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更新日:2023年4月14日

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債務超過からのV字回復へ。飲食業界の企業がコロナ禍の低迷期を抜け出したプロセス|株式会社クロールアップ

 仙台・東北でケータリング事業や居酒屋を主体とした飲食店経営を行っている株式会社クロールアップでは、コロナ禍で売上が激減し、代表取締役及川大生さんは経営不安を抱えていました。今回は、大手飲食企業で海外展開を含む多店舗マネジメントなどの豊富な経験を持つ清水貴之さんの支援により、経営戦略を見直し、中長期的な事業規模拡大に向けて、経営改善を図りました。具体的な支援内容などについて、お二人に話をお聞きしました。

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クロールアップ社代表取締役の及川さん(左)、プロ人材の清水さん(右)

 

インタビュー記事

なぜ、仙台市の支援事業に応募しようと思われたのでしょうか?

株式会社クロールアップ 及川大生さん(以下、敬称略):新型コロナウイルス感染症拡大の影響に対して様々な対策を講じてきましたが、売上の回復が進まず、財務上ではキャッシュがどんどん減っていき、そこに店舗や当社独自のサービスの撤退も重なり、会社全体が疲弊していました。これまでとは全く異なる経営立て直し策が必要でしたので、自分には無い知見や経験、ノウハウを求めて、プロ人材活用に望みをたくしました。

 売上が回復しない状況下で、プロ人材の費用負担が気がかりでしたが、今回は仙台市事業によりリーズナブルにプロ人材を活用できると金融機関から紹介され、即日申し込みをしました。

 

―当初、プロ人材にはどういう印象を抱いていましたか?

及川:正直に言いますと、コンサルに対する不信感があり、積極的に活用したいと考えていませんでした。いろいろ指摘されて、高いお金を取られるイメージがありました(笑)。

 とはいえ、経営者として財務分析に弱点があると認識していましたし、何か手を打たなければならないと危機感もありました。創業以来18年間経営をしてきた自負はありましたが、それだけで状況を打開できなかったので、プロ人材を頼るには良いタイミングだったと思います。

 実際に、プロ人材の清水さんにお会いしてみて、事前に希望していたとおりの、私よりも若くて、イエスマンではなく、ロジカルにダメなものはダメと意見をしてくれる方だと感じましたので、即決でした。

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―課題解決の支援はどこからスタートしたのでしょうか?

及川:まずは事業内容の棚卸しから始めました。清水さんと相談しながら、継続すべき事業とそうでないものを振り分け、会社の黒字化に本当に必要な要素を改めて見直しました。例えば、ケータリング業務などは、継続すべきか迷いましたが、最終的には残しました。こうした検討の過程で、「数字で経営判断する手法」も教えていただき、例えばこれまで人材不足を補強する際に、雇用形態は正社員かパートか、業務はオンラインかオフラインか、適切な判断ができていませんでしたが、業務量と内容を勘案して負担できる人件費を計算し、最適な人員補強の判断ができるようになりました。

 

プロ人材 清水貴之さん(以下、敬称略):長年会社経営をしていると経営者としての経験値が積み上がっていく反面、自社の経営を注視し過ぎるあまり客観視できなくなる場合もあります。

 そこで今回は、黒字化を実現するために必要な要素を洗い出し、それらについてクロールアップさんではどのようにやっているか及川さんに質問していきました。すると及川さんはすぐに問いの本質を理解して、会社に本当に必要かどうかすぐ判断いただけたので、事業の進め方をどんどん改善していくことができました。

 

及川:そこまでがプロジェクト開始の1ヶ月目でした。次の3ヶ月間(2022年10~12月)は、現状把握を進めながら短・中長期的な施策を推進していきました。

その一環で新しくパンの外販事業を始めたり、ケータリング事業の配送方法の見直しや、コスト負担の少ない出店方法の検討など、とにかくキャッシュフローを意識した事業展開を行いました。あわせて、会社組織体制の変更や、社員との面談なども進めました。

 

―支援の結果、どのような変化がありましたか?

及川:コロナ第8波の影響で、目標としていた年内中の単月黒字化には至っていませんが、あと少しの経費削減によって達成できる状況まできました。定性的な評価としては、継続的に利益をあげられる経営体質になりつつあります。売上の数字だけを見れば、清水さんの支援がなくても、今と同じ結果が出せたかもしれませんが、企業の経営体質改善まではできなかったでしょう。しかし清水さんと一緒に取り組んだ結果、来期以降も、外部環境の変化に対して耐久性の高い企業へと成長できている実感があります。

 また、個人的に重要な学びも、清水さんから得られました。例えば、自分では意識していなかったのですが、業績悪化のために私自身が精神的に参っていたことに気づけたのも、その一つです。だからこそ自分の考えを変えるきっかけになり、情に左右されない経営判断力を身に付けられ、会社の舵取りも良い方向に転換できました。

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―今後の展望について教えてください。

及川:支援期間終了後に目指しているゴールは、売上のV字回復です。そのための道標として2023年4月以降の予定を清水さんと相談してすでに設定していますし、すでに前倒しで取り組んでいる内容もあります。

 また、数字で判断していく組織マネジメントの手法も取り入れたことで、これまでのやり方と合わずに離職する社員も出てくるでしょう。しかし、今後、年間売上3億円、5億円規模に当社が成長していく上では必要な変革ですし、引き続き、理想とする組織体制に向けた改善が必要だと考えています。目指すべき目標の達成に向けて、経営者として今やるべきことに徹底して取り組むつもりです。

 

清水:直近のゴールは単月黒字化ですが、それはあくまで通過点です。今回の支援では及川さんと「どういう会社にしていきたいのか」をじっくり話し合い、それを実現するための手段をお伝えしてきました。継続してやり続けていけば、会社も成長し、売上5億円、10億円の壁も必ず越えていけるでしょう。

 

―今後プロ人材の活用を検討している方に向けて、メッセージをいただけますか。

及川:プロ人材の中には、豊富な経験をお持ちの方が多いと思いますが、自社の置かれた状況と異なる経験の場合には、その経験がそのまま活用できるとは限らないと思います。清水さんの場合には、全国的な大手飲食企業で役員をされていましたが、企業の成長ステージの成熟期ではなく成長期の段階で事業推進されていた点で、当社の置かれた状況と共通する経験をされてきたと感じました。

 それと個人的には、年齢も重要な要素だと思います。私はプロ人材をマッチングいただくにあたり、年下の方を希望しました。もちろん、ベテランの方の知見が必要な場合もあると思いますが、スタートアップ企業のような短期間で急成長を目指す場合には、ミスマッチになるかもしれないと思ったからです。特に飲食店の場合、主要顧客の年代が若い場合には、その世代の方々のニーズを吸収しないと上手くいきません。「うちではTikTokやインスタはやっていません」では、やはり集客できないのです。プロ人材のマッチングに際しては、自社の置かれた状況に合った経験や知見を持つプロ人材を求めていることを伝えた上で、面談でじっくりと話をして、相性なども含めて判断するとよいと思います。

 

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

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(令和5年1月取材)

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