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更新日:2024年10月15日

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アルコールとのつきあい方にお悩みの方へ

目次

  1. はじめに
  2. アルコール依存症とは
  3. アルコール依存症の診断基準
  4. アルコール依存症の関連疾患
  5. アルコールと身体合併症
  6. アルコール関連問題のスクリーニングテスト
  7. アルコール依存症の治療
  8. アルコール依存症の回復過程
  9. 同じアルコール依存症でも・・・
  10. アルコール依存症患者と「否認」
  11. アルコール依存症患者の周囲の人とイネイブリング
  12. 相談窓口
  13. はあとぽーと仙台精神科デイケア「アディクション回復支援コース」のご案内

1.はじめに

平成25年に厚生労働省研究班がWHOの診断基準に基づき全国調査した結果、治療を受けていない人を含め109万人もの人が、アルコール依存症の可能性があることが分かりました。このうちアルコール依存症として治療を受けている患者数は、4~5万人であるとされています。アルコール依存症は誰でもなりうる病気であるにもかかわらず、相談や支援につながりにくい現状にあることがうかがわれます。

不適切な飲酒は、アルコール健康障害の原因になります。また、飲酒運転、暴力、虐待、自死等、様々な問題との関連も指摘されています。こうした状況を背景として、平成25年12月にアルコール健康障害対策基本法が成立し、平成28年5月には「アルコール健康障害対策推進計画(第1期)」が策定され、継続的な取り組みが行われています(第1期:平成28~令和2年度、第2期:令和3~令和7年度)。この動きを受けて、宮城県では、平成31年3月に「宮城県アルコール健康障害対策推進計画(第1期)」を策定(第1期:平成31~令和5年度、第2期:令和6~令和10年度)し、仙台市を含む県内全域の依存症関連問題対策に取り組んでいます。

2.アルコール依存症とは

適正にお酒を飲んでいた人が、次第に連続的にお酒を飲むようになり、アルコールに対して、精神的、身体的に依存するようになり、飲酒行動を自分ではコントロールできなくなる病気のことです。

お酒を飲みすぎることが問題だとわかっていても、飲まずにはいられなくなり、量も回数も増え、徐々に重症化していきます。症状が進行すると、二日酔いで仕事を休む、酒代のために借金をする、酔って暴力を振るうなどの問題が生じ、結果として、職場での信用を失ったり、経済的に困窮したり、家族関係が悪化したりするなど、日常生活の様々な場面で困りごとを抱えるようになります。

しかし、アルコール依存症は回復可能な病気です。回復に向けては、専門の医療機関や自助グループにつながることが有効です。また、家族をはじめ周囲の人のサポートがとても大切です。

アルコール依存症の経過

  • はじめは付き合いなど(飲酒のきっかけ)
  • 毎日飲むなど飲酒が習慣となる(習慣飲酒)
  • 酒量がエスカレートしてくる(耐性の増大)
  • 飲まないとイライラする(精神的依存)
  • 手指のふるえ、不眠、幻覚、せん妄などの離脱症状が出現(身体依存)
  • 不快な離脱症状を紛らわすために、再び飲酒する(連続飲酒)

このまま飲酒を続けると、家庭崩壊、社会的地位の喪失、生命の危機につながるおそれがありますので、早めの対応が重要です。

3.アルコール依存症の診断基準

WHOの国際疾病分類(ICD-10)によると、通常過去1年間のある時期に、次の6項目のうち3項目以上に当てはまる場合に、アルコール依存症と診断すべきであるとされています。

  • アルコールを摂取したいという強い欲望あるいは強迫感がある。
  • 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して、その行動をコントロールすることが困難である。
  • 飲酒を中止または減量した時の身体的離脱症状、離脱症候群の出現や、離脱症状を軽減するか避けるために飲酒することがある。
  • 耐性ができ、飲酒量を増やさなければ酔えない。
  • 飲酒のために、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになり、飲酒せざるを得ない時期や、酔いからの回復に要する時間が長くなる。
  • 明らかに有害な結果(たとえば、過度の飲酒による肝臓障害、アルコールを大量摂取した結果としての抑うつ気分など)が起きているにもかかわらず、依然として飲酒する。

4.アルコール依存症の関連疾患

アルコールは、大麻や覚せい剤などと同じ依存性薬物の一つです。
アルコールの作用はアヘンに似ていて、身体依存性が高く、離脱症状(以前は禁断症状と呼ばれていました)が激しいとされています。離脱症状とは、体内のアルコールが切れてくると(血中濃度が下がる)と、不眠、手指のふるえ、イライラ、幻覚などの症状が現れてくることです。アルコール依存症の症状が進行すると、このような不快な症状から逃れるために飲酒することがあります。依存が形成されると自分の意思のみでは断酒をすることが極めて難しくなります。

アルコール離脱症状

初期症状(離脱後およそ7~20時間)

  • 手指がスムーズに動かない
  • 手足のふるえ・発汗(特に寝汗)
  • 寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなどの睡眠障害
  • 嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状
  • 心悸亢進、高血圧などの循環器症状
  • イライラ、落ち着かない、不安等の精神症状
  • 体温上昇、寒気

進行した症状(離脱後およそ72~96時間)

  • 意識がもうろうとする
  • 小動物、虫、糸、天井が動くなどの幻視
  • 物音、人の声などの幻聴
  • けいれん発作
  • 錯乱状態

※これらの症状は4~5日でなくなることが多いですが、栄養管理や症状の抑制、合併症の管理などのため、入院治療が望ましいです。外来治療などで離脱期を家庭で過ごす場合は医師の指示に従ってください。

アルコールが原因の精神疾患

  • アルコール幻覚症(幻視、幻聴、被害妄想など)
  • 抑うつ状態(憂うつな気分や意欲がわかない)

回復困難なもの

  • ウェルニッケ・コルサコフ症候群
  • アルコール性認知症など

急性アルコール中毒

「イッキ飲み」は、アルコールの血中濃度を急激に上昇させます。「泥酔」「昏睡」状態になると中枢神経が麻痺し、呼吸困難など危険な状態を引き起こし、最悪の場合、死に至ります。

胎児性アルコール症候群

妊娠中の飲酒は、胎児に影響を与えることがわかっています。知能の低下、身体や臓器の発達障害、特徴のある顔つきなど「胎児性アルコール症候群(FAS)」と呼ばれる特徴を持って生まれてくる危険性が高まります。

5.アルコールと身体合併症

代表的なものとしては、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変などの肝臓障害があげられます。
肝臓障害に至る原因はいくつかありますが、アルコールの分解過程で作られるアセトアルデヒドという毒性の物質が、長期の大量飲酒によって徐々に肝細胞を害するためにおきます。また大量のアルコール摂取時には、多くの活性酸素ができるため細胞膜やDNAが酸化され肝障害が起こりやすくなります。多量飲酒者は栄養状態が悪いので、活性酸素を無害なものにするビタミン類が不足し、いっそう障害を受けやすくなるのです。
また、胃や十二指腸の障害、膵臓障害、中枢神経や末梢神経の障害など様々な身体合併症の原因となり、多くの生活習慣病を悪化させる原因ともなります。
アルコール問題の早期治療のために、健康診断などで、自身の健康状態を把握することが大切です。

消化器系障害

  • 脂肪肝
  • アルコール性肝炎
  • 肝硬変
  • 膵炎
  • 食道炎
  • マロリー・ワイス症候群(吐血)
  • 胃・十二指腸潰瘍

外科系障害

  • 突発性大腿骨骨頭壊死
  • 転倒事故やけんかによる外傷
  • 骨折しやすい

循環器系代謝障害

  • 高血圧
  • アルコール性心筋症
  • 糖尿病
  • 高尿酸血症
  • 脂質異常症

その他

  • インポテンツ
  • アルコール性弱視
  • 多発性神経症

6.アルコール関連問題のスクリーニングテスト

スクリーニングとは、簡便検査などを用いて、疾患の有無や程度の暫定的にチェックすることです。
ここではCAGEを紹介します。

CAGEスクリーニング・テスト

次の4問中2問に該当すれば、アルコール依存症の疑いが十分にあります。

  • あなたは自分の酒量を減らさねばならないと感じたことはありますか?(Cut down)
  • あなたは、他の人に自分の飲酒について批判され、困ったことがありますか?(Annoyed by criticism)
  • あなたは、自分の飲酒について、よくないと感じたり、罪悪感を持ったことがありますか?(Guilty feeling)
  • あなたは、神経を落ち着かせるため、または二日酔いを治すために、朝、真っ先に飲酒したことがありますか?(Eye-opener)

7.アルコール依存症の治療

アルコール依存症は、身体合併症を治療するだけでなく、精神科等での専門的な治療が必要です。
治療はおおむね以下のような段階を踏んで行われますが、終了するには数年の時間を要すると言われています。

アルコール離脱症候群の治療(主に入院。軽症の場合は医師の指示のもと外来でも可能)

お酒をやめて半日を経過したころから約一週間、発汗・微熱・手のふるえ・イライラ・不眠などの離脱症状(目次4参照)が現れます。離脱症状自体を治療するために薬物療法が必要になることもあり、症状を和らげるため安静を保ちます。

アルコールリハビリテーションプログラム(ARP)

患者に断酒の必要性を理解してもらうことと、その実現に必要な対処方法を学ぶことがARPの治療目的です。これらは集団心理療法、個人心理療法、認知行動療法、薬物療法(抗酒剤など)や家族指導などによって行います。これらの治療と並行して、合併症(肝臓障害などの内科疾患やうつなど精神的な疾患)の治療を行います。

アフターケア

リハビリテーションの延長であり、断酒を維持すると同時に家族の人間関係の改善、職場への復帰の安定化を図ることによって生活の質の向上を図ります。また、再飲酒を防ぐこともアフターケアの重要な課題の一つです。

8.アルコール依存症の回復過程

アルコール依存症から抜け出すために

いったんアルコール依存症になると、お酒を上手に飲むことは難しくなります。
専門医療機関への入院・通院・治療と並行して、自助グループへの参加が役立ちます。自助グループとは、「アルコール依存症からの回復」を共通の目標とする人たちがお互いを支え合い、励ましあって依存からの回復をめざす集まりで、「AA(Alcohoilcs Anonymous アルコホーリクス アノニマス)」や「断酒会」などがあります。

飲酒と治療の繰り返しの時期

  • 身体を壊しながらも、お酒を飲み続ける。
  • 治療中は禁酒するが、再飲酒をしアルコール依存症が進行する。

移行期(飲んで死ぬか!やめて生きるか!)

  • お酒のために起きた問題に直面する
  • お酒に対する敗北を認める
  • 専門治療に出会う
  • 診断を受け、治療が始まる

回復初期(どうやって飲まずに生きるか?)

  • 病気について学ぶ
  • 断酒の決心をする
  • 心身の不調を飲まずに乗り切る
  • 自助グループに出会う
  • 定期的な通院を続ける

回復中期(しらふの人生を創る)

  • 夫婦、親子関係の建て直し
  • 自助グループの役割を担う
  • 適切な仕事のペースをつかむ
  • 周囲との関係の建て直し
  • 健康的なライフスタイルを作る

発展期(自分を受け入れる)

  • 自分をいたわる
  • 人生の変化を受け入れる
  • 新しい価値観を見出す
  • 自助グループで初心に戻る

回復はこれで完了ということではなく、継続するプロセスです。

9.同じアルコール依存症でも

アルコール依存症は、性別、年齢、職業や社会的立場、学歴などに関係なく、飲酒者であれば誰でもなる可能性がある病気です。

年齢や性別による特徴は、以下のとおりです。

未成年者・若年者

  • アルコールは脳の神経細胞を破壊し、集中力、記憶力、学習能力の低下をきたします。
  • アルコールを分解する仕組みが未熟なため、アルコールの影響を受けやすく、アルコール依存症になりやすいです。
  • 性腺機能に影響し、インポテンツや生理不順になる可能性があります。
  • 心も体も成長過程にある大切な時期なので、今後の人生に悪影響を及ぼしかねません。

女性

  • 体質的に男性と比べ少ない飲酒量と飲酒機関でアルコール依存症になる可能性があります。
  • ライフイベント(恋愛、子育て、喪失体験や家庭内のストレスなど)の危機や性周期(月経に伴うストレスや閉経など)が飲酒問題のきっかけになることが多いです。
  • 10~20歳代の場合、摂食障害などと合併することがあります。

高齢者

  • アルコール代謝能力が低下し、依存症になりやすいです。
  • 退職してやることがなくなった、配偶者をなくして生きがいを失ったなど、寂しさや孤立感からお酒の量が増え、飲酒問題が表面化することがあります。
  • 認知症の症状も合併することがあります。

10.アルコール依存症患者と「否認」

アルコールに依存するようになっても「自分は他人と比べるとそんなに飲んでいない」「まだ、手がふるえないから大丈夫」などと、現実に起こっている問題を認めようとしないことが多くあります。
こうした心の働きを「否認」と言います。

さまざまな否認

  • 酒の問題に触れると、話をそらしたり無視する。
  • 事実を指摘すると「そんなことはない」と突っぱねる。時に、攻撃的に反論する。
  • 飲酒の問題をあれこれ探し、合理化しようとする。
  • 「社会人なら酒くらい飲めなければ」などど、自分のお酒の問題を一般論にすりかえる。

否認の背景

  • 自らの飲酒問題に向き合うことが不安なため。
  • 飲酒を継続するため(強迫的な飲酒欲求を含む)。
  • 離脱症状を抑えるため。
  • アルコール依存症に対する誤解や偏見のため(周囲の人々だけでなく、本人自身の中にも偏見がある)。

アルコール依存症患者が、自ら相談や病院に行くことはまれです。まずは身近な人々が病気について学び、正しい知識を持ち、適切に対応できるようになることが、回復への第一歩となります。

11.アルコール依存症患者の周囲の人とイネイブリング

アルコールによる問題は、飲酒者自身が苦しむだけでなく、家族や職場など周囲の人も巻き込んで進行していきます。家族をはじめ周囲の人々が心から本人を心配し、懸命に対応しても、状況は悪くなるばかりということもよくあります。そんなときは一度立ち止まり、それまでの対応を振り返ってみることで、回復につながる可能性があります。

本人の気付きを促す対応とは

たとえば・・・

  • 飲みすぎないように説教する。
  • 飲ませないように機嫌をとろうとする、ストレスをなくそうとするなど。
  • 本人に代わって飲み代のつけを支払う、職場に言い訳する、酔いつぶれた人を介抱する。

このように、飲酒のうえでの失敗や問題を肩代わりし、世話焼きを続けることを「イネイブリング(Enabiling)」といい、イネイブリングを行う人を「イネイブラー(Enabler)」といいます。このように、家族が飲酒のために起こった不都合なことを後始末すると、飲酒をしている本人は問題に直面せずに済みます。周囲の人がイネイブリングをやめることで、本人は自分の問題に向き合うことができるようになるのです。
お酒を飲まないように家族が努力しても、お酒を止めようとするどころか余計ひどくなった、ということはありませんか。あなたがそのことでイライラしたり、落ち込んだり、悩んだり、自分自身を責めたりしていませんか。正しい知識と正しい対応を学んで、家族ができることを考えてみることが大切です。そのためには問題を抱え込まず、関係機関などへ相談してみましょう。

 

12.相談窓口

本人に限らず、飲酒について問題を感じた方が、まずはご相談ください。それが回復への第一歩です。

仙台市のアルコール健康相談窓口

各区役所の相談窓口

担当課 電話番号
青葉区障害高齢課 022-225-7211(代表)
宮城総合支所保健福祉課 022-392-2111(代表)
宮城野区障害高齢課 022-291-2111(代表)
若林区障害高齢課 022-282-1111(代表)
太白区障害高齢課 022-247-1111(代表)
秋保総合支所保健福祉課 022-399-2111(代表)
泉区障害高齢課 022-372-3111(代表)

精神保健福祉総合センター(はあとぽーと仙台)

  • 来所相談(予約制)    電話 022-265-2191(受付時間:平日8時半~17時)
  • はあとライン(電話相談) 電話 022-265-2229(平日10時~12時、13時~16時)
  • ナイトライン(電話相談) 電話 022-217-2279(年中無休18時~22時)

「はあとぽーと仙台 来所相談」のページ ・ 「はあとぽーと仙台 こころの電話相談」のページ

 

13.はあとぽーと仙台精神科デイケア「アディクション回復支援コース」のご案内

薬物(違法合法問わず)アルコールの使用に関する悩みを抱えている方を対象に、テキストを使った回復支援集団プログラム(Drug&Alcohol Team Empowerment approach Program→だてプロ)を行っています。これまでの生活習慣を見直し、同じような悩みを抱えた仲間と一緒に薬物やアルコールを使わない方法を考えながら、回復を目指すリハビリテーションです。

お問い合わせ

健康福祉局精神保健福祉総合センター

仙台市青葉区荒巻字三居沢1-6

電話番号:022-265-2191

ファクス:022-265-2190