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ホーム > ブログ・SNS > 八木山動物公園スタッフブログ「八木山ZOO通信」 > スタッフブログ2025 > アフリカゾウ「ベン」を偲んで(2025年12月8日)
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更新日:2025年12月8日
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八木山動物公園スタッフブログ「八木ZOO通信」
2025年11月21日、長きにわたり多くの方に愛されてきたアフリカゾウの「ベン(オス)」が推定36歳で亡くなりました。
飼育下のアフリカゾウのオスは、海外を見ると、現在30歳を超える個体は数頭で、30歳以下が殆どです。
国内の記録で見ると、38歳で死亡した2頭に次いで、「ベン」は3番目の長寿となる年齢でした。
1990年に来園した時には飼育員の背丈よりも小さかった「ベン」ですが、体重が最大7000キログラム超と、日本一大きなアフリカゾウに成長し、その大きな体と優しい眼差しで多くの来園者を魅了してきました。

2024年8月 アフリカゾウ「リリー(メス)」(右)と
「ベン」は2024年秋より動きがゆっくりとなり、2025年1月には下腹部に浮腫(むくみ)が認められました。
浮腫は四肢に広がりなかなか治まりませんでしたが、園外のゾウの専門家からアドバイスをいただき、毎日温かいお湯を使ったマッサージを行い、5月頃に浮腫は軽減しました。

2025年2月 下腹部に浮腫がみられる「ベン」
その一方で、2025年3月末頃からは軟便や下痢を伴う腹痛を頻繁に認め、食欲の低下が認められるようになりました。
また、6月からは前肢の蹄周囲に膿瘍(膿が溜まった状態)を認めるようになったため、「ベン」の体調や歩行の様子を見ながら蹄の手入れや洗浄消毒を行いました。
これまでのトレーニングが実り、「ベン」自身がロープや丸太に前肢を乗せてくれたので、治療を進めることができました。

ロープに乗せた前肢に薬を塗る様子
前肢の膿瘍は細菌感染の疑いがあるため、抗生剤の投与を検討しましたが、抗生剤を飲ませると更にお腹の具合が悪化する恐れがありました。
そのため粉状にした抗生剤を水に溶かし、それを直接直腸内に入れる「直腸内投与」を実施しました。
治療に伴い、徐々に食欲も回復していきました。

抗生剤の直腸内投与をする様子
前肢の治療として、直接薬剤を浸透させるための「薬浴」も実施しました。
最初はタライを使っていましたが、途中で足を出してしまい効果的な薬浴が出来ませんでした。
その後、ゾウの薬浴用に特注した靴を他園からお借りし、効果的に薬浴ができるようになりました。
「ベン」の患部の状態を見ながら、薬浴に使用する薬剤の種類も変更していきました。

当初、タライを使って薬浴する「ベン」

専用の靴を使用して薬浴する「ベン」
また、ゾウの専門家に来園してもらってアドバイスをいただき、効果的な治療・薬剤や、前肢の血管への抗生剤投与について実際に指導していただきました。

蹄の悪い部分を除去する処置をする様子

前肢の血管に抗生剤を投与する様子
様々な治療を行い食欲も戻ってきましたが、11月中旬から動きが更にゆっくりとなり、室内での足運びも重く、トレーニングの際の反応も鈍くなっていきました。
11月21日の朝には起立困難となり、起立介助や加療を行いましたが、残念ながら同日午後0時18分に死亡を確認しました。
解剖検査の結果、心臓の拡張等、心臓の病変が認められ、心機能低下による循環障害があったことが分かりました。
「ベン」が不在となり、アフリカゾウ舎がとても広く感じられます。
普段から「ベン」に接していた飼育担当者や獣医師はもちろんのこと、八木山動物公園全体にとっても非常に大きな存在だったと実感しています。
亡くなった「ベン」を偲ぶため、屋内展示場観覧通路に12月27日(土曜日)まで献花台を設置しています。
全国からたくさんの献花やメッセージをいただき、献花台は綺麗なお花でいっぱいになっています。

たくさんのお花やメッセージ等をお寄せいただきました
これだけ多くの方が「ベン」のことを愛してくださっていたと実感し、職員一同胸がいっぱいです。
皆様に心より感謝申し上げます。
これからも「ベン」とのたくさんの思い出を忘れずに、今後も「リリー」と「メアリー(メス)」が当園で長く暮らしていけるよう健康管理に努めてまいります。
お問い合わせ
仙台市建設局 八木山動物公園 飼育展示課
電話:022-229-0122
ファクス:022-229-3159