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更新日:2022年10月28日

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ギャンブル依存を理解しよう

目次

  1. はじめに
  2. ギャンブル依存とは:”病的賭博”、”ギャンブル障害”といった精神疾患です
  3. ギャンブル依存症の症状
  4. なぜギャンブルにはまってしまうの?
  5. ギャンブルがもたらす社会的・心身的側面への悪影響
  6. 最近のギャンブル依存の傾向
  7. ギャンブル依存からの回復のためには
  8. ご家族も一緒に相談を
  9. ギャンブル依存の問題を抱える本人や家族等が利用できる機関

 1.はじめに

 依存症(嗜癖)とは、アルコールや薬物のような物質に対する依存(物質依存)と、買い物、窃盗などのある特定の行為に対する依存(行動依存)とに分類されます。「ギャンブル依存」は行動依存に分類されます。

 依存症の共通していることとしては、理性をつかさどる脳の一部分(前頭前野)の働きが悪くなり、「ギャンブルの刺激に対して過剰に反応してしまう」「やってはいけない状況でも、強い衝動を抑えられず、ブレーキが効かなくなる」状態になり、繰り返しギャンブルを行うことで「賭け金に対する感覚が徐々に麻痺してしまう」といった状態になります。

 国でも平成30年に「ギャンブル等依存症対策基本法」が施行され、地域レベルでの医療提供体制の整備、行政機関や民間団体による相談支援の充実が求められています。

 2.ギャンブル依存とは:”病的賭博”、”ギャンブル障害”といった精神疾患です

 ギャンブル依存症とは、ギャンブル等にのめり込んでコントロールができなくなる精神疾患の一つです。国際的な精神疾患の診断基準でも、”病的賭博”、”ギャンブル障害”として位置付けられています。

 ギャンブル依存症の特徴として、以下のようなことがあげられます。

コントロールの障害

  • 「お金がないから少しだけ」と思っていても、適当なところで切り上げることができず、結果的に借金をしてまでもギャンブルにのめりこんでしまう
  • これ以上ギャンブルをしてしまうと、家族や仕事にも多大な影響が及んでしまうことがわかっていても、ギャンブルを優先してしまう

問題の否認

  • ギャンブルで明らかに問題が生じているにも関わらず、自分の問題に直面しようとしない
  • 多額の借金などにより、家族や仕事などの社会的な問題が明らかになっていても、「いつでもやめられる」「次に勝ったらやめる」と、事態を過小評価している

周囲の身近な人を巻き込む

  • 本人にとって身近な人、特に家族が、借金の返済に奔走したり、事態に巻き込まれてしまったりすることが多い
  • 身近な人ほど悩んでしまい、ストレスを抱え、疲弊が強く生じてしまう

両価性の心理

  • ギャンブルの問題を抱えた人すべてが、「一生ギャンブルを続ける」と考えているわけではない。
  • 「快感が忘れられない」「勝つまでは絶対にやめない」と思う一方で、「生活が成り立たない」「家族や職場に迷惑をかけてしまう」といった気持ちも抱え、「やめたい」でも「続けたい」の間で揺れ動いている

 

精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-5)による診断基準の項目として

  • 興奮を得たいがために、掛け金の額を増やしたり賭博をする欲求がある
  • 賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる、またはいらだつ
  • 賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある
  • しばしば賭博に心を奪われている(例:過去の賭博体験を再体験すること、ハンディをつけること、または次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている)
  • 苦痛の気分(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い
  • 賭博で金をすった時、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)
  • 賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく
  • 賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、またはそれを失ったことがある
  • 賭博によって引き起こされた絶望的な経済状態を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む

といった項目があげられます。

(日本精神神経学会監修 DSM-5 精神疾患の分類と手引、医学書院)

 3.ギャンブル依存症の症状

ギャンブル依存症の症状としては、以下のような症状があります。

  • ギャンブルにのめり込む
  • 興奮を求めて掛金が増えていく
  • ギャンブルをしないと落ち着かない
  • ギャンブルをやめようとしてもうまくいかない
  • 負けたお金をギャンブルで取り返そうとする
  • 負けが続いても最終的には勝てると確信する
  • 負けたことはよく覚えていないが、勝ったことはよく覚えている
  • ギャンブルのことで嘘をついたり借金したりする など

また、ギャンブル等依存症の簡便なチェック方法として「LOST」というものがあります。

(※以下の4つの項目のうち、2つ以上あてはまったら、ギャンブル依存症の可能性があり

  • ギャンブルをするときは、予算や時間の制限を決めない、決めても守れない(Limitless)
  • ギャンブルに勝ったとき、「次のギャンブルに使おう」と考える(One again)
  • ギャンブルをしたことを誰かに隠す(Secret)
  • ギャンブルに負けたときにすぐに取り返したいと思う(Take money back)

[出典:田中紀子、松本俊彦、森田展彰、木村智和、病的ギャンブラーとギャンブル愛好家とを峻別するものは何か:LINEアプリ・セルフスクリーニングテストを用いた病的ギャンブラーの臨床的特徴に関する研究、日本アルコール・薬物医学雑誌、2018,53(6):264-282.]

 4.なぜギャンブルにはまってしまうの?

 ギャンブルに依存的になってしまう要因のひとつとして「快楽を求める」事があげられます。これには過去に大勝ちした経験が忘れられず、何度もその快楽を求めてしまうことがあります。

 もう一つは「日々の生活の中での嫌なことから逃れる(=現実逃避)」といった側面もあります。家族や職場などでの人間関係や、自信の満たされない気持ち、不全感・虚無感など、何らかの問題を抱えており、それによって生じた心理的ストレス・不快感を解消するためにギャンブルをしてしまいます。これは他の薬物やアルコールなどの物質依存の場合でも同様なことが言えます。

 5.ギャンブルがもたらす社会的・心身的側面への悪影響

ギャンブル依存により、以下のようなことに問題が生じてしまうことがあります

  • 多額の借金・多重債務を抱えてしまう
  • 犯罪に手を染めてしまう:ギャンブルをするための資金を得るために、窃盗や横領、詐欺などの罪を犯してしまう場合もあります
  • 人間関係が壊れてしまう:ギャンブルにのめりこみすぎるため、家庭や社会での役割を担えない、多額の借金返済を肩代わりしてもらってもなおギャンブルを続けるため信頼を失ってしまう、などこれまでの人間関係が破綻してしまう場合もあります
  • 精神疾患の併存のしやすさ:ギャンブル依存の方は、アルコールや薬物依存の問題やうつ病・躁うつ病などの気分障害などを併存しやすいです。また、ニコチン依存を抱えていることも多いため、結果として喫煙による身体への悪影響も懸念されます(しかし、アルコール依存と比較して明確な心身の症状が多くないため、問題に気づきにくく、治療動機の獲得しにくい点があります)

 6.最近のギャンブル依存の傾向

ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査(令和2年度依存症に関する調査研究事業より)
調査項目 調査結果
国民のギャンブル等※行動経験がある人のうちギャンブル等依存が疑われる割合 男性3.7%、女性0.7%(全体2.2%)
ギャンブル依存が疑われる人のうち過去1年間にギャンブルで使った金額 ひと月当たり5万円(中央値)(疑いのない人は、ひと月当たり1万円(中央値))
ギャンブル依存が疑われる人の心理面への影響 ギャンブル等依存がないと考えられる群よりも「抑うつ・不安が高い」「自死念慮」がある割合が有意に高い
家族や重要な他者にギャンブルの問題がある割合 14.4%(問題のある当事者は「父親」「配偶者」「兄弟姉妹」)
ギャンブル依存が疑われる人の家族等が受けた影響 「浪費・借金による経済的困難が生じた」「ギャンブル等をやめられない人に怒りを感じた」「家庭不和・別居・離婚を経験」など

※ギャンブル等:パチンコ・パチスロ・競馬・競輪・競艇・オートレース・サッカーくじ・証券の信用取引・先物市場への投資・FX・インターネットを用いたギャンブル・海外カジノなど

 7.ギャンブル依存からの回復のためには

「やめ続けること」

 いったん依存症の状態になってしまうと、行動にコントロールが効かなくなるので、「ギャンブルに費やす金額に上限を設ける」「ほどほどなところでやめる」といったことができなくなります。

 そのためギャンブル以外の「楽しい時間」「満たされる時間」をみつけながら、ギャンブルをやめ続けていくことが必要です

「一人で乗り越えようとしない」

 「自分で何とかやめられる」「強い意志があるから大丈夫」と思っていても、ギャンブルをやめ続けることは非常に難しい病気です。

 そのため、医療機関や精神保健福祉センターなどの相談機関に受診・相談しながら、専門家から適切なアドバイスをもらいながら回復に向かっていった方が、ギャンブル依存の問題を乗り越えやすくなります。

 加えて、ギャンブル依存の場合、多額の借金を抱えてしまう、返済に困っている、といった法的な問題もあることが多いですので、法律の専門家への相談も必要になってきます。

 また、依存症の問題を抱えた人同士が集まる「自助グループ」に参加して、同じ仲間とのミーティングや情報交換をしながら、回復に向かっていく方法もあります。

 いずれの場合であっても、様々な専門家や同じ仲間と「つながり」を作りながら、一緒に乗り越えていきましょう。

 8.ご家族も一緒に相談を

 ギャンブル依存の本人の影響を最も受けやすいのはご家族になると思います。いつもギャンブルにのめり込んでいる本人に対して「もうギャンブルをしないでほしい」といった心配する気持ちで、本人へ叱責する、本人が借金した所との調整をする、場合によっては借金を代わりに返済する、といった状況になることもあります。そのため、ご家族自身も疲弊し、精神的に参ってしまうこともございます。

 また、ご家族の対応が、本人の問題をかえって助長させてしまうことがあります。逆に家族の対応が変わることで、家族自身が健康的に過ごせるようになり、本人が回復に向かいやすくなります。

 したがって、ご家族も抱えている悩みなどを、相談機関の専門家と共有しながら負担を軽くするとともに、本人の回復につながるような正しいサポート方法を一緒に考えていくことが大切な対応になりますので、本人がなかなか相談につながらない場合は、ご家族だけでも、まずは相談することをお勧めします。

 9.ギャンブル依存の問題を抱える本人や家族等が利用できる機関

  • 医療機関:東北会病院(宮城県依存症専門医療機関・依存症治療拠点機関)
  • 相談機関:仙台市精神保健福祉総合センター(はあとぽーと仙台)
  • 自助グループ・民間の支援機関

 [当事者向け]

  GA仙台グループ・みやぎグループ

  ギャンブル依存症問題を考える会

 [家族等向け]

  ギャマノン

  全国ギャンブル依存症家族の会宮城

 

※相談機関の詳細は依存症関連の相談」、「ひとりで悩まず、まず相談を(相談機関等一覧)」のページをご覧ください。

お問い合わせ

健康福祉局精神保健福祉総合センター

仙台市青葉区荒巻字三居沢1-6

電話番号:022-265-2191

ファクス:022-265-2190