更新日:2020年12月15日

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お酒の問題と対応

目次

  1. はじめに
  2. アルコール依存症とは
  3. アルコール依存症の診断基準
  4. アルコール依存症の関連疾患
  5. アルコールと身体合併症
  6. アルコール関連問題のスクリーニングテスト
  7. アルコール依存症の治療
  8. アルコール依存症の回復過程
  9. 同じアルコール依存症でも・・・
  10. アルコール依存症患者と「否認」
  11. アルコール依存症患者の周囲の人とイネイブリング
  12. 相談窓口

1.はじめに

平成25年に厚生労働省研究班がWHOの診断基準に基づき全国調査した結果、治療を受けていない人を含め109万人もの人が、アルコール依存症にかかっている可能性があることが分かりました。このうち実際にアルコール依存症として治療を受けている患者数は、4~5万人であるとされています。アルコール依存症は誰でもなりうるありふれた病気であるにもかかわらず、相談や支援の状況が広がりにくい現状にあることがうかがわれます。

不適切な飲酒は、アルコール健康障害の原因になります。そして、ご本人の健康問題だけでなく、飲酒運転、暴力、虐待、自死等、様々な問題にも密接に関係しています。従来、中年男性が多かった患者層は、女性や高齢者にも広がってきています。平成25年12月にアルコール健康障害対策基本法が成立し、平成26年6月に施行されました。そして、平成28年5月にはアルコール健康障害対策推進計画が策定され、アルコール関連問題に関して、国を挙げて具体的な取り組みが行われています。

2.アルコール依存症とは

適正にお酒を飲んでいた人が、次第に毎日お酒を飲むようになり、さらにそれを通り越して、アルコールに対して、精神的、身体的依存を来たし、飲酒行動で自分をコントロールできなくなる病気のことです。

お酒を飲みすぎることが問題だとわかっていても、飲まずにはいられなくなり、飲酒の量も回数も増えていき、徐々に重症化していくことが、この病気の恐ろしいところです。症状が進行し、飲酒のコントロールが効かなくなると、二日酔いで仕事を休んだり、酒代のために借金をしたり、酔って暴力を振るうなどの問題が起きてきます。その結果、職場での信用を失ったり、経済的、家庭的な破綻をきたしかねないのです。

アルコール依存症になってしまうと、適度に飲酒するということができません。できるのは全く飲まないでいるか、飲み過ぎて問題を起こすかのどちらかです。いったんアルコール依存症になってしまうと、元のように適量のお酒を楽しめる体には戻らないのです。ですので、アルコール依存症者が健康的な生活を取り戻すには、生涯を通じて断酒することが必要になります。

アルコール依存症の経過

  • はじめは付き合いなど(飲酒のきっかけ)
  • 毎日飲むなど飲酒が習慣となる(習慣飲酒)
  • 酒量がエスカレートしてくる(耐性の増大)
  • 飲まないとイライラする(精神的依存)
  • 手指のふるえ、不眠、幻覚、せん妄などの離脱症状が出現(身体依存)
  • 不快な離脱症状を紛らわすために、再び飲酒する(連続飲酒)

このまま飲酒を続けると、家庭崩壊、社会的地位の喪失、生命の危機に繋がります。

3.アルコール依存症の診断基準

WHOの国際疾病分類(ICD-10)によると、通常過去1年間のある時期に、次の6項目のうち3項目以上に当てはまる場合に、アルコール依存症と診断すべきであるとされています。

  • アルコールを摂取したいという強い欲望あるいは強迫感がある。
  • 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して、その行動をコントロールすることが困難である。
  • 飲酒を中止または減量した時の身体的離脱症状、離脱症候群の出現や、離脱症状を軽減するか避けるために飲酒することがある。
  • 耐性ができ、飲酒量を増やさなければ酔えない。
  • 飲酒のために、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになり、飲酒せざるを得ない時期や、酔いからの回復に要する時間が長くなる。
  • 明らかに有害な結果(たとえば、過度の飲酒による肝臓障害、アルコールを大量摂取した結果としての抑うつ気分など)が起きているにもかかわらず、依然として飲酒する。

4.アルコール依存症の関連疾患

アルコールは、大麻や覚せい剤などと同じ依存性薬物の一つです。
アルコールの作用はアヘンに似ていて、身体依存性が高く、離脱症状(以前は禁断症状と呼ばれていました)が激しいとされています。離脱症状とは、体内のアルコールが切れてくると(血中濃度が下がる)と、不眠、手指のふるえ、イライラ、幻覚などの症状が現れてくることです。アルコール依存症患者は、このような不快な症状から逃れるために飲酒してしまうことがあります。依存が形成されると自分の意思のみでは断酒をすることが極めて難しくなります。

アルコール離脱症状

初期症状(離脱後およそ7~20時間)

  • 手指がスムーズに動かない
  • 手足のふるえ・発汗(特に寝汗)
  • 寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなどの睡眠障害
  • 嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状
  • 心悸亢進、高血圧などの循環器症状
  • イライラ、落ち着かない、不安等の精神症状
  • 体温上昇、寒気

進行した症状(離脱後およそ72~96時間)

  • 意識がもうろうとする
  • 小動物、虫、糸、天井が動くなどの幻視
  • 物音、人の声などの幻聴
  • けいれん発作
  • 錯乱状態

※これらの症状は4~5日でなくなることが多いですが、栄養管理や症状の抑制、合併症の管理などのため、入院治療が望ましいです。外来治療などで離脱期を家庭で過ごす場合は医師の指示に従ってください。

アルコールが原因の精神疾患

  • アルコール幻覚症(幻視、幻聴、被害妄想など)
  • 抑うつ状態(憂うつな気分や意欲がわかない)

回復困難なもの

  • ウェルニッケ・コルサコフ症候群
  • アルコール認知症など

急性アルコール中毒

「イッキ飲み」はアルコールの血中濃度を急激に上昇させ、一気に「泥酔」「昏睡」状態にまで進んでしまいます。中枢神経が麻痺し、呼吸困難など危険な状態を引き起こし、最悪の場合、死に至ります。

胎児性アルコール症候群

妊娠中にお酒を飲むと、胎盤を通してアルコールが赤ちゃんの身体の中に入ってしまいます。その結果赤ちゃんは、知能、身体や臓器の発達障害、特徴のある顔つきなど「胎児性アルコール症候群(FAS)」と呼ばれる障害を持って組まれてくる危険性が高いのです。

5.アルコールと身体合併症

ここではアルコールによる身体合併症も紹介しておきます。
代表的なものとしては、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変などの肝臓障害があげられます。
肝臓障害に至るメカニズムは複雑で、その原因はいくつかありますが、アルコールの分解過程で作られるアセトアルデヒドという毒性の物質が、長期の大量飲酒によって徐々に肝細胞を害するためにおきます。また大量のアルコール摂取時には、多くの活性酸素ができるため細胞膜やDNAが酸化され肝障害が起こりやすくなります。多量飲酒者は栄養状態が悪いので、このような活性酸素を無害なものにするビタミン類が低下しており、いっそう障害を受けやすくなるのです。
また、アルコールは、肝機能障害を引き起こすだけではなく、胃や十二指腸の障害、すい臓障害、中枢神経や末梢神経の障害など様々な身体合併症の原因となり、多くの生活習慣病を悪化させる原因ともなります。
アルコールが引き起こす身体合併症は、検査によって確認できる障害ですので、アルコール問題の早期治療という観点から重要です。その中に潜む飲酒の問題を見逃さないようにしたいものです。

消化器系障害

  • 脂肪肝
  • アルコール性肝炎
  • 肝硬変
  • 食道炎
  • マロリー・ワイス症候群
  • 胃・十二指腸潰瘍
  • すい炎
  • 糖尿病

外科系障害

  • 突発性大腿骨骨頭壊死
  • 事故やけんかによる外傷
  • やけど
  • 骨折しやすい

循環器系障害

  • 高血圧
  • アルコール性心筋症

その他

  • インポテンツ
  • アルコール性弱視
  • 多発性神経症

急性アルコール中毒

「イッキ飲み」はアルコールの血中濃度を急激に上昇させ、一気に「泥酔」「昏睡」状態にまで進んでしまいます。中枢神経が麻痺し、呼吸困難など危険な状態を引き起こし、最悪の場合死に至ります。

胎児性アルコール症候群

妊娠中にお酒を飲むと、胎盤を通してアルコールが赤ちゃんの身体の中に入ってしまいます。その結果赤ちゃんは、知能、身体や臓器の発達障害、特徴のある顔つきなど「胎児性アルコール症候群(FAS)」と呼ばれる障害を持って組まれてくる危険性が高いのです。

6.アルコール関連問題のスクリーニングテスト

スクリーニングとは、簡便に実施可能な検査などを用いて、疾患の有無や程度の暫定的にチェックすることです。
ここでは質問紙法の中でも最も簡便なCAGEを紹介します。

CAGEスクリーニング・テスト

次の4問中2問に該当すれば、アルコール依存症の疑いが十分にあります。

  • あなたは自分の酒量を減らさねばならないと感じたことはありますか?(Cut down)
  • あなたは、他の人に自分の飲酒について批判され、困ったことがありますか?(Annoyed by criticism)
  • あなたは、自分の飲酒について、よくないと感じたり、罪悪感を持ったことがありますか?(Guilty feeling)
  • あなたは、神経を落ち着かせるため、または二日酔いを治すために、朝、真っ先に飲酒したことがありますか?(Eye-opener)

7.アルコール依存症の治療

アルコール依存症は心の病気です。根本の治療をせずに身体合併症だけを治すと「また飲める体に戻してしまう」という悪循環に陥ります。体を治すだけではなく、専門医療機関での心の治療が必要です。
アルコール依存症の治療は、おおむね以下のような順序に従って行われます。これらの段階を終了するには数年の時間がかかるのが普通です。

アルコール離脱症候群の治療(主に入院。ただし軽症の場合は医師の指示のもと外来でも可能)

お酒をやめて半日を経過したころから約一週間、発汗・微熱・手のふるえ・イライラ・不眠などの離脱症状(目次4参照)が現れます。離脱症状自体を治療するために薬物療法が必要になることもあり、症状を和らげるため安静を保ちます。

アルコールリハビリテーションプログラム(ARP)

患者に断酒の必要性を徹底してもらうことと、その実現に必要な対処方法を学ぶことがARPの治療目的です。これらは集団心理療法、個人心理療法、認知行動療法、薬物療法(抗酒剤など)や家族指導などによって行います。これらの治療と並行して、合併症(肝臓障害などの内科疾患やうつなど精神的な疾患)の治療を行います。

アフターケア

リハビリテーションの延長であり、断酒を維持すると同時に家族の人間関係の改善、職場への復帰の安定化を図ることによって生活の質の向上を図ります。また、再飲酒を防ぐこともアフターケアの重要な課題の一つです。

8.アルコール依存症の回復過程

アルコール依存症から抜け出すために

いったんアルコール依存症になると、お酒を上手に飲むということはできなくなります。アルコール依存症から抜け出すためには断酒が必要です。
お酒への依存によって生じた、自分とお酒、環境との悪循環を断ち切るために専門医療機関への入院・通院を通して治療を行います。また、一人で断酒し続けるのは容易ではありません。「アルコール依存症からの回復」を共通の目標とする人たちがお互い支え合い、励ましあって断酒という目標に向かっていく「AA(Alcohoilcs Anonymous アルコホーリクス アノニマス)」や「断酒会」などの自助グループへの参加が役立ちます。

飲酒と治療の繰り返しの時期

  • 身体を壊しながらも、お酒を飲み続ける。
  • 治療中は禁酒するが、再飲酒をしアルコール依存症が進行する。

移行期(飲んで死ぬか!やめて生きるか!)

  • お酒のために起きた問題に直面する
  • お酒に対する敗北を認める
  • 専門治療に出会う
  • 診断を受け、治療が始まる

回復初期(どうやって飲まずに生きるか?)

  • 病気について学ぶ
  • 断酒の決心をする
  • 心身の不調を飲まずに乗り切る
  • 自助グループに出会う
  • 定期的な通院を続ける

回復中期(しらふの人生を創る)

  • 夫婦、親子関係の建て直し
  • 自助グループの役割を担う
  • 適切な仕事のペースをつかむ
  • 周囲との関係の建て直し
  • 健康的なライフスタイルを作る

発展期(自分を受け入れる)

  • 自分をいたわる
  • 人生の変化を受け入れる
  • 新しい価値観を見出す
  • 自助グループで初心に戻る

回復はこれで完了ということではなく、継続するプロセスです。

9.同じアルコール依存症でも

アルコール依存症は、性別、年齢、職業や社会的立場、学歴などに関係なく、飲酒者であれば誰でもなる可能性がある病気です。

アルコール依存症と言えば、「中年男性の病気」という印象を持っている人が多いと思いますが、最近では女性、若者、高齢者など、依存症者の層が広がっています。それぞれの特徴には次のようなものがあります。

未成年者・若年者

  • アルコールは脳の神経細胞を破壊し、集中力、記憶力、学習能力の低下をきたします。
  • アルコールを分解する仕組みが未熟なため、アルコールの影響を受けやすく、アルコール依存症になりやすいです。
  • 性腺機能に影響し、インポテンツや生理不順になる可能性があります。
  • 心も体も成長過程にある大切な時期なので、今後の人生に悪影響を及ぼしかねません。

女性

  • 体質的に男性と比べ少ない飲酒量と飲酒機関でアルコール依存症になる可能性があります。
  • ライフイベント(恋愛、子育て、喪失体験や家庭内のストレスなど)の危機や性周期(月経に伴うストレスや閉経など)が飲酒問題のきっかけになることが多いです。
  • 10~20歳代の場合、摂食障害などと合併することがあります。

高齢者

  • アルコール代謝能力が低下し、アルコール依存症にもなりやすいです。
  • 退職してやることがなくなってしまった、配偶者をなくして生きがいを失ったなど、寂しさや孤立感からお酒の量が増え、飲酒問題が表面化することがあります。
  • 認知症の症状も合併することがあります。

10.アルコール依存症患者と「否認」

アルコール依存症患者は「自分は他人と比べるとそんなに飲んでいない」「まだ、手がふるえないから大丈夫」と言いながら、現実に起こっている問題を認めようとしないことが多くあります。
このような自分にとって好ましくない事実を認めないようにする心の働きを「否認」と言います。

さまざまな否認

  • 酒の問題に触れると、話をそらしたり無視する。
  • 事実を指摘すると「そんなことはない」と突っぱねる。時に、攻撃的に反論する。
  • 飲酒の問題をあれこれ探し、合理化しようとする。
  • 「社会人なら酒くらい飲めなければ」などど、自分のお酒の問題を一般論にすりかえる。

なぜ否認するの?

  • 自らの飲酒問題に向き合うことが不安なため。
  • 飲酒を継続するため(強迫的な飲酒欲求を含む)離脱症状を抑えるため「否認」を駆使して飲酒する。
  • アルコール依存症に対する誤解や偏見は、本人の問題意識を困難にさせ、「否認」を生み出す。

このように、アルコール依存症患者は自分の病気に気づいていても、自ら相談や病院に行くことはまれなことです。しかし、周囲の人が病気に気づき、アルコール依存症という病気を正しく理解した上で本人に関わることは、本人が病気に向き合う上で効果があります。

11.アルコール依存症患者の周囲の人とイネイブリング

アルコールによる問題は、飲酒者自身が苦しむだけでなく、家族や職場など周囲の人も巻き込んで発展していきます。お酒の問題を抱える家族の多くは、問題解決のために色々な工夫をしていることがよくあります。
しかし、ちょっと待ってください。
実は本人を助けようというあなたの対応が、本人の飲酒を助長していることがあるのです。

問題を助長してしまう可能性のある対応

たとえば・・・

  • 飲みすぎないように説教する。
  • 飲ませないように機嫌をとろうとする、ストレスをなくそうとするなど。
  • 本人に代わって飲み代のつけを支払う、職場に言い訳する、酔いつぶれた人を介抱するなど。

本人の飲酒を際限なく支えてしまうこのような行動を「イネイブリング(Enabiling)といい、イネイブリングを行う人を「イネイブラー(Enabler)といいます。このように、家族が飲酒のために起こった不都合なことを後始末すると、飲酒をしている本人は問題に直面せずに済んでしまいます。周囲の人がイネイブリングをやめることで、アルコール依存症患者が自分の問題に向き合うことができます。
お酒を飲まないように家族が努力しても、お酒を止めようとするどころか余計ひどくなった、ということはありませんか。そして家族であるあなたがそのことでイライラしたり、落ち込んだり、悩んだり、自分自身をせめていませんか。正しい知識と正しい対応を学んで、家族ができることを考えてみることが大切です。そのためには問題を抱え込まず、関係機関などへ相談してみましょう。

 

12.相談窓口

本人が医療機関につながって治療を受けることは非常に大切ですが、自ら進んで受診したり、家族の説得に応じる場合ばかりではありません。本人に限らず、どなたでも飲酒について問題を感じた方が、まずご相談ください。それが回復の第一歩です。

仙台市ではアルコール健康相談を行っております。

各区役所の相談窓口

各区役所の相談窓口
担当課 電話番号
青葉区障害高齢課 022-225-7211(代表)
宮城総合支所保健福祉課 022-392-2111(代表)
宮城野区障害高齢課 022-291-2111(代表)
若林区障害高齢課 022-282-1111(代表)
太白区障害高齢課 022-247-1111(代表)
秋保総合支所保健福祉課 022-399-2111(代表)
泉区障害高齢課 022-372-3111(代表)

 

精神保健福祉総合センター(はあとぽーと仙台)

  • 来所相談(予約制)    電話 022-265-2191(受付時間:平日8時半~17時)
  • はあとライン(電話相談) 電話 022-265-2229(平日10時~12時、13時~16時)
  • ナイトライン(電話相談) 電話 022-217-2279(年中無休18時~22時)

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お問い合わせ

健康福祉局精神保健福祉総合センター

仙台市青葉区荒巻字三居沢1-6

電話番号:022-265-2191

ファクス:022-265-2190