園長ブログ　動物の「死」を活かすために（3月29日）

八木山動物公園スタッフブログ「八木ZOO通信」

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動物の「死」を活かすために

生き物である限り、いつかはその生を終える時がやってきます。
当園では、毎年9月の秋分の日に動物感謝祭を開催し、亡くなった動物たちの慰霊を行っています。
昨年の感謝祭でも、たくさんの方が動物慰霊碑に献花をしてくださいました。改めて御礼申し上げます。
　
当園の人気者だったカバの「カポ」が旅立ったのは、令和4年（2022年）年の12月でした。
「カポ」は、国内で飼育されているメスのカバとしては最高齢（50歳）で、東日本大震災や脚の不調を乗り越えて、我々を勇気づけてくれました。
私も、親に連れてきてもらった時と、親になって自分の子供を連れてきた時と、親子三代にわたって「カポ」の愛らしい姿を見てきたこともあり、今でも寂しく思うことがあります。

在りし日の「カポ」の姿。「カポ」は、屋外展示場では水の中で過ごすことが多く、水中から突然現れたり、耳・目・鼻だけを水上に出すカバならではの姿を見せたりして、多くの方々を楽しませてくれました。

「カポ」にとって最後の「八木山フェスタ」となった、令和4年11月3日のえさやり体験での活躍の様子。このころはまだまだ食欲旺盛。

 

動物園では、我々に様々な気づきや驚き、喜びを与えてくれる動物たちに、できるだけストレスがかからない環境で、栄養面でも優れたおいしい餌を食べてもらい、しっかりと健康管理を行って、健やかに一日でも長く生きてもらおうと努めています。
動物飼育員が日々動物の様子を観察し、何か普段と変わったところがあれば、獣医師が病気やけががないか診察して、必要に応じて適切な治療やケアを行います。
診察や治療に当たっては、当園がこれまでに蓄積してきた知見、他の動物園での実例、研究論文など様々な情報を駆使して、正確な病状や適切な治療法を探ります。
野生動物は、一般的なペットや家畜と比べて診断や治療の情報が豊富ではないため、こうした取組みを通じて新たな知見を獲得していくことは、その動物のためだけでなく、今後の動物の治療のためにも大変重要です。

当園では、傷病に関する貴重な知見を得るため、亡くなった動物は、獣医師がそのすべてを病理解剖し、死因の特定に努めます。
内臓や関節の状態など、解剖して初めて詳しいことがわかる事柄もありますので、とても大切なことなのです。
それほど大きくない動物（シマウマくらいの大きさまで）の解剖は、動物病院で行います。

手術室や解剖室、超音波診断装置やX線撮影装置などを備えた動物病院は、は虫類館の裏手の、スタッフのみが立ち入りできるエリアに存在。

ちなみに、動物病院の近くでは、施設長寿命化再整備計画に基づき、裏飼施設（新獣舎の工事期間中の一時的な飼育場所としてや繁殖などのための予備の獣舎として活用する非公開の施設）を建設中。

• 当園の再整備情報

「カポ」はとても大きく、動物病院に運び込むことはできないので、息を引き取った寝室で解剖しました。
獣医師だけでなく動物飼育員も協力し、また、貴重な大型動物の解剖の機会を最大限に生かすべく、獣医病理学が専門の大学の先生にも立ち会ってもらいました。
その結果判明したことは、「カポ」が亡くなるまでの経緯と併せて、当園のホームページでお知らせしています。

• カバの「カポ」の安楽死処置について

「カポ」は、最後は自力では立てなくなり、次第に全身の状態が悪化していったのですが、解剖の結果、四肢の関節面の変形など、症状から獣医師が想定していた様が直接確認でき、高齢になったことによる全身状態の悪化と、こうした関節の問題で脚がうまく機能しなくなったため、立てなくなってしまったと推察されました。
「カポ」は以前にも立てなくなったことがありましたが、様々な治療の結果これを乗り越え、その後15年も生きてくれました。
この時の経過も含め、「カポ」の治療と解剖を通じて得られた知見は、当園のカバだけでなく、日本中のカバの飼育に役立てられていくことでしょう。

当園では、八木山で生まれ育ち、50年もの長きにわたり皆様に愛された「カポ」が確かにいた証として、また、カバの体のつくりを観察できる貴重な資料として、「カポ」の骨格を後世に伝えていくこととしました。
現在は、土の中に棲む様々な生き物の力を借りて、骨だけの姿にしているところです。
将来的には、イベントなどで皆様のお目にかかる機会を設けていきたいと考えております。

 

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