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更新日:2024年8月16日

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園長ブログ 当園の施設長寿命化再整備計画について 第4回【最終回】(8月16日)

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第4回 エリアⅢの概要

今回は、エリアⅢについてご紹介します。

エリアⅢは、当園の最も東の部分です。このエリアの「ビッグアイディア」(展示全体を貫くコンセプト)は、「共生」です。
ここでは、東北地方を中心とした自然と動物の生息環境を再現し、いまは園内に分散している日本の固有種を集約して展示することにより、その魅力や特徴を引き出して、身近な動物に関心を持ってもらうことを目指します。

なお、このエリア内には猛獣舎がありますが、こちらは引き続き活用していく予定です。
3つのエリアとそれぞれのビッグアイディア
3つのエリアとそれぞれの「ビッグアイディア」


仲睦まじく暮らすホッキョクグマのカイとポーラ
猛獣舎で仲睦まじく暮らすホッキョクグマ。(※オスの「カイ」(左)とメスの「ポーラ」(右)の同居は、繁殖期のみ。この写真は令和6年2月撮影)
環境生態展示を取り入れている猛獣舎は、園内のリニューアル後も引き続き活用します。

これから現時点でのエリアⅢの概要についてご説明しますが、エリアⅢの具体的な内容を決めるのはエリアⅡの後になりますので、今後変更があるかもしれません。
詳しいことが決まり次第、当園ホームページなどで改めてお知らせします。
エリア3の概要図
エリアⅢの概要図

 

○水禽池と休憩・学習施設

エリアⅡからエリアⅢへと向かう出入口は、新しいフタコブラクダ展示場の近くに設けます。
エリアⅢに入ると、最初に出会うのは、ガンやカモなどの水鳥です。

ここには池を作り、その隣に休憩施設と学習施設を兼ねた建物を設けて、天候に関わらず水鳥のくらしを観察できるようにします。

当園では、昭和55年(1980年)から、「日本雁を保護する会」をはじめとした国内外の関係者と協力して、シジュウカラガンの羽数回復事業に取り組んできました。
シジュウカラガンは、かつては仙台平野にやってくるガンの多くを占めていたものの、20世紀初頭に毛皮をとる目的で繁殖地にキツネを放したことなどが原因で激減し、日本へ飛来する個体群は絶滅したと考えられていました。
その後、1960年代から70年代にかけて日本への飛来が再確認されるようになったことを受け、先にアリューシャン列島の個体群の回復に成功していたアメリカから譲り受けたシジュウカラガンを園内で繁殖させ、孵化した個体をロシアのカムチャツカの施設で更に繁殖させたうえで、若鳥をキツネのいない島に放すという地道な取組みを続けました。
この結果、いまは、宮城県内に1万羽が飛来するまでになっています。

現在、シジュウカラガンは、当園の西側にあるガン生態園で観ることができますが、将来的にはこのエリアⅢで飼育・展示します。
ここで水鳥を眺めて、先人たちのシジュウカラガン復活の取組みや、生息地の環境保全の大切さに興味を持ってもらうことを目指します。

また、この施設の隣に、休憩できる広場を設けます。
ここでは、動物の足跡のレプリカを設置するなどして、動物たちの様々な特徴や生態を理解しながら遊べるようにする予定です。

なお、1982年の設置以来、シジュウカラガンの羽数回復に大きな役割を果たしてきたガン生態園ですが、施設長寿命化再整備計画のスケジュール上、令和7年の夏で見納めとなる予定です。
その後、シジュウカラガンたちは裏飼施設で飼育し、再び会えるのはエリアⅢのオープン後となりますので、ぜひ今のうちにお出でください。
水禽池と休憩・学習施設の予定地
水禽池と休憩・学習施設は、カンガルーの展示場と、その奥の芝生広場にかけて設ける予定。

広場を出て園路を進んでいくと、日本の固有種を集めたエリアに入ります。
ここでは、手前に人とかかわりの多い動物を、奥の方には深い森に生息する動物を配置します。
園路を進んでいくことにより、人里~里山~奥山と連なる日本の自然を実感しながら、そこで暮らす動物たちの様子を観察できるようにするものです。

 

○人里

  • 対州馬

人里のエリアで最初に出会うのは、対州馬です。

対州馬は、長崎県の対馬を中心に飼育されてきた、日本の在来馬です。
険しい山道の多い対馬で、様々なものを運んだり、牛と共に田畑を耕したりするのに活躍してきました。
サラブレッドなどに比べるとかなり小柄ですが、とても力持ちで、130~150キログラムの荷物を運べたそうです。

日本では、明治以降、国策として、在来種とヨーロッパ種とを交配させて、馬(軍用馬)の大型化を試みました。
しかし、対馬では、対州馬が人々の生活によくなじんでいたため、このような取組みにあまり積極的ではありませんでした。
その結果、対州馬は、貴重な在来馬として現在まで残されることとなったのです。

対州馬は、自動車の普及や農機具の機械化などにより、平成17年(2005年)には25頭にまで減ってしまいました。
地元の方々の保存活動の結果、令和4年(2022年)には55頭まで回復しましたが、日本の在来馬の中でも特に数が少ない品種です。
現在は10頭が対馬島外で飼育されていて、当園にはそのうちの3頭がいます。

当園では昭和49年(1974年)から対州馬の飼育に取り組んでおり、いまは、「アサヒ」、「和海(なごみ)」と、この2頭の子供である「陽向(ひなた)」を飼育しています。
なお、「陽向」は当園生まれで、対馬以外の場所で対州馬が誕生したのは、「陽向」が2例目だそうです。

当園では、リニューアル後も貴重な対州馬の飼育を続けます。
対州馬が対馬の人々と暮らしていた時代の様子がわかるように展示を工夫し、対州馬の保護活動や、人と馬とのかかわりなどに興味を持ってもらえるようにします。

また、当園では、毎年、「対州馬の春まつり・秋まつり」を開催してきました。
再整備との兼ね合いから、今年度以降は10月下旬の秋まつりのみの開催となる予定ですが、対州馬の様子を間近に観察できる貴重な機会ですので、ぜひお越しください。

  • 小型猛禽類

対州馬を右手に眺めながら園路を進むと、狩りの際にはまさに新幹線並みの速度で急降下するハヤブサなど、人里で観ることができる小型の猛禽類の展示場に行きつきます。
ここでは、我が国における鳥獣保護の現状と課題が伝わるような展示を目指します。
当園の東側にあるラグーン
「人里」のエリアは、いまホオジロカンムリヅルやアフリカクロトキなどがいるところ(写真の右側の檻)から、当園の東端にあるラグーン(汚水処理場)の手前まで。

 

○里山
里山のエリアでは、タヌキアナグマイノシシなどの展示を予定しています。
より広くなり、自然での生息環境を取り入れた展示場で、その動物本来の動きをこれまで以上にダイナミックに見せてくれると思います。
また、ここでは、イノシシの獣害問題と里山の保全の関係について関心を持ってもらえるように工夫します。
里山エリア予定地
「里山」のエリアは、いまのフタコブラクダとレッサーパンダの展示場の辺りに。(写真はレッサーパンダの展示場)

 

○奥山
最後の奥山のエリアでは、ニホンザル、ツキノワグマ、イヌワシなどを展示します。

ニホンザルは、樹上でも地上でも活動する動物です。現在の、いわゆる「サル山」での展示では、地上や岩山での活動が中心となっていますが、リニューアル後は、樹上での生活も観察できるようにします。
ニホンザルが、その優れた運動能力を存分に発揮する姿をご期待ください。

ツキノワグマの展示場では、木の実などを採るために木に登る姿や、沢を泳ぐ姿を間近で観察できるように工夫します。

このエリアの一番奥では、森林の食物連鎖の頂点に立つ、イヌワシとクマタカに出会えます。
ここでは、鳥たちが暮らしているケージの中に入って観察できる、ウォークスルー方式の展示とする予定です。
奥山エリアの予定地
「奥山」のエリアは、いまのサル山・ツキノワグマ展示場から、タヌキやイノシシの展示場も含めて、プレーリードッグ展示場・小獣舎の辺りまで。
写真の中央奥は、対州馬とプレーリードッグの展示場。左側は小獣舎。右側はタヌキやイノシシの展示場で、更に右に進んでいくとサル山に到達。

 

エリアⅢは、エリアⅠ・エリアⅡの整備の終了後、令和16年度(2034年度)から令和19年度(2037年度)にかけて整備します。
すべてのエリアのリニューアルが終わるのはまだまだ先ですが、当園の基本理念である「動物を身近に感じ、楽しみ、学べる杜の都の魅力ある動物園」を目指して、しっかりと事業に取り組んでまいりますので、ご期待ください。

施設長寿命化再整備計画のご紹介は、今回が最終回です。
事業を進めている間も整備中の場所以外は観ることができますので、ぜひ、我々とご一緒に、当園が生まれ変わるプロセスを体験してください。

 

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仙台市建設局 八木山動物公園 管理課
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ファクス:022-229-3159