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更新日:2022年10月7日
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統合失調症は、全世界で共通して見られる、心の病気の中でも重要なものです。多くは思春期や青年期に発症し、決して稀な病気ではありません。一生のうちにこの病気にかかる人の数は、地域にもよりますが約100人に1人と言われています。
以下に、統合失調症の基本的な知識について解説いたしました。ぜひご覧いただき、理解を深めてください。
統合失調症は、全世界で共通して見られる精神疾患の一つです。多くは思春期や青年期に発症します。一生のうちにこの病気にかかる人の数は、地域にもよりますが、約100人に1人と言われています。決してまれな病気ではありません。
偏見や一部の偏った報道によって、統合失調症をはじめとする精神障害者が不必要に危険視されることがありますが、精神障害者の犯罪率がそれ以外の人に比べて高いという根拠はありません。不幸にしてまれに起こる事件に注目が集まることがありますが、多くの人は地域で普通に暮らしている一般市民です。むしろ、そうした偏見が精神科への早めの受診を妨げる、病気や障害の受容を難しくする、精神科の治療に対する意欲を削ぐことになるなど、病気の早期発見や再発の防止を妨げているとも言えます。また、地域での社会復帰施設整備への反対等により社会資源の整備が進まず、支援があれば地域で暮らせる精神障害者がなかなか退院できず入院が長期化しやすいといった状況もあると言われています。
世界各国で様々な研究が進められ、今では特有の症状を引き起こす「発症しやすさ」あるいは「病気へのかかりやすさ」が注目され、それを「脆弱(ぜいじゃく)性」と呼んでいます。脳の発症脆弱性が統合失調症の原因と考えられており、それは遺伝によるもの、妊娠や出産時の障害、社会的な環境によるもの、人格の発達過程など、多くの要因が関係しあって形成されると考えられています。
脆弱性には、脳の神経伝達物質(主にドーパミン神経系)の障害との関係が重視されており、その仕組みもかなり明らかにされています。現在は、この脆弱性と心身両面からのストレスとが関係しあって発病するという考え方(脆弱性-ストレス仮説)が最も広く受け入れられています。
統合失調症は、一般的に「前駆期」、「急性期」、「回復期」、「慢性・寛解期」という経過をたどり回復していくと考えられています。それぞれの時期の長さには個人差があり、必ずしも典型的な経過をたどるとは限りません。また、一旦回復しても再発しやすい面があることもこの病気の特徴ですので、再発予防が回復の大きなポイントになります。
急性期になると特に神経が過敏になり、情報を処理する上での障害が現れます。
健康な人の神経は、その時、その場面で必要な情報を選択する働きを持っています。例えば、騒がしい宴会場で近くにいる人と会話をする場面を想像してみましょう。実際には周囲の様々な雑音も、会話している相手の声も、同時に耳の中に入ってきています。脳の神経にはフィルターのように必要な情報と必要でない情報を分けて伝える働きがあり、健康な場合は、会話中の相手の声を選び取って集中して聞くことができるのです。
病気のために神経が過敏になるとこのフィルターに穴が開いた状態になり、情報を選び取る機能が働かなくなります。そうなると、必要な情報もそうでない情報も一緒になって頭に入ってきてしまい、以前なら気にもとめなかったような周囲の物音に敏感になったり、様々な出来事に特別な意味付けをして不安に陥ったりするようになります。このような情報の氾濫から身を守るための必死の対処として、本人が引きこもり状態になる場合があります。
薬を飲むことで過敏になった神経が本来の状態に回復すると、フィルターの働きも回復して周囲の状況を正常に見聞きすることができるようになっていきます。
統合失調症で見られる症状は様々で、一人の患者さんに全ての症状が出るとは限りません。また、病気の時期によって目立つ症状が異なるのも特徴です。以下に典型的な症状を挙げます。
異常な体験や感覚として現れる症状です。急性期に多く、回復期~慢性期に残存することもあります。これらの症状が強まると不安が高まり、夜も眠れず憔悴していきます。時には、妄想の対象となった人に苦情を訴えたりします。家族や周囲の人にとっては、本人が症状によって体験している異常な世界の意味が理解しにくく、戸惑うことが多くあります。
感情や意欲の面に見られる症状です。回復期~慢性・寛解期に多く見られます。日常生活や社会生活における、適切な会話や行動のしにくさとして現れます。陰性症状は「社会性がない」「常識がない」「怠けている」といった誤解を招きやすく、通常の人間関係に支障をきたすことがあります。
様々な治療法を組み合わせることが必要になってきます。治療によって、発症や再発を引き起こす要因と回復を促進する要因とのバランスを回復の側に近づけ、それを維持することを目指します。どの治療法を中心にするかは、その時々によって異なります。
「統合失調症は進行性の病気である」という誤った仮説が19世紀末に唱えられ、長年にわたって信じられてきました。しかし、20世紀後半以降に様々な研究が行われ、統合失調症が進行性の病気とは言えないこと、再発の可能性はあるが、多種多様の経過をたどり完全に回復する例も多いこと、経過が長くなるにつれて症状が安定する人が多いことなどの結論が得られています。
発症後40年までの経過を見ると、3分の1から3分の2の人が自立しているか、または誰かの力を借りながら社会生活を送っていることを複数の研究が示しています。
今後、薬物療法やリハビリテーションの進歩による医学的な回復と併せて、住居や障害福祉サービスなど、地域で支える仕組みの発展により、多くの方がごく普通の生活を送れるようになることが期待されます。
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