障害児者施設の開設費補助の拡充や、医療的ケアが必要な方を対象とした非常用電源の購入費補助を行うほか、認知症の方が希望を持って暮らせるよう、関係者が連携し支援する体制を構築します。
支える側と支えられる側という一方向の関係性だけでなく、ケアする人もまたケアされる支え合いの視点を地域全体に広げ、誰もが取り残されない共生のまちづくりを進めます。
施策の第二の柱は「こどもたちが健やかに育つまち」です。
切れ目のない子育て支援として、就労要件を問わず利用できる保育施設等を拡充するとともに、SNSを活用した子育て情報の発信や、育児に不安を抱える世帯へ育児ヘルパーを派遣します。
こどもたちが安心して自分らしく育つ環境づくりに向けて、こども食堂をはじめとする多様な居場所づくりを進めてまいります。また、困難を抱える家庭の小学生を支援するサードプレイスを増設するとともに、始業前の時間に、学校施設で学びや体験活動ができる居場所を開設するモデル事業に取り組みます。
こどもたちが市の政策形成に主体的に参加できる「(仮称)こどもいけん広場」を、仙台こども財団と連携しながら実施します。
いじめへの対応や、不登校児童生徒に寄り添った支援として、いじめ対策支援員を拡充するとともに、在籍学級外教室「ステーション」の設置校を小中学校ともに拡大します。
教職員の働き方改革を進め、より児童生徒一人ひとりに合った教育活動ができるよう、部活動の地域移行の検討や学校版BPRに取り組みます。併せて、教職員向けの巡回型カウンセリングや複数の教員が協働して学級担任を担うチーム担任制を導入するとともに、副校長・教頭マネジメント支援員によるサポート体制を拡充します。
施策の第三の柱は「ひとが輝く舞台となるまち」です。
従来の手法にとらわれない「新たな仙台観光」を目指し、秋保大滝展望台の整備や、インバウンド向けの宿泊促進キャンペーン、欧米豪を対象とした海外プロモーション、大河ドラマの誘致に取り組みます。
大阪・関西万博に東北絆まつりを出展し、六市が連携した東北周遊観光を推進してまいります。また、7月に開館する仙台市アリーナを積極的にPRし、スポーツなどのイベントを誘致します。
地元企業にとって人材確保は喫緊の課題です。
結婚や出産といったライフステージの転機を捉えたUIJターンを促進するとともに、多様な人材が能力を発揮できるダイバーシティ経営を支援します。
性別、年齢などの「ちがい」を新たな技術開発やサービスにつなげるジェンダード・イノベーションに取り組むほか、大学と連携した企業誘致、産業用地整備に向けた基本戦略の策定、台湾企業とのビジネス機会の創出を図ります。
食料の安定供給や景観形成など多面的な役割を果たす農業分野については、アグリ経営アドバイザーの派遣やスマート農業機械の導入支援を通じ、生産性・収益性向上につなげる「稼げる都市農業」の実現を目指します。
本市の特性を生かした地域の魅力創出にも取り組みます。
都心は経済・交流活動の中心であり、人々の多彩な活動の舞台です。新本庁舎や定禅寺通、勾当台公園の再整備、都心再構築プロジェクトを推進し、公民連携により仙台駅周辺エリアにおける新たなまちづくりの協議を加速させてまいります。併せて、一番町四丁目商店街における夜間集客イベントによる賑わいづくりなど、国内外から人が集い楽しめるまちの実現を目指します。
脱炭素先行地域として既存建築物の省エネ・ZEB化を支援するとともに、新築建築物への太陽光パネル設置等の制度化を進めます。また、家庭や飲食店における食品ロス削減など資源循環に取り組みます。
開園150周年を迎える西公園記念事業を実施するとともに、海浜エリアでは、周遊イベントの開催や貞山運河の利活用を図ります。長町地区における歩いて楽しい街並み形成や、泉区役所建替えを契機とした泉中央地区の活性化について、地域の皆さまとともに検討を進めます。
安全・安心の確保は、ひとが輝くまちづくりの基盤です。
長町-利府線断層帯地震における火災防止に向けた取り組みを始めるほか、マンホールトイレの整備や簡易ベッドの配備により、避難所における環境改善を進めます。
救急搬送の増加に対応し、受入病床を確保するため、市内病院間の連携を強化するとともに、救急隊から伝達する情報をデジタル化し、搬送時間の短縮を図ります。
引き続き、東日本大震災で被災された皆さまに寄り添った支援を行うとともに、能登半島地震の復旧・復興支援に取り組みます。
市民生活を支える都市インフラについては、令和8年度に供用開始予定の南小泉茂庭線宮沢橋工区などの幹線道路を整備するとともに、仙台駅西口地区の浸水対策工事を進めてまいります。
公共交通の利便性向上を図るため、福田町駅周辺の施設整備や、南仙台駅における改札口の増設に向けた調査を行うほか、地下鉄におけるクレジットカードのタッチ決済導入を進めます。
ガス事業の民営化については、地域経済の活性化に資するよう引き続き取り組んでまいります。
最後に職員の意識改革と行政経営についてです。
国や自治体が取り組みを強化するDX。私は、トランスフォーメーション、変革こそが重要だと考えます。本市が目指すものは、ひとと市役所の関わりの変革です。
誰もが利便性を実感できる「ひと中心のデジタル化」。その実現に向け、民間インフラ事業者と実施する引っ越しワンストップサービスなど、市民お一人おひとりに寄り添った行政サービスを展開してまいります。
また新年度は、モバイル端末の導入による職員の働き方改革や区役所窓口業務のBPRを実施します。ワーク・ライフ・バランスを図りながら、暮らしの中で得た気付きを業務に生かす。効率化にとどまらず、従来の発想を超えて主体的に現場を変えていく。職員一人ひとりのチャレンジを求めます。
国では、産官学金による連携や好事例の横展開により、地域の潜在力を最大限引き出す地方創生に取り組むこととしています。
本市が主催している「TOHOKU DX GATEWAY」では、多くの自治体が集まり、前向きな地域課題解決の事例共有を図ってきました。地方創生の流れを追い風に、企業や大学が集積する本市の特性を生かしながら、東北の自治体と手を携え課題解決に取り組んでまいります。
人口減少などによりさまざまな制約が強まる中にあっては、多面的な効果を生む、まちや人への投資が必要です。本市が進める各種の大型プロジェクトは、防災や脱炭素、企業誘致や雇用創出、まちの賑わいなど、新たな投資や人の集積につながります。
このまちが、ひとが輝く舞台であり続けるため、仙台の未来を見据え、積極的に新たな一手を打つ。私自身、先頭に立って挑戦を続けてまいります。
以上、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べてまいりました。
先人が培ってきた仙台の歴史、文化を誇りとし、多様な人の力を掛け合わせながら、彩り豊かな仙台の未来につなげてまいる所存です。
議員各位及び市民の皆さまのご理解ご協力を心からお願い申し上げます。
仙台市長 郡 和子
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