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更新日:2026年6月3日

長瀬産業株式会社
NAGASE×東北大学 Delivering next.共創研究所
神谷 哲 氏
弊社は天保3年(1832年)に創業し、190年以上の歴史を持つ化学専門商社です。弊社のユニークな点は、商社機能に加えて、国内外のグループ会社による製造業としての機能を持っていることです。さらに、神戸のバイオイノベーションセンターを始めとした研究開発部門も有しており、グリーン素材の探索やバイオを用いた最先端の素材開発も行っています。社外の方から「長瀬は一体どこを目指しているのだ?」と言っていただけるほど、他とは一線を画する企業だと自負しています。
仙台に共創研究所を設立した背景には、NAGASEの強みである「商社機能」「製造機能」「開発機能」の3本柱に加えて、第4の柱として「評価機能(エバリュエーション)」を持たせたいという狙いがありました。評価技術を価値に変えるとともに、お客様や学術機関など様々なステークホルダーの方々を繋ぐ「コネクティングハブ」としての役割を、この研究所に持たせたいと考えています 。
第4の柱として「評価機能」を確立するため放射光施設「ナノテラス(NanoTerasu)」の有志連合(コアリション)に加入しました。この施設をしっかりと有効活用していくためには強力なパートナーが必要であると考えました。そこで、以前からお付き合いがあり、弊社が今後注力していくフードやライフサイエンス、バイオ領域との親和性が非常に高い東北大学農学研究科と連携し、共創研究所を設立しました。国際卓越研究大学でもある東北大学との連携は非常に魅力的で、ナノテラスのような「施設利用型」の共創研究所は初めてのケースだと思います。弊社にとってナノテラスは、一言で表すなら「新しい物差し」です。真正面から見たら全て同じように見えるものでも、X線の回折や散乱などの異なる物差しで試料を測定することで、異なる角度から対象の細部の違いを見える化することができます。
弊社のユニークな点はナノテラスの使い方にあります。年間でナノテラスを活用する時間のうち、約半分をお客様との共創に充てているのです。自社利用だけでなく、お客様との接点作りやコミュニケーションツールとして明確に位置付けています。ナノテラスで測定するテーマは、一連の測定で必ず特許が1つ生まれると言えるほど最先端の課題ばかりです。その測定を通して、お客様や市場の課題をいち早く察知し、共創伴走支援するという接点づくりこそが弊社の最大の価値と考えています。
この共創において、東北大学の先生方の役割は極めて重要です。弊社はお客様をお連れし、ナノテラスという物差しで物理的なデータを取得します。しかし、出てきた結果に対して「物理的にどんな意味があるのか」を専門的に解釈してくださるのは大学の先生方です。そして、その物理的な意味が「社会的にどんな意味を持つのか」をビジネスの視点から考えるのが弊社の役割となります。ナノテラス、大学、商社、お客様という連鎖的なステップを踏むことで、データに意味付けを行い、最終的にダイナミックな価値へと変えていくのが共創研究所の醍醐味です。
一方で、お客様の測定ご希望内容によっては、最初からナノテラスで計測することが難しい場合もあります。その場合は、宮城県産業技術総合センターで複数回測定を行って計測条件を最適化し、その次のステップとしてナノテラスへ進むというように、地域の力をお借りしながら入り口を多様化するお手伝いも行っています。
仙台に拠点を構えたことで、事業面でも様々なメリットを実感しています。まず一つは、お客様をご案内しやすいという立地の良さです。東京から新幹線で90分という距離は、日帰りで気軽に来ていただけるアクセスの良さがあります。また、元々関西中心に活動していた弊社にとって、東北は拠点がなく空白のエリアでした。今回、仙台市ならびに宮城県からの賃料補助などの手厚い支援を受けながら、東北に碁石を打てた意義は非常に大きいです。ここをコネクティングハブとして、お客様にナノテラスを見学していただき、弊社の共創研究所の取り組みを知っていただく起点になっています。さらに、仙台市の制度である「シェアリング2000」にも大いに助けられています。現在、弊社がナノテラスを利用できる時間を超える利用予約が入っています。そうした際に、仙台市が保有するナノテラス利用枠にて測定できるシェアリング2000」を活用することでフレキシブルな研究開発が可能になっています。
人材確保の面でも絶大な効果がありました。共創研究所があるという安心感から、弊社の就活セミナーには多くの学生が集まり、インターンシップへのエントリーに繋がっています。薬学部の先生から薬剤師以外のキャリアを探す優秀な学生をご紹介いただく機会も生まれました。また、当研究所には元京都大学の教員で、仙台に戻ってテック系ベンチャーを起業した社員も所属しています。東京に行かずとも仙台で面白い事業ができると発信することで、地域連携やナノテラス利用に長けた地元の優秀な人材を惹きつけ、採用や育成に繋げていける素晴らしい環境だと感じています。
今後の展望として、弊社が掲げる「マテリアル(素材)で社会課題を解決する」というテーマの実現を目指しています。ナノテラスという強力な「物差し」を使ってグループ会社、そしてお客様や地域の皆様のマテリアルの価値を高めることが共創研究所の使命です。将来的にはこの取り組みを「EaaS(Evaluation as a Service)」、つまり評価技術そのものを価値に変えてサービスとして提供し、新しいビジネスモデルへ昇華させたいと考えています。国土が狭く資源も少ない日本が、スピード感や規模で勝負する海外勢に勝つための唯一の道は、解釈一つで価値を生み出す「評価技術」にあると私は確信しています。
仙台への進出を検討する上で、「ナノテラス」という強力なキーの存在は非常に大きいです。ナノテラスのような最先端施設があり、高度な学術機関が揃っているという強みを活かすため仙台に進出することは、大いに意義があると思います。仙台が持つこれらの素晴らしいファシリティやアセットが、今後さらに広く発信され、多くの企業に活用されていくことを期待しています
(2026年1月30日取材)
長瀬産業株式会社
本社の所在地:(東京本社)東京都千代田区大手町二丁目6番4号常盤橋タワー
仙台拠点の所在地:東北大学青葉山新キャンパス 農学部・農学研究科 農学系総合研究棟
拠点設置年:2024年
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